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「それでぇ~確認なんだけどぉ~貴方は自分が亡くなったって事は理解している?」
僕はここまでの経緯からそうなんじゃないかと思っていたので「はい」と答えた。
「一般的に人は亡くなると肉体から魂が分離され、その時にパーソナルデータが住んでいた星に記録されます。そしてその星が寿命を迎えた時に全ての記録はアカシックレコードへと統合されるのだけれど、重複した記録は魂に刻まれたまま転生を繰り返すの。まぁ覚えている人は先ず居ないけど。貴方が最後に取った行動はとても有り触れた物だったけれど、引き起こした事態は因果律を捻じ曲げる程の事だったのよ」
言われて見て初めて気が付いた。確かに僕は名前も年齢も覚えていない。僕が僕であった記憶は全て失われているけど、不思議と不安を覚えなかった。
「それで、僕は一体何をしたんですか?」
「簡潔に結果だけ言うと、このままだと地球では今から10年後にとある病気が流行り始め、30年後には20億人が亡くなります」
「・・・・・・・・・・はぁっ!?何ですそれ!?それが僕のせいなんですか!?僕がその病原菌を作ってたとか、そう言う事なんですか!?」
僕ってテロリストだったの?それともマッドサイエンティスト?なんて困惑していると、彼女は首を横に振った。
「いいえ・・・今から貴方が最後に取った行動を教えましょう・・・・・貴方は買い物へ行く途中・・・交差点の手前でスマホを取り出して、SNSで友人と遣り取りを始めたのです!!」
「・・・・・・・・え?・・・・・それで病原菌が発生したんですか?」
「ハッ!そんな訳ないでしょう。その後交差点に差し掛かった時・・・・・あろう事か貴方は歩行者信号を確認したのですよ!!」
しな垂れ掛かりながら上目使いで冷たい視線を向ける彼女と、何が悪かったのかさっぱり解らず、益々困惑する僕。
「貴方が突然顔を上げた事により、交差点に侵入して来た車のドライバーが貴方の視線の先を見てハンドルを切りそこなって電柱にぶつかり、倒れてきた電柱に潰されて亡くなった方が居たのです!その方こそ病気の特効薬を発明する方だったのです!!」
「・・・・・あ、あの~・・・それって、僕のせいじゃなくて車のドライバーが脇見運転したせいなんじゃ・・・・・・・」
「責任転嫁とは見苦しいですね。地球の神様が行っていた因果律の調整では、あの時貴方は交差点を抜けるまでスマホを取り出さない筈だったのですよ!この書類にはそう書いて有ります!さあ、罪を認めて罰を受けるのです!!」
なんか地球の神様が調整ミスって僕に罪を被せただけな気もしたが、僕にはそれを証明する事が出来る筈も無く、神様の決定に抗える筈も無かった。
釈然としないが、取り敢えずこれだけは解った。歩きスマホダメ、絶対。
「それで僕が受ける罰って何です?そこに書いて有るんですよね?
「え・・・え~っとぉ・・・さ、さっきも言ったけど貴方はここで私の相手をするの。そう、それが貴方が受ける罰よ!」
「・・・・・それって、嘘ですよね?神様がそんな嘘付いて良いんですか?」
僕が厳しい目付きで問い質すと彼女は視線を彷徨わせた。
「僕はそれでも構いませんけど、ばれたら不味いんじゃないですか?地球の神様はこっちの事下位世界って言ってましたし、女神様より偉いんじゃないんですか?」
「あぅ・・・・・わ、解ったわよ・・・ここにはこう書いて有るわ。『転生させて地上で神の教えを広めさせる様に』って」
「・・・ん?・・・・・それだけですか?それって僕に宗教関係者に成れって事ですか?この場合の神は女神様って事ですよね?」
「・・・・・そ、そうなんだけど・・・こんな酷い罰を受けさせるなんて私には出来ないわ!だからここで私と一緒に暮らしましょ?!」
「え?・・・何処が酷いのか解らないんですけど・・・・・地上で教会か神殿に入って神父だか神官に成れば良いんですよね?」
彼女は俯き目を伏せながら「そんな簡単な事じゃないの」と言う。
「先ず簡単に説明するわ。世界に階位と言う物が有る様に、魂にも格が有ります。上位と下位の差が開けば開く程、転生時に受ける影響は大きくなるの」
それが僕の受ける罰に如何影響するのか解らずに「はぁ」と答えた。
「地球の階位は7で、ここ『アガルティア』は2・・・・・階位が五つ離れると言うのは天と地程の差になるのよ・・・貴方は神である私に匹敵する魂格なの」
神に匹敵すると言われて益々『酷い』と言う意味が解らなくなる僕だった。
ここまで読んで頂き有り難う御座います。