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テントを張り終え、皆で生えている草を確認しつつ西へと移動した。暫くしてエンゾさんがウサギの様な動物を見つけると、皆に静かにする様に言ってキースさんに声を掛けた。


「キース出番だぞ・・・ピィが三匹見える、草の動きからすると他にも居そうだ」


「おう、任せとけ。皆、風下・・・北の方へ移動しよう」


ウサギの様な動物はピィと言うらしい。北へと回り込む様に移動しながらキースさんは手頃な石を十個程拾うと、身を低くしながら見付からない様に近寄って行く。

そして十分な距離まで近づいた時、上体を起こして膝立ちで持っていた石を二個ずつ、次々と投げて行った。

キースさんが投げた石が草叢へと吸い込まれて行き、何度か「ピィ!」と鳴き声か聞こえ、草叢から二匹のピィが跳ねながら逃げて行った。解り易いと言うか、安直な名付けだな。


「う~む・・・少し腕が落ちたな・・・・・皆すまん二匹も逃がしちまった」


そう言いながら戻って来たキースさんの手には三匹のピィが下げられていた。

え、もしかして五匹とも狩れると思ってたのこの人?ライルさんの事と言い、この世界の基準が解らないな。


「いや、この人数で三匹も獲れれば十分だ。そもそも狩り自体が久しぶりなんだ、腕が落ちていても仕方ないだろ」


う~ん、どうやら本調子なら五匹とも狩れていたらしい。こんな腕前の人が村に何人も居たら、周囲の獣を狩り尽してしまうのも納得出来るな。


作物に為りそうな草は見付からなかったが、その日の夕食はとても豪華になった。と言っても今までと比べてだけど。早く主食になるものを見付けたい所だ。


「え~っとですね、ピィの事で聞きたいんですけど・・・巣の事とか何を好んで食べているとか、知りませんか?」


「ん?草を食べている事は知っているが巣に関しては・・・キースは何か知っているか?」


「そうだな・・・・・地面の穴に隠れる所を見た事があるが、あれが巣なのか?出てくる所は見た事が無いんだが・・・・・そんな事を聞いて如何するんだ?」


どうやら見た目だけでなく生態もウサギに近そうだ。


「飼育して数を増やしたいんですよ。ピィが食べている草が僕らにも食べられるなら畑に植えれば僕らの足しになりますし、ピィが増えればお肉が食べ放題になりますよ」


「「「「「おお!」」」」」


うん。まぁお肉は重要だよね。でも男性陣、君達お肉食べ放題に食いつきすぎだろ。


「流石ノワールさん!自分達で数を増やすなんて考えた事も無かった!」


え~・・・農耕をして植物は増やしてんのに動物は狩るだけとか意味が解らないんだけど・・・・・単にここが大陸の端っこだから技術とかが入って来ないだけなのか?それとも基本脳筋しか居ないのか?戦争ばかりしてるとか聞いたけど・・・・・まぁ何と無くだけど後者の様な気がする。


「・・・あ~・・・後は鳥も飼育したいですね。高く飛べない鳥って居ます?居ればそれも飼いたいんですよ。肉だけじゃなく卵が食べられるようになりますし」


完全食品と言われる卵はぜひとも押さえておきたい所だ。


「あ~・・・居るには居るが・・・・・本気か?かなり凶暴だから飼うとなると・・・ちょっとなぁ・・・・・」


「ああ・・・あいつ目を狙って来るんだよなぁ・・・・・草の中に隠れてて行き成り襲ってくるし・・・逃げ足も速くて石も当たらねぇんだ・・・・・」


「・・・だよなぁ・・・卵は魅力的だが・・・あれを飼うとか正気の沙汰とは思えねぇよ・・・群れとか考えただけでも・・・・・」


「ま、まぁ無理にとは言いませんから・・・・・追々って事で」


何やらトラウマを刺激したらしい。子供達は見た事が無いのか首を傾げていたが、大人達は項垂れて渋い顔をしていた。怪力のライルさんまで難色を示すってどんだけ凶暴なんだよ。


久しぶりのお肉を平らげ、皆満足してその日は就寝となった。

ここまで読んで頂き有り難う御座いました。

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