01
暖かく柔らかな日差しに包まれて僕は目を覚ました。
視界一杯に広がる青空と、眩しい日の光に目を細めながら身体を起こすと、そこには一面の草原が広がっていた。
「気が付きましたね。どうぞ此方へ」
背後から声が聞こえて振り返るとそこには泉が有り、泉の上には薄ぼんやりと光る光の玉に囲まれた一人の女性が居た。
とても綺麗な女性だ。透き通る様な白い肌に、ウェーブの掛かった腰まで有る長い金髪とエメラルドグリーンの瞳。美しさと可愛らしさを兼ね備えたその神々しい姿に、僕は引き寄せられる様にふらふらと泉へと近寄って行った。
「ようこそいらっしゃいました。今其方に参りますね」
ふわふわと揺れる脛丈の純白のローブの裾に施された金色の刺繍の先から覗く細い足を動かし、水面に波紋を広げながら彼女は此方へとやって来た。
その足が岸へと降り立つと、彼女は派手にすっ転んで水飛沫と悲鳴を上げながら背中から泉へとダイブした。
僕が呆気に取られていると、彼女はガボガボと水を飲む様な音とバシャバシャと手足をばたつかせて水面を叩く音を立ててからムクリと起き上がった。
「ゲホッ!ガハッ!・・・・・うぅ~・・・せっかく上位世界の魂が始めて来るから良い所見せようと思ったのにぃ~!!バカバカ!私のバカァ~!!」
先程までの神々しさは消え、何処にでも居る普通の女の子に成り下がった彼女は、涙目で水面を叩いて愚痴を溢した後に僕を睨んだ。
「・・・・・見たわね?」
彼女の迫力に負けて下がりながら「な、何をですか」と返す僕に、彼女は俯きながら頬を染めた。
「・・・・・し・・・下着よ・・・私が転んだ時見たんでしょ!あぁもう最悪!こんな事なら一番良い奴履いて置くんだったわ!!キィー!」
何だか本当に神々しさの欠片も無くなったので、見なかった事にしようと思っていた白と水色の縞々は、心のお宝フォルダーに大切に仕舞って置く事にした。
そして一頻り騒いだ彼女がお腹の前で上に向けた左掌に右拳をポン!と打ち付けて「あっ!」と良い事を思いついたと言う様に声を上げた。
僕は「昭和かよ」と突っ込みかけて口を噤んで息を飲んだ。
「責任取りなさいよね」
僕はその不穏な言葉に更に息を飲み、視線を泳がせながら額から汗を流した。
「そうね・・・あなたはずっとここで私の相手をする事。いいわね?」
「え?・・・・・ずっと?・・・相手って何をしたら・・・・・」
「ん~・・・・・お話したりお茶したり~・・・一緒に水遊びしたり・・・・・そ、それで少しづつ仲良くなってぇ・・・・・て、手を繋いで散歩したりなんかして!キャー!下界にお忍びでデートに行ってぇ・・・浜辺で夕日を眺めて・・・・・うへへへへ・・・そ、それで結婚とか・・・・・あんな事やこんな事したりして・・・こ、子供が生まれたりとかして・・・・・えへ・・・えへへへへ・・・・・」
なんかもうピンク色の妄想垂れ流しでドン引きだったが、何時まで経っても終りそうに無かったので仕方なく声を掛ける事にした。
「あ、あの~・・・そ、そうだ!ここに来る前に僕がした罪の事はこっちで聞く様にって言われたんですけど、聞かせて貰えますか?それと、そろそろ水から上がった方が・・・・・」
「あ、あら、私とした事が。ここに赴任してから一人だったものでつい」
なんか独居老人がTV相手に会話をするって話を思い出したが、それと似た様な物なのだろうか?
彼女が立ち上がり岸へと恐る恐る足を踏み出し、無事に岸へと上がるとホッと息を吐いて右手を翳した。
「どうぞお座り下さい」
僕が突然現れたテーブルセットに眼を見開き驚いていると、彼女は席を勧めてきた。ドヤ顔で。
色々残念だけど、おそらくは女神的な何かであろう彼女に言われた通りに僕は席に着いた。無言で。
そして彼女は何故か僕の隣に座ってしな垂れ掛かり、見覚えの有る封筒を取り出して上目遣いで話し始めたのだった。
ここまで読んで頂き有り難う御座います。