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コッケーを脇に抱えたままエンゾさんとグランさんの治療をしている間も襲われる事は無かった。僕の事は置いておいても二人を狙う事は出来る筈だと警戒はしていたが近寄って来る気配すらない。
コッケーを刺激しない様に気を失ったエンゾさんをグランさんに背負って貰って帰る事にした。
「君達に危害を加えるつもりは無かったんだ。縄張りを荒らしてしまって悪かったね」
言葉が通じるとは思っていないが、捕らえたコッケーを解放すれば少しは理解してくれるかもしれないと、そっと地面に放した。
「それじゃ帰りましょうかグランさん。皆が心配しているでしょうし」
歩き出したグランさんの後に付いて行く。万が一にも襲われないかと警戒は怠らなかった。
「・・・・・ノ、ノワール様・・・そ、その・・・大丈夫なのか?」
「・・・・・さぁ?どう言う事なのか僕にもさっぱり解りません」
雑木林を東に向かう僕達の後をコッケー達が何故か付いて来るのだ。
「あっ!おい、グラン!エンゾは無事なのか?!ノワールさんは・・・・・うわああああぁぁぁぁ!!」
僕達を助けに来たのであろうキースさんとライルさんが僕達の後ろに付いて来るコッケーの群れを見て叫び声を上げて近くの木の後ろに隠れてしまった。まぁ緑の怪物とか呼ばれている奴が群れを成していたらそうなるよね。
キースさんとライルさんに事情を話して二人には先に帰って貰い、他の皆にも混乱して攻撃したりしない様にと説明しておいて貰う事にした。
「ノ、ノワール様・・・なんだか増えている様な気がするのだが・・・・・」
「気のせいじゃないですよ。如何見ても二十は居ますね」
雑木林を抜ける頃には二十所か三十・・・鳥には見えないから匹で良いか・・・匹近くなっていて、この数で襲撃されたら全滅も有り得るだろうと、誰か一人でも錯乱して攻撃してしまったら・・・・・そう思うと冷や汗が止まらなかった。
雑木林を抜けると作業して筈の皆がゾロゾロとこちらに向かってくるのが見えた。すわ全面戦争かと思って皆を止めようとグランさんの前に出たが、皆手ぶらで表情も明るい。
そのまま前に進んで行くと皆が突然跪いて頭を下げた。
「「ノワールさん、これからも我々を導き御救い下さい」」
先頭のキースさんとライルさんの言葉を皮切りに皆が口々に僕を称賛する。
せっかく皆が普通に接してくれる様になったのに、またこれかと項垂れながらも救いを求める様に後ろに居るグランさんに視線を送ると彼も跪いていて、更にその後ろのコッケー達はお腹を見せて転がっていた。何これ?服従のポーズかよ!?
「・・・・・ま、まぁ取り合えず大丈夫なので皆さんは作業に戻って下さい。グランさん、エンゾさんを頼みます。採取の方は今日はもう良いですから、畑の方を手伝ってあげて下さい」
一旦落ち着いて貰おうと皆に指示を出して作業に戻って貰う。その後は普通に接してくれたので安心した。
そしてコッケーはと言うと、ピィの柵の西側に陣取って巣作りを始めた。一体何を考えているのだろう?ピィを襲うでも無く、柵の周りを数匹で周回しているのは警備をしているのだろうか?ピィも落ち着いているし、暫くは様子見かな?
そして翌朝。コッケーの鳴き声で目を覚まし、身体を起こすとテントの中にコッケーが居て吃驚した。何だこいつ暗殺者かよ!全く気が付かなかったぞ!
そのコッケーは僕と目が合うと「コケッ!」と一鳴きして出て行った。一体何なんだと良く見てみれば卵が五つ転がっていた。
「・・・・・え~っと・・・上納とか税の代わりって事かな?食べて良いんだよね?」
何を考えているのか解らないけど、新しい仲間が増えたって事で良いんだと思う。卵は有り難いけど気配を殺して侵入して来るのは止めて欲しい所だ。
その日から朝食の野菜スープが溶き卵入りになって皆大喜びでした。
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