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翌朝起きて川へと顔を洗いに向かう。ふと川上を見るとグランさん達の村人数人が見えたが、今は彼等の事より自分達の事を考えなくては。
空き地へ戻ると皆が起きていたので竹林の中へと向かった。
竹の根元の枯葉を掻き分けて竹の子を見つけては掘り返し、二十本程採って川へと向かう。川岸で竹の子の皮を剥いては革製の鍋に汲んだ水の中へ入れて行き空き地へと戻る。鍋を火に掛け塩を入れて煮えるまでの間に今後の事を話し合った。
「出来る限り早く準備を整え此処を離れたいと思います。理由は採取だけでは直ぐに行き詰るという事と塩の残りが少ない事。そして向こうの連中・・・まぁ、エンマさんを中心に嫌がらせをしてくる可能性が有るからです」
「それで、何処へ向かうと言うんだ?下手に移動する位なら、ここを広げて畑を作った方が良いと思うんだが」
エンゾさんの案に頷くキースさんとライルさん。
「海へ・・・此処から南に川を下って行くと、一面塩が取れる水だけになる場所が有ります。その手前ならば植物の生え難い土地が有る筈です。そこを拠点に北へ畑を作って行きましょう。そこまで行けば態々嫌がらせをしに来る事も無いでしょうし」
海水からだと苦汁のせいでエグミが出ると聞いた事が有るし燃料の問題も有る。でも上手く分離出来れば塩の心配は無くなるだろう。
塩害に強く食料になる植物が有ればそれに越した事は無いから、塩を作りながら並行して探すのも良い。
「塩が取れる水なんて物が有るのか・・・・・だが、そこまで歩いて何日掛かるんだ?子供達を守りつつ、そこまで行くとなると・・・・・」
「その心配も要りません。竹を大量に切り出して筏を作って川を下れば半日も掛かりませんから」
「筏と言うのが解らないが、半日ならば問題ないな。よし、直ぐに始めよう。指示を出してくれ」
エンゾさんとライルさんに竹を切り出して貰い、子供達に枝を払って貰う。キースさんには竹を切って貰い、蔓で二本一組に繋いで貰った物を川に沈めて重石を載せた。即席の罠だ。これで魚や海老が掛かってくれるかもしれない。
キースさんにエンゾさん達に合流する様に言って、僕は食料調達の為に周辺の散策に出た。
竹林の北側を歩くと直ぐに紫蘇が見つかったし、山芋の蔓も見付けたので掘り返す為にキースさんに竹を斜めに切って貰った。キースさんは手先が器用だと言うだけは有って僕より早く綺麗に切ってくれた。村では木を削って食器なんかを作って居たんだそうだ。
山芋を掘るのは大変だった。一本掘るのに半日掛かってしまった。この日はそれしか取れなかったが、明日は沢山取りたい所だ。
夕方に川から罠を回収した。魚二匹と海老や蟹も捕れたので、泥を吐かせる為に使っていない革の鍋に綺麗な水を汲んでその中に放して罠を掛け直した。子供達は直ぐに食べたがったが、どうせなら美味しく食べて貰いたい。
「今日は皆さんご苦労様でした。この調子なら三日後には出発出来るでしょう」
「何言ってんだ。腹一杯食ってたらこれ位楽勝だよな!エンゾ」
「ああ、ずっと葉っぱしか食べていなかったと言うのに去年の秋より調子が良い位だ。本当に必要な物が足りていなかったんだと痛感したよ」
「この白い芋も旨いけど、明日になったら魚も食べられるんだろ?俺はそっちの方が楽しみだ!」
「あたしは竹の子の方が好きかな。コリコリしてて」
やはり食事は大切だな。まだまだこれからだけど皆笑顔で食べて―――
「どうしたのエリスちゃん?具合でも悪いの?それとも仕事がきつかった?」
僕の隣に座っているエリスちゃんは何故か俯いて食事に手を付けていなかった。もしや病気かと額に手を当てようとした時、僕が伸ばした手を掴んだエリスちゃんは涙を流していた。
ここまで読んで頂き有り難う御座いました。




