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突然泣き出したエリスちゃんに僕は困惑し、何と声を掛けたら良いか解らずに、唯背中を摩ってあげる事しか出来なかった。
暫くして落ち着いて来た彼女がポツリポツリと話し始めた。
父も母も自分達の食べる分を自分と弟に分け与えていた事。
それは病に臥しても変わらず、回復する事無く亡くなった事。
父が亡くなる時、困った事が有ればグランさんに相談する様に言われたが、エンマさんに頭の上がらないグランさんを信用出来なかった事。
如何する事も出来ずに居た時に現れた僕が見ず知らずの村を救いに行き、三人の子供を助けて帰って来て、エンゾさんとリリアちゃんの手を引いて川を渡った時、この人ならと荷物を取りに村へと戻ったのだと言う。
「・・・・・私・・・見たんです・・・・・ノワール様が耕した荒地に新しい草が生えていたのを・・・そして・・・それをあの女が踏み躙っている所を・・・・・」
エリスちゃんは食事をしない僕に父親の影を見たのか・・・・・昨夜に僕の身体の事は教えて有るんだけど、早々割り切れる物じゃないし仕方ないな。
それにしても、救い様が無いなエンマさんは・・・・・グランさんが覚悟を決めてくれれば良いんだけど。
皆でエリスちゃんを宥め励まし食事を終えて就寝と為った。
そして明け方に目が覚めると妙な事になっていた。
何故か僕の左脇にエリスちゃんが抱きついているのだ。確か女の子達は纏まって寝ていた筈なんだけど、如何言う事?
起こさない様に離れ様としたけど、胸の上に置かれた腕と絡まった足でがっちりホールドされていて満足に動く事も出来ない。
このままだと不味い気もするが、何処とは言わないがエリスちゃんの軟らかさを堪能し続けたくも有り暫く葛藤していると、リリアちゃんがムクリと起き上がって僕と目が合った。
「・・・・・や・・・やぁ・・・おはよう・・・・・」
「・・・・・・・・ん~・・・あたしもノワール様と寝るぅ~」
寝ぼけているのか、のそのそと這いながら僕の右脇に収まるリリアちゃん。
「いやいや、そうじゃなくって!起きて二人共!色々精神的にヤバいから!お願い離れてええぇぇぇ!!」
僕の叫び声で全員が飛び起きてほっと胸を撫で下ろした。
記憶に無いけど前世ではこんな経験した事無いから、嬉しい以上に混乱してしまったけど、ちょっと勿体無かったかな。
皆には竹の子堀りをして貰って、僕は昨日取れた魚と海老の下処理をして、残りの竹の子と一緒に塩で煮る事に。魚は僕を除いた人数分に切り分けた。丁度八人、割り切れて良かった。
鍋を火に掛けてから昨日仕掛けた罠を引き上げる。魚は取れなかったが海老と蟹が取れて良かった。
食事を取りながらエリスちゃんとリリアちゃんに注意をすると、二人だけじゃなく皆がキョトンと理解出来ないと言った表情をした。
「え?なに?僕変な事言ってない・・・よね?」
「変だよ。普通ノワール様位凄い人だったら沢山相手がいてもおかしくないって」
コルト君の指摘に今度は僕がキョトンとしてしまった。
「あ~そうか。ノワールさんが居た世界では違うと言う事なんだな?ここでは甲斐性のある男はもてるんだ。実際これだけの人数を養っている様な物だし、五、六人娶っていてもおかしくないと思うぞ」
「はぁ?!いやいや、皆さんの協力有っての事で僕一人でって訳じゃないでしょ?!そ、それにまだ未成年ですし」
「ん?何を言ってる?ここにいる全員を助けたのはノワールさん一人だろ。食料だって実質一人で集めているじゃないか。多少力は貸したかもしれないが、少なくとも俺には出来なかった事だ。それに、この中で未成年なのはリリアだけだろう?」
エンゾさんに言われて思い出した、地球でも大昔は成人になる年齢が低かった事を。
「で、でも、皆の事を子供達って言ってましたよね」
「ああ、それは相手がいないからだ。親からすれば一度も結婚していなければそれまでは半人前、子供扱いなんだよ。まぁ俺とキースも結婚出来なかったから、そう言う意味ではまだ子供なんだが親もいないしな」
文化と言うか常識が違いすぎると頭を抱えたくなった。
「あたしも早く子供産めるようになりたいなぁ・・・・・」
「ブハッ!」
リリアちゃんがとんでもない事を呟いたので、飲んでいた針葉樹のお茶を噴き出してしまった。成人の基準ってそこかよ!
兎に角今はそう言う状況じゃないからと問題を先送りにして、昨日の続きの作業を開始するのだった。
ここまで読んで頂き有り難う御座いました。




