04
彼女の力を増す方法。それは誰もが思いつくだろう事で、「人々の信仰を集める」と言う物だった。
だが問題が有った。先ず宗教と言うか神と言う概念が無い事だ。
但し土着信仰の様な物は有る。それは森や川や海に大地と言った大自然に対する敬意であったり、嵐や雷などに対する畏怖だったりと、目に見える物や実際に体験した物に対してだった。
目に見えず何をしているのか解らない者を信じろとか言われても普通は無理だと思う。
これが最大の難関な訳だけど、そこは神の奇跡って奴を見せれば良い訳で、僕自身が奇跡って奴になれば何とか為ると思う。
女神様の御力で不老不死に成ったとアピールして世界を回るのだ。
そして信者が増えて行けば彼女の力も増して行くと言う寸法だ。
勿論そんなに上手く行くなんて思っちゃいない。かなり危険で辛い旅になるだろう。でも、それが本来僕が受けるべき罰なんだ。
「あ、そう言えば僕の罰って何時まで続くんですか?終る条件とか有ったら教えて下さい」
「総人口の1/3に当たる信者を得るか、貴方の行いで総人口を30%増やす事が出来れば償いは終り、此処へ帰ってくる事が出来るでしょう」
「・・・・・ん?・・・それって僕とは無関係に人口が増える方が早かったら終らないって事なんじゃ・・・・・・・」
ほぼ無期懲役じゃねぇか!と地球の神に怒りを募らせていると、彼女は言った。
「大丈夫です。殆んどの町や村は対立していて、この百数十年の総人口は殆んど変わっていませんから」
「それって何処へ行っても常に戦争してるって事ですよね!?何処が大丈夫なんですか!?危険度が増しただけじゃないですか!!」
「あら、どうせ死なないんだし、問題ないでしょ?嫌ならここに残って私と楽しく暮らしましょ」
「ぐっ・・・・・行きますよ!いーきーまーすっ!!残ってばれたら更に酷い罰になるかもしれませんからね!!さっさと地上に送って下さいよ!!」
最早口調を気にする気にもなれなかったし、真面目に罰を受ける気も無くなった。
「せっかちねぇ・・・他に聞きたい事は無い?無いなら送るけど」
「・・・・・あ・・・そうだ、人間以外の種族って居ます?獣人とかエルフとか。後、魔法は有ります?」
せっかく異世界に転生するんだし、これだけは聞いておかないとね。
「え?・・・・・あ~地球の物語に出てくる奴ね・・・いい?人間って言うのはね、私達神の似姿なの・・・ハッ!他の種族?そんなの居る訳無いじゃない。あんた神様の事馬鹿にしてんの?魔法ってあれでしょ?神の奇跡のパクリ。あんな簡単に奇跡を起こせたら信者なんか要らないわよ。馬鹿馬鹿しい」
(何こいつ・・・マジムカつくわ。ぜってーこいつの為に信者なんか集めねぇ)
「はいはい、もういいですよ。すいませんね無知で。それで送って貰う土地なんですけど、さっき言ってた国に成りそうな所から一番遠い人里にして下さい。行き成り大人数相手に布教とか無理なんで」
こめかみに青筋を浮かべながら行き先を指定した。布教する気なんて無いし、出来るだけ穏便に暮らしたいからだ。小さな集落とかなら不老不死の自分を受け入れてくれる所が有るかもしれないと言う期待も有った。
「では、この衣を授けます。この衣と祝福があれば獣に襲われる事は有りませんし、貴方を害する者に天罰が落ちるでしょう」
「それは助かります。獣に永遠に齧られ続けるとか洒落になりませんから」
これはマジで助かる。旅の途中で肉食獣に食料を提供し続ける事にならずに済みそうだ。
「では、泉の中心へ」
渡された衣を頭から被ると泉へと足を向けた。
「衣へと意識を集中すれば水に沈む事無く中心へと行ける筈です」
言われた通りに意識を集中すると裾の刺繍が淡く光り、水の上を歩く事が出来た。
「それでは地上へと送ります。良い旅を」
泉が淡く光を放ち、その光が叙々に強くなり周囲を白く染め上げて行く。
視界が真っ白に染まり他に何も見えなくなると、僕は浮遊感と共にその場から消えた。
―――上手く行った様だな
光の収まった泉を女神が眺めていると周囲に声が響いた。
「はい・・・概ね思惑通りかと」
―――うむ、之より先は我等は手出し無用だ、良いな
「解っております・・・・・」
そう言って女神はそっと目を伏せた。
ここまで読んで頂き有り難う御座いました。