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グランさんと二人で東の荒地を進んで行く。
昔はここに村が有って、今の村が有る所は僕の居る空き地を含めて畑だったのだそうだ。それが北側から徐々に収穫量が減って行き、南へと畑を広げて行って今の位置に村を移動したのだと言う。
元々は東の村もここから移住して行った人達が作った村で、多少の交流は有ったらしい。
そんな話を聞いているうちに荒地の反対側へ着き、木に凭れ掛かって座っている三人を見付けた。
「こんばんわ。皆さんここで何をしているのですか?」
警戒するグランさんを背に僕は刺激しない様に問いかけた。
「何だお前・・・人間か・・・・・俺達にもお迎えが来たのかと思ったぜ・・・・・良く見りゃグランも居るじゃねぇか」
三人共何処か虚ろで元気が無い。唯疲れているだけじゃなさそうだ。
「皆さん具合が悪そうですけど、大丈夫ですか?」
「エンゾ、何が有った?話してみろ」
「・・・・・・・・・・お前達には迷惑掛けたが、それももう終わりだ・・・俺達以外まともに動ける者はもういねぇ・・・・・流行病だ・・・お前もうつりたくなかったら近寄るんじゃねぇぞ」
「なっ!一体何時からだ!?」
「・・・春に入って直ぐだ・・・・・」
エンゾと呼ばれた人の話では去年の秋の収穫が酷く、冬を越す事が出来なかった者が全体の1/3で、生き残ったのは二十人程だと言う。春に入って周辺で採取もしたそうだが、直ぐに取り尽くしてしまったのだそうだ。
そして身体の弱い物から次から次へと倒れて行ったのだ。口から血を流し塞がった傷口が開いた者もいると言う。
おそらく壊血病だと思う。ビタミンCの欠乏から起こる病で、地球では主に船乗りが掛かったと言う話を聞いた事がある。この地の冬がどれ程の長さかは解らないが、数ヶ月の間野菜や果物を取れなければ陸上で掛かってもおかしくない。
「・・・・・グランさん、ここは任せます。彼等を見張っていて下さい」
「ん?それは勿論だが・・・・・おい!ノワール!何処へ行く!」
僕は「直ぐに戻ります!」と叫んで、空き地へと駆け戻った。
急いで戻らなければ助かる者も助からないと足の裏を怪我する事も気にせずに走った。
空き地で切った竹を三本抱えて川へと向かい水を汲んで戻り、植えたばかりの青紫蘇を全て引き抜き東へと向う。
こんな事ならもっと植えておけば良かったと後悔が頭を過ぎったが、今は助ける事だけを考えようと頭を振った。
「グランさん!皆さんは如何ですか?!」
「ああ、特に問題な・・・おい!それは植えたばかりの草じゃないのか!?お前、何を考えている!こいつ等が何をしたのか解っているのか!?」
「解っています。だからと言って見殺しには出来ません。彼等には生きて償って貰いましょう。さぁ皆さん、水と食べ物を持って来ましたよ」
半ば朦朧とした三人に水の入った竹を渡し、口に含む様にしてゆっくりと飲むように言い、青紫蘇の葉を千切って渡して形が無くなるまで良く噛んでから飲み込むように言った。
「大分落ち着いた様ですね。それじゃ行きましょうか」
「え・・・ど・・・何処にだよ」
恐る恐ると言った感じで聞いてきたエンゾさんに僕は当然の様に答えた。
「決まっているじゃないですか。貴方達の村ですよ」
驚愕の表情を見せるエンゾさん達三人を諭す様に優しく語り掛けた。
「僕が出来る限り力に為ります。貴方達を助けた様に一人でも多くの方を助けましょう。その為には僕一人では手が足りません。さあ、立って下さい。貴方達が犯した罪を償う為にもです」
衣の光が強くなり東へと向かう獣道を照らし出すと、エンゾさん達三人はふらふらと光に吸い寄せられる様に僕の元へと歩き始めた。
ここまで読んで頂き有り難う御座います。




