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僕は月明かりの中で河の流れる音と、時折焚き火の爆ぜる音を聞きながら男達が眼を覚ますのを待っていた。
彼等が持っていた武器の内の一つ、刃渡り20cm程のナイフを握り、切れ味や硬さなんかを調べて時間を潰していた。
他には槍も有るが如何見ても金属、青銅が使われている。あの駄女神を信用するなら青銅の製造技術は秘匿されていて、その技術を持つ連中が武力で国を作り始めた所だったはず。あれから八年ちょっと・・・一番遠い筈のここまで来るとか早過ぎる。もしかして別の人が製造技術を確立したとかか?彼等から出来るだけ情報を得ないといけないけど・・・・・話してくれるかなぁ。
「・・・ぅぁ・・・おわあああぁぁぁ!!・・・ハァ・・・ハァ・・・っあ・・・こ、ここは・・・はっ!か、怪物は!?うおっ!な、何だこれは!おい!お前達!しっかりしろ!!」
暫くして一人が目を覚ますと、まだ気を失っている者達に声を掛けて起こして行く。僕は縛られて混乱している彼等の前に座った。
彼等は口々に僕を罵り脅しの言葉を投げて来るが、僕は黙ったまま座っていた。
「・・・・・漸く落ち着いたみたいですね。それでは今後の事でも話し合いますか」
「フンッ!話し合いなど必要ない!俺達を人質に捕った所で川を堰き止めてしまえば貴様等は滅びるしか道は無いのだからな!貴様等は我等の言う事を聞いていれば良いんだ!!」
僕は彼等が大人しくなった所で話を始めたが、リーダーらしき男にその気は無い様だ。ここまで強気に出られる意味が解らない。
「まぁ別に良いですけど、如何やって堰き止めるんです?貴方達は全員捕らえられて知らせに行く人は居ませんよね?ここから貴方達の村まで何日掛かるか知りませんが、普通は全員が帰らなければ死んだと思うでしょう?それを私達がやったと知るものは居ないんですよ。そうなれば新しく調査隊を出すしかないんです。何人来るかは知りませんが、貴方達と同じ様に捕らえれば良いだけです」
「ははははは!我等を甘く見るな!我等が帰らなければ次は五十人からの部隊で調査に来る手筈になっている!そうなれば貴様たちは終わりだ!ははははは!!」
如何やら戦力には自信が有るようだ。
「はぁ・・・なるほど削り合いをお望みですか・・・僕としては話し合いで片を付けたかったんですが、引く気が無いなら仕方ありません。あの怪物・・・僕らはコッケーと呼んでいるんですが、彼等を率いてこちらから攻め込むとしますか。二百程連れて不意打ちを掛ければ簡単に制圧出来るでしょうし」
「・・・ぁ・・・に・・・二百だと・・・・・はったりだ!あれを飼いならせる筈が無い!!」
おお、効果抜群だな。流石緑の怪物と言われる事だけは有る。
「何なら今直ぐ呼びましょうか?彼等は中々頭が良いんですよ。それに群れ、仲間を大切にします。彼等は僕達の村の住人で共存関係に在りますから、村の代表である僕の言う事なら聞いてくれますよ。さっきだって指笛一つで来てくれたでしょう?現状村には三百程居ますが、全員で行く必要は無いでしょう。貴方達の村を囲んで全方位から奇襲する・・・その結果が如何なるかは言わなくても解りますよね?」
「・・・・・・・・・・」
「それに川を堰き止めるなんて簡単に言いますけど無理だと思いますよ。あの水量を貯めておく為に必要な大きさの堰を作るだけでもかなりの土地が必要になりますし、水は増え続けるんです。増えた水は堰を越え周囲に水害を起こします。まぁ川上の細い水源だけ見たら簡単そうに見えますけど、せいぜい三日も止められれば良い方なんじゃないですか?」
彼等がどれ位の技術を持っているのかは知らないけど、唯の脅しの文句だと思う。その証拠にリーダーらしき男は反論出来なくなっている。今までこのやり方で成功していたんだろうな。
「さて、状況が飲み込めて来たみたいなので、改めて交渉と行きますか」
俯いて何やらブツブツと呟くリーダーらしき男は放って置いて他から切り崩す事にした。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




