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筏作りと数日分の採取を終えて、いよいよ出発となった。

荷物を載せた筏が二本のレール代わりの竹の上を川へと進んで行く。

全体の2/3程水面に浮かんだ所で子供達とエンゾさんとキースさんが乗り込み、僕とライルさんが最後の一押しをしてから乗り込んだ。

ゆっくりと進み始める筏に子供達は大はしゃぎだ。

ふと僕を呼ぶ声が聞こえた様な気がして後ろを振り返ると、グランさんが走って来るのが見えたが筏を止めるつもりは無い。


「グランさん!!決断を!!南の地で待ってますから!!一刻も早い決断をして下さい!!」


僕の声が聞こえただろうか。追いかけるのを止めて立ち竦むグランさんが見えなくなるまで目を離さなかった。



     *     *     *     *     *



「行ってしまったか・・・・・」


エンマの言葉の真偽を確かめる為にノワールと直接話がしたかったのだが遅かったようだ。昨日はリタの葬儀で村から離れられなかったのだから仕方ないが。

だが彼の残した言葉で確証が持てた『エンマが嘘を付いている』のだと。


「・・・待っている、か・・・・・決断・・・しなくてはいかんな・・・・・」


振り返り村へと戻るグランの瞳には決意の光が満ちていた。



     *     *     *     *     *



川の流れに乗って筏は進んで行く。岸から離れ過ぎない様に、速度が早くなり過ぎない様に竹を使って川底を突いて調整しながら進んで行った。


河口が近づくと共に周囲の木々は低くなり、やがて草原になった所で筏を岸に着けて川原から草原へと足を向けた。

草原は西に長く南の海岸線に沿って何処までも続いていた。


「今日の所は余り奥まで行かずに、川の近くの草を刈って当面の拠点を作りましょうか。その後で見知った食べられる草が無いか探す感じでどうです?」


「そうだな、取り合えず荷物を降ろそう。筏はどうするんだ?やはりばらして使うのか?」


「はい。竹は利用価値が高いですからね。ばらしてから乾かして使いましょう。エンゾさんとライルさんは筏をお願いします。他の皆は荷物を運んでから草刈です」


僕の指示で皆が動き出す。草原に入って直ぐの所に荷物を置いて草を刈り始めた。ちょっと見た感じでは僕の知っている草は無いようだ。残念。

直ぐ近くで「ガラン!」と大きな音がしてそちらを見るとライルさんがばらした筏を下ろした音だった。何と言うかこの人は唯の力持ちと言う感じじゃないな。束になった竹をそのまま運んで来たよ。水を吸ってかなり重くなっていると思うんだけど。エンゾさんは五本か・・・・・彼も十分力持ちだと思うんだけど、ライルさんを見た後だと如何しても霞んでしまう。


草を刈った後を踏み固めてテントを建てて行った。僕と大人達は一人で住んで、女の子は三人で男の子は二人だ。


「あれ?大きなテントは一つで良いんじゃないですか?あ、コルト君とルイス君も広い方が良いですもんね」


「え?何言ってるんですかノワール様。ノワール様の家に決まっているじゃないですか。僕とコルト君のはあっちの小さい方で十分ですよ」


「そうそう。俺とルイスは小さい方で無いと。まだまだ貢献出来てないんだから、大きい家になんて住めないよ」


「え・・・・・僕、こんな大きな所に一人で住むの?それは流石に遠慮したいと言うか・・・・・」


「ノワールさんは俺達の代表なんだから、一番大きな家に住むのは当然だろ。一人が嫌だというのならエリスと一緒に住んだら良い」


「いやいやいや、それこそダメですって!先ずは村として形になるまで結婚とかそう言うのは無しで!」


「あ、あの・・・私ではダメなんでしょうか・・・・・」


「え、あ~いや、その・・・・・ダメじゃ無いと言うか僕で良いのかとか、え~っと・・・と、兎に角今はそれ所じゃない・・・・・いや、必ず返事をしますから、その・・・・・暫く待って貰えます・・・か?」


「はい!」


「・・・・・意外とヘタレだな・・・ノワール様。エンマさんに立ち向かった時とかかっこ良かったのに・・・・・」


ルイス君の一言の方がエンマさんの膝蹴りよりも痛かった。


「さ、さぁ作業の続きをして、その後は周囲の散策をしないと、ね!」


何かちょっと無理やりだったが話を逸らして作業を終らせ、周囲の散策に出たのだった。

ここまで読んで頂き有り難う御座います。

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