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コルトさんとルイスさんの案内で拠点内を回った。
防壁寄りに畑、その内側には住居、中心には一回り大きくなった泉が有る。
防壁の目途が立った時点でライルさんが泉の周囲を掘り下げて樹液ブロックで囲んだのだそうだ。
これにより足踏み式の水車での揚水が可能になり、畑への水遣りや、調理等がかなり楽に為ったと言う。
また、これを動かすのが子供達に大人気で、自分の順番が来るのが待ち遠しいのだそうだ。
「凄いですね。よく半年でここまで・・・・・何です、あれ?」
水車の向こう側、泉の南面に何か大きな物が立っているのが見えた。
「ああ、あれはノワール様の銅像です。アスガルタの皆が寂しく無い様にと作ったのが切欠で、ここ以外の村にも有りますよ。誰も何も言っていないのに、毎日朝晩お祈りしているんですよ」
えぇ~・・・・・まさかこんな物を作っているとは・・・いや、慕ってくれるのは嬉しいし、悪い事じゃないんだけど・・・何て言うか、死んだ訳でもないのに祈られるとか・・・・・何か微妙。
近くに寄って良く見ると、足元にコッケーの銅像も有って・・・『西郷さんかよ!』と突っ込みそうに為った。一瞬、解ってて態とやったんじゃないかと疑ってしまった。いかんいかん、そんな筈ない・・・よね?
「ま、まぁ皆の支えに為っているなら良いです。そう言えばグランさんとライルさんは?アスガルタに帰ったんですか?」
「いえ、ノワール様が村を開放する度に五十人前後の人が送られて来たでしょう?ここだけでなくアラト山の方にも受け入れて貰ったんですけど、限界近かったんで新しく村を作りに行ってます。幸い捕虜の数は多いんで、捕虜三十とコッケー十匹連れて昔住んでた所の再生に行きました。あそこなら開墾しなくてすみますし」
「え・・・・・その、大丈夫なんですか?流石に元住んでいた所が荒廃した所なんて見るのは辛いんじゃ・・・・・」
「ええ、僕達やライルさんもその辺は心配したんですが、グランさんが『良い機会だから過去の自分の罪と向き合いたい』と言って聞かなくて・・・・・」
「そう・・・ですか・・・・・それなら僕からは何も言う事は有りません。そう言えるならきっと大丈夫でしょうし、必ず立派な村にしてくれると信じて知らせを待ちましょう」
グランさんも気にしていたんだな。僕にはあそこを見に行く勇気は無かったけど。
一通り見て終わり、バロールからの襲撃は無かったかを聞いた。
この半年で襲撃は二回。一度目は五十人程、二度目は百人程で、いずれもこちらの被害は無く追い返したそうだ。
今まで解放して来た村の状況から見て、西への進行は諦めたか、それとも疲弊しきって余裕が無いのかのどちらかだろう。
別ルートも考えられなくは無いが、新たに道を切り開いている余裕は無いと思う。
翌朝、僕は村人達に見送られて東、バロールの本拠地へと向った。
支配されているであろう南側の村の事も気になったが、こちらも受け入れの限界だ。
先ずは頭を潰してから各村を回って、立地条件の良い所に村人を集める方が良いだろうと判断した。
東の荒地を抜けて三日後、僕は目の前の光景に呆然と立ち尽くす事となった。
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