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全ての兵を打ち倒したコッケー達が森の中へと散って行く。

僕の足元には頭を抱え恐怖に歪んだ泣き顔の指揮官だった男が蹲っていた。


「アルファー、ブラボー、お疲れ様。無理させてごめん。二、三日はこの辺でゆっくり休んで」


二匹の頭を撫でながら労いの声を掛け、森へと入って行く皆を眺めていると、村人達がこちらへとやって来た。手には農具を握り憤怒の表情を浮かべて。


その中の一人が怒声を上げながら鍬を振り上げ、気を失っている兵に振り下ろそうとした所を間に割って入って止めた。


「退きやがれ!お前に何が解る!妻も娘もこいつ等に嬲り殺しにされたんだ!!仕返しして何が悪い!!部外者は黙ってろ!!」


彼に賛同した人達が次々と僕に罵声を浴びせてきた。


「・・・・・確かに僕は部外者だし、貴方達の気持ちが解るなんて言いません。ですが、彼等を殺して何に為ると言うのです。そんな事をしても貴方達の気が治まる事はありませんし、亡くなった方達も生き返る事は有りません。そして、残るのは消える事の無い憎しみや悲しみと人を殺したと言う事実だけですよ。亡くなった貴方達の家族や仲間がそれを望んでいると思いますか?綺麗事だと言う事は重々承知しています。ですが、一時の感情に流されず良く考えて、皆で話し合って決めて下さい。彼等を殺して人殺しになるか、生かして労働力として使い続けるのかを」


村人達が一人、また一人と手にした農具を落として泣き崩れて行く。


「・・・・・皆さん、さぞ辛かったでしょうし苦しかったでしょう。その気持ちを糧にして生きて命を繋ぎこの村を発展させて行くのです。それが亡くなった者達の為に貴方達の出来る手向けですから」


啜り泣く声の中、男の子が駆け寄って来て僕に頭を下げた。


「お兄ちゃんありがとう。お兄ちゃんのおかげでもうどこも痛くないよ」


僕が「これからも皆のお手伝いを頑張るんだよ」と言って頭を撫でると「うん!」と笑顔で返事をして父親らしき男の所へ走って行った。


「さぁ、何時まで泣いているつもりですか。せっかく自由になれたのですから、先ずはその枷を外して彼等に付け替えましょう。後は怪我人や病人が居ればそこへ案内して下さい。僕が治しますから」


バロールの兵士達を拘束し武器を回収後、村の代表者の案内で傷病者の治癒に当たり、二日掛けて農業の指導をしてから更に東へと向かった。



     *     *     *     *     *



「それじゃ、グランさん達と合流後は東に向かって、解放後の村の支援って事で良いですよね?」


「ああ、ノワールさんは解放後の村が襲われる事は想定してない・・・と言うか、真っ直ぐバロールに向かえば阻止出来ると思ってるんだろうな。だが俺はそうは思っていない。敵の総数が不明な以上、可能な限り支援はしないとな。頼んだぞ、コルト、ルイス」


「任せて下さい。ノワール様の望む世界を作る手伝いをする。それが俺達の役目だと思っていますから」


アラト山東村に向かったコルトとルイスはグランとライルと合流後、荷車に食料と武器を載せ二人と共に東へと向かった。自分達の後を各村から十匹ずつ、計三十匹のコッケーが付いて来ている事には気が付く事も無く。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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