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アラト山南部三村開放から三ヶ月が経った或る日の事。僕は鉱山に有る鉱夫達の住む宿舎に来ていた。
「化け物め・・・何しに来やがった」
カイラスは恐怖の混じった恨みがましい目付きで僕を睨んだ。
「いえね、そろそろ落ち着いて話が出来るんじゃないかと思いまして、こうして態々ここまで来たんですよ」
「・・・・・お前に話す事なんて何もねぇぞ。こっちは仕事で疲れてんだ、とっとと帰ってくんねぇか」
まぁまともに会話が出来るとは思って無かったけどね。
「まぁそう言わずに。僕が聞きたいのはですね、バロールからここまで何日掛かったのかって事なんですよ」
ガルドさん達から聞いた話では約一年程前に東の村に攻めて来たと言う。僕があの駄女神に頼んだのは国に成りそうな所から一番遠い人里だった筈だ。こいつらの言うバロールがそれだとして、ここまで何日掛かったのかによって対応が変わる。
「・・・・・ククククク・・・ハハハハハ!!馬鹿が・・・もう遅せぇんだよ・・・俺達ゃ先遣隊なんでな、集落等を見つけ次第本隊に伝令が行っているのさ。ここに来る前に途中の集落を二つ落としてんだ、今頃手前の集落に本隊が集まっているだろうな・・・ククク・・・後一月もしたらお前等お終いだ。俺達を人質にしているからって交渉出来ると思うな。精鋭三百人の兵は人質位じゃ止まりゃぁしねぇよ!ハハハハハ!!」
「あ、たったそれだけでしたか。こちらとしては十日も有れば準備も整いますので余裕で撃退して見せますよ。これ、何だか解ります?」
「・・・・・何だそりゃ・・・弓矢如きじゃ、青銅の盾は貫けねぇぞ」
カイラスは僕が取り出したそれを見て眉を顰めた。
以前から用意だけはしていたんだよね、クロスボウ。ここに来て青銅が手に入ったので早速強化に使ってみたんだ。射程は百メートル位有るし、コッケーで撹乱して、クロスボウで仕留める。抜けてきた奴等はライルさんに吹き飛ばして貰いましょうか。
「これはですねクロスボウと言って、うちの技師が試行錯誤の末に完成させた逸品なんですよ。青銅の盾?どれだけ厚みが有るのかは知りませんが、一般的な盾でしたら隠れている人ごと貫けますよ。現状こいつが三十丁用意して有ります。通常の弓矢より遠い位置から一方的に殲滅してご覧に入れますよ」
とまぁそんな訳で、二十日後には本隊とやらが東の村に到着したんだけど、あっさり撃退して生き残り約五十名様は鉱山へご案内となったのである。
「カ、カイラス・・・・・」
「エルグさん・・・・・くそっ!」
「感動の再会はその辺にして頂いてですね、今日来た皆さんにはこの辺の開拓をして頂きます。まぁ住む所と食べる物位は自分達でと言う事で。チャーリー、彼等の見張りをお願いしますね」
「コケッ!」
まぁ彼等のには自分達の為にせいぜい頑張って貰うとして、これから先の事を考えると東の村を防衛拠点にしないといけないだろう。次は何時やってくるかは解らないがアスガルタから何人か派遣して備えなくてはいけない。
問題はバロールが占拠している村を如何するかか・・・・・
僕を睨むカイラスとエルグ達をコッケー達に任せて、アスガルタに戻って皆に相談する事にした。
ここまで読んで頂き有難う御座います。
長い事休んですみません。更新再開します。




