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「エリス、多分ノワールさんが落ち込んでると思うから頼む。グラン、お前は俺と採取に行くぞ、得意な奴か力仕事が苦手な奴五人程選んでくれ。力仕事が得意な奴はライルと畑耕してくれ。キースの手伝いは如何する?」


「俺の手伝いは水路堀だな。取り合えず三、四人居れば足りるから他は畑仕事に回してくれ」


「だ、そうだ。キースの所は多少器用な奴の方が良いから振り分け頼んだぜ」


エンゾの指示でグランが振り分けを行い、それぞれの作業場へと散って行った。


エンゾとグラン率いる採取チームは樹液を採った器を交換し、北西の森へと入って行く。エンゾの手には円錐の、グランの手には四角錐の穂先の付いた槍が握られていた。


「・・・エンゾ、この辺りで危険な獣でも見たのか?」


「いや、まだだな。こっちに来てからは北東から西に向かって採取をして来たってのと、人数が増えたから思い切って一番遠い森に来る事にしたから念の為に武器を持って来たんだ」


「そうか・・・俺はてっきり『ガウ』辺りでも出る物だとばかり・・・・・」


ガウとは十匹前後の群れで行動する犬と狼の中間の様な獣の事だ。


「・・・・・ガウ程度なら俺一人でも何とか為るんだがな・・・まぁ今日の所は余り奥まで入らずにこの辺りで採取しようや。ああ、見た事の無い木の実や草で食べられそうな物が有ったら採っておいてくれ、ノワールさんが確かめるからよ・・・そう嫌な顔すんな、これもノワールさんの指示なんだから」


ノワールに毒見をさせる事が気に入らないのであろう顔を顰めるグラン達にエンゾは理由を述べて採取を始めるのだった。



     *     *     *     *     *



ライル達は道具が足りない為に畑を耕す者、土の中から出てくる石を除けて行く者、北の林から腐葉土を運び撒いて行く者等に分業して行く事にした。


「いいか、大きさや形を揃えて耕すんだぞ。石を取り除いた所から腐葉土を撒いて混ぜて行け。明日には丸芋を植えられる様にすんぞ」


「おい、どうやって揃えるんだよ」


「そこに長い縄があんだろ。それを引っ張って真っ直ぐな線を地面に引くんだと。そんで、その縄二本分で畑一面にするんだってよ。後は・・・・・お~い!キーッス!ちょっと来てくれ!」


長さの単位や測る道具の無い世界での苦肉の策だ。基準が無いなら作ってしまえと。


「お前なぁ・・・自分の受け持ち位覚えとけよ・・・・・」


「悪ぃな。どうにも頭を使うのは性に合わなくてよ。お前の方は水車が出来るまでまだ掛かるんだし、こっちの指揮も手伝ってくれよ」


仕方ない奴だとライルを手伝いながら水車の試作と水路堀りの指示を出すキースだった。



     *     *     *     *     *



海へと向かった僕は海水を汲みながら行き場の無い怒りと自己嫌悪に捕らわれていた。


「・・・はぁ~・・・・・何だかなぁ・・・・・・・」


グランさん達が悪い訳じゃない事は解っている。誰が悪いのかと言えば僕なんだろう。もし他に上げるとすれば地球の神なんだろうけど、あいつからしたら僕が悪いと言うのだろう。それに他人?のせいにはしたくない。不可抗力とは言え僕が彼女の手を治した事が切欠で、皆の態度に腹を立ててエンゾさん達に仕事を押し付けたのは他ならぬ僕なのだから。


「・・・よし!悪いのは僕!何時までも落ち込んでないで切り替えて行こう!これ以上皆に迷惑や心配をさせない様にしないと!」


両手で頬を叩いて気合を入れて川沿いの水路用のブロックの型を作った。縦1m横50cm厚さ10cmと大型だ。コルト君とルイス君にはこれでブロックを量産して貰おう。

女の子達には塩と干物作りと砂を集めて貰って、僕は魚を只管捕ると。


僕は子供達がやって来る前に気を取り直す事が出来て、ほっと胸を撫で下ろしたのだった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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