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話を聞くとアラト山の周辺には東南、南、南西に三つの村が在り、それぞれにバロールから来た者達が十人ずつ見張っていて、山の中腹で各村から連れて来られた三十人の男達が鉱石を掘っているのだが、彼等は人質でも有るのだそうだ。鉱山の見張りは二十人で敵の総数は五十人だ。

そして親玉のカイラスは南の村に居るとの事。


「先ずは人質の救出・・・・・いや、カイラスの確保と南の村の開放かな。作った武器は何処に置いてあります?」


「それも南だ。鍛冶場も南に有るが・・・本当に大丈夫なのか?これだけの武器で勝てる相手じゃないぞ。村は高い壁に囲まれていて入り口は南北の二ヶ所しかないし、見張りも交代で常に付いているんだ」


彼等の持って来た武器は槍が八本に剣が二本、ナイフが五本だ。普通ならこれだけで如何にかなる筈が無い。


「ああ、問題ありません。どれだけ防御を固めても無駄です。寧ろ主要人員が纏まっているなら好都合です。それでですね・・・上手く行ったらうちの村と取引しませんか?そちらの金属製品とうちの塩や保存食を交換するって言うのは如何です?」


「塩だと?この辺では岩塩が取れるのか?!」


「いえ、岩塩ではありませんよ。ここアスガルタでは塩の製造をしているんです。定期的に取引をしてくれるのであれば、そちらの必要な分をこちらで作りましょう」


「願っても無い事だが」と疑いの目を向ける彼等に僕ははっきりと告げた。


「貴方達が疑うのは尤もです。カイラス達から解放された後に僕等から支配されたら意味が無いとお思いなのでしょう?でも心配いりません。ここ数年、食料が余り過ぎて畑を減らそうかと言う話が出ている位余裕があるんですよ、うちは」


子供が生まれて人数が増えた分、畑を西に伸ばしたのだが、堆肥だけでなく骨粉や木草灰も撒いたら収穫量が激増して困ってた所なんだよね。人間だけじゃなく植物や動物も地球とは段違いの生命力で、ピィなんか天敵の筈のコッケーに護られているもんだから増えまくって毎日食べても増える方が早いしね。


「まぁ言葉だけでは信じられないでしょうから、明日食料を持ってきます。皆さんは結界の近くで待っていて下さい。あそこの近くなら獣に襲われる事もありませんから」


村の周辺、川のこちら側はコッケー達が見回りをしているので、敵性生物は寄って来ない。グランさん達も見回っているのだが、結界も有るので正直過剰防衛なのだ。


僕は彼等を置いて村へと帰り、貯蔵庫をから塩や保存食を大量に川原へと運んでから自宅へと戻り、ベッドで眠るエリスに謝罪を囁き朝を待った。




「僕の独断で決めてしまってすみません。でも、最悪僕だけは帰ってきますから心配しないで下さい」


「心配なんてしていません。全て上手く行くって信じていますから。私達にしてくれた様に皆を救って来て下さい」


笑顔で見送ってくれるエリスに「ありがとう」と言って抱きしめ、皆に手を振り荷物を積んだ船に乗り込んだ。キースさんの渾身の作、外輪船『ベルーガ』船体後部に取り付けられた水車を足踏み式のクランクで回す事によって推進力を得て進むこの船は、百五十キロの荷物を乗せた上に人を五人乗せる事が出来るのだ。正に技術の集大成と言えるだろう。


ペダルを漕いで前に進んで行く。多少抵抗はあるが川の流れに逆らうのだから当然だ。だが故障の心配は無い。何度もテストを繰り返しデータを取った上で、キースさんが全力で取り組んだのだから。


「アルファーとブラボーは隊を率いて森の中から付いて来て!合図が有るまで姿を見せない事!ちょっと遠くまで行くから無理はしないように!」


僕は隠れて森を進むコッケー達に指示を出しながら速度を上げ、結界の切れ目で待つ彼等の元へと向かうのだった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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