表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/61

27

久しぶりに会うグランさん達は疲れた顔をしていた。ここに来るのに最低でも二日は掛かった筈だ。慣れない野営や見張り等で疲れたのだろう。直ぐにでも向こう岸に連れて行って休ませてあげたいがそうも行かない。僕は開拓状況などを伝えて明日まで待って欲しい事を伝えた。


「僕個人としては今直ぐにでも受け入れてあげたいのですが。他の皆の気持ちの整理の為にもう一晩我慢して下さい。それと受け入れる為の条件も考えておきますから明日話し合いましょう」


条件と聞いて不満の声が上がったので少し厳しい事を言わせて貰う事にした。


「何故無条件で受け入れて貰えると思うのか理解出来ませんね。僕は良いとしても、向こうに居る皆を誰か一人でも受け入れようと声を上げた方は居なかったと思いますけど?それにエリスちゃんとルイス君を虐げていた人も居るんですよね?僕が言えば無条件で皆も受け入れてくれるでしょう。でも、僕を信頼してくれる皆を蔑ろにする様な真似は出来ませんから」


僕が虐げていたと言った時、グランさんを含めた数人が目を見開き辺りを見回すと何人も顔を背けた。やはり、知っていたし隠していたんだなと嘆息した。


「兎に角そう言う訳ですので、申し訳有りませんが皆さんの方でも話し合って下さい。条件が飲め無いと言うのであればこちら側に村を作るのも良いでしょう。その際は最低限ですが必要な知識はお教えしますから」


僕は後は頼みますとの意味を込めて、食料の入った籠をグランさんに預けて皆の元へと帰った。


皆と食事を取りながら条件について話し合ったが、皆は僕の好きにして良いと言ってくれた。エリスちゃんとルイス君も少し不安げな顔をしていたが、僕の事を信じているから大丈夫だと言ってくれたのがとても嬉しかった。



     *     *     *     *     *



ノワールの去った後、夕食を終えたグラン達の話し合いは難航していた。

特にエンマの支配から逃れた事が大きく、ノワールの言う〝条件〟次第では以前と同じになってしまうと考えたからだ。そして元東の村の者達から理不尽な暴力を受けるのでは、と考える者も多かった。


「皆が何故そこまで心配しているのか俺には解らない。ノワールが酷い条件を出してくるなんてある筈が無いだろう。彼は言ったじゃないか『今直ぐにでも受け入れたい』と。だが今の彼は代表としての立場があってそれが出来ないだけだろうに。俺が思うに彼の出す条件はありふれた当たり前の物だと思う。それにエンゾ達だってきちんと頭を下げて謝ってくれたじゃないか」


「なぁ・・・グランは何故そこまで彼を信用出来る?俺はそっちの方が気になるな。話もしていたようだが会って数日じゃないか」


「日数は関係無いだろう。彼は荒地に押し込められ、エンマに酷い仕打ちを受けたにもかかわらず村を救おうとしてくれた。追い出された時も引き止める事さえ出来なかった俺に村を割る覚悟をと、最後まで俺達の行く末を案じてくれた。それに、今だって沢山の食料を分けてくれたじゃないか。彼等だってここに来て数日だ、普通なら然程余裕が有るとは思えない。逆に、もしこれ程の余裕が有るのならば、それだけの力が有ると言う事だ。違うか?」


「グランの言う通りだな。まぁ俺は元々ノワールを受け入れる事に賛成だったし、グランに付いて行くぜ。見ず知らずの連中を救いに行く位お人好しだ、向こうの連中に良い様に使われてんじゃないかって心配する位さ」


「ははは・・・確かに。兎に角今夜はもう休もう。如何するかは明日ノワールの言う条件を聞いてから各自で判断してくれ。無責任と思うだろうが、俺にしてやれる事はもう無いと思っている。俺達とノワールに付いて行くか、別の土地に行くか、ここに村を作るのか、自由にしてくれ」


そして、それぞれが不安や希望を胸に一夜を過ごす事となった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ