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掘って掘って掘りまくる。雑念を払うかの様に唯只管掘り続けた。
いや、実際じっとしているとエリスちゃんの感触が頭を過ぎってですね。ヘラヘラ、ニヤニヤしてしまう訳ですよ。同い年位の女の子に好かれるとか嬉しくない訳が無い。それが可愛い子なら尚更でしょ。
でも今は恋愛とかに現を抜かしている場合じゃないし、男女平等に扱いたいと言うか、皆が家族の様に成れたら良いなと。
そんな訳で只管山芋を掘り続けていたんだけど。何か豪い長いんだよね・・・・・
昨日掘った奴は1mちょいだったのに、気が付けばもう直ぐ自分の身長位になっていて、そこまで掘ってもまだ続いていると言う。
ここまで来たら折らない様に慎重に行かなくては!と、掘り進めて行きまして、漸く掘り終えたら僕が手を延ばした位の長さ、約2mも有ってですね、これは皆に見せたら驚くだろうと折らない様に戻ったと言う訳です。
まぁ竹林に戻ったらとんでもない数の竹が積み上げられていて僕が驚かされたんですけどね。
「あ!ノワール様お帰り・・・・・って凄げぇ!!何それ!昨日の倍位有るじゃん!!流石ノワール様だ!凄っげぇー!!」
大量に積み上げられた竹を見て唖然とする僕に最初に気が付いたのはコルト君だった。うん、思惑通り驚いてくれたんだけど、何か今一嬉しくない。
「・・・・・あ、ああ、そうなんだけどね・・・いや、何でこんなになってんの?」
「なんかエンゾさん達って言うか、ライルさんが張りきっててさ。力が湧いて来てぜんぜん疲れねぇとか言って、枝を払うのが追い付かない位なんだ」
え、何それ?ヤバイ薬でもキメてんの?山芋が滋養強壮作用が有るとか聞いた事有るけど幾らなんでも効き過ぎだろ。
「え~っと・・・それじゃぁ切るのはこれ位にして、筏作りを始めようか。キースさんは残りの枝を払って下さい。エンゾさんとライルさんは枝を払い終わった竹を川岸に運んで下さい。残りの皆は縄を持って来て下さい」
川に対して直角に竹を二本置き、節を削って上面を平らにする。この上で筏を組んで行くのだ。
「僕はこっち側で、コルト君とルイス君はそっち側を縛ってね。他の子達は次の準備をお願い」
竹を十本一組で縛った物を繋げて筏にするのだ。
一組目を縛り終えて二組目を縛ろうとした時に「ゴン!」と組んだ一組目に何かがぶつかる音がした。音のした方に視線を送った時、後頭部に衝撃が走る。
視界が歪んで膝の力が抜け、組んだ竹の上に腹ばいに倒れた。
女の子達の悲鳴と男の子達が僕を呼ぶ声がする。一体何がと、何とか身体を起こして何かが飛んで来たであろう方向、川へと視線を向けると対岸で三人の女性が何かを投げたのが見えた。
放物線を描いて飛来する拳大の石が目に入り、震える足で組んだ竹の上に登って両手を左右に広げた。狙いは僕じゃなく女の子達だったのか。
飛んで来た石が右肩と左手の薬指と小指に当たり、「ゴキ!」っと骨の折れる嫌な音がした。もう一発は手前に落ちて転がった。
「走って!!ライルさんの所まで下がるんだ!!」
子供達に指示を飛ばして対岸を見ると、倒れて気を失っている人と、肩と手を押さえて蹲る人、そして次の石を拾うエンマさんが見えた。
完全に油断していた。朝から色々有ったからなんて言い訳にもならないが、白昼堂々と、しかもこんな直接的な方法で仕掛けて来るなんて思っていなかった。
「如何した!何が有った!」
背後でエンゾさんの声が聞こえた。
「エンゾさん!女の子達を連れて下がって下さい!早く!!」
コルト君とルイス君が竹林に向かったのは音で解ったが、女の子達は恐怖で動けなくなっているのだろう。少し離れた所で泣き声と悲鳴が聞こえる。
エンマさんの三投目が飛んで来る。僕の頭上を越え背後を狙うコースだ。
僕は全力で飛び上がり、右手を伸ばして態と指先で叩き落とした。
思惑通り右手の中指と薬指が折れて、悲鳴を上げて手を押さえながら逃げるエンマさん。直ぐにその後を追う左手の指が折れた女性と気を失った女性を背負って逃げる右肩を負傷した女性。脅されたのかもしれないが、自業自得だと思う。エンマさんに関しては次はきっちり落とし前を付けさせて貰う。例えグランさんに恨まれる事になってもだ。
僕は怪我が回復するのを待ってから皆の所へと帰った。
ここまで読んで頂き有り難う御座います。




