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翌日は日が昇る前に目が覚めた。
切った竹を持って川に行き、植えた青紫蘇に水をやる為に汲んで帰って耕した土にたっぷりと与えた。
そして竹を切り出す為に向こう岸へと渡り、竹林へと向かった。
昨日は東側からだったので気が付かなかったが、北側は竹林の手前が少し開けていた。切った竹を置いておくのに丁度良いな。
一心不乱に竹に石を打ちつけ切り倒し、枝を払っては置いて次へ行く。
疲れなんてちょっと休めば直ぐに消える。僕は薄暗くなるまで竹を切り続けた。
そろそろ帰ろうと昨日の倍の四本を肩に乗せようとしたが、重過ぎたので三本にして川原に出た所で後悔した。
バランスを取るのが難しく、足元に気を配る余裕が無くて石を踏みまくって超痛いし、川を渡る時には衣にも意識を向けなければいけなくて何度も沈みかけた。正直長時間竹を切り続けるのよりきつかった。
へろへろに為りながらも空き地に帰るとグランさんが焚き火を焚いて待っていてくれた。有り難い事だ。
「ふぅ・・・有り難うございますグランさん」
「やぁ、昨日も気になったんで見させて貰っているよ。何と言うかこれは凄い木だな。水汲みや器としても使えそうだ」
グランさんが水汲み用に作った片側の塞がった竹を見て言った。
「良かったら幾つか差し上げますよ。川向こうに沢山生えてますし、持ち帰れない程切り倒して来ましたから」
「今持ち帰って来たのもこれを作るのかい?」
「いえ、これは縦に半分に割ってですね・・・ん?誰か来ましたよ?」
村の東側、僕が落ちて来た方から男の人がやって来た。
「む、見張りはどうした?奴等がもう来たのか?」
「ああ、性懲りも無く来やがった。今は東の荒地に入った所に座ってやがる。明日の朝にでも攻めて来るつもりなんじゃねぇか?」
「今夜は交代で見張りをしよう。で、今回は何人だ?」
「見えたのは三人だったな。奥に隠れてるのかもしれねぇが」
二人の遣り取りにふと疑問を覚えたので口を挟んでみた。
「あの~・・・今回はって毎回人数が違うんですか?」
「今までは大体十人前後だったが、何度も追い返されたので何か策を考えて来たんだろう」
なんでも東に半日程行った所に有る村から、数日置きに攻めて来ていたらしい。
「・・・・・それっておかしいですよね?夜に来て姿を見せる意味は無いと思いますけど?後ろに隠しているなら全員で隠れて寝静まってから夜襲を掛けた方が良いと思いますよ。それに昼間で無きゃいけない理由って有るんですか?」
「奴等の狙いは作物だからな。昼間で無ければ見えんだろう?」
「それなら尚更夜の方が良いんじゃないですか?全く見えない訳じゃないんだし、見付からない様に盗んでいけば戦って怪我をする危険を避けられます・・・今まで夜に来た事は無かったんですか?」
「そう言われてみれば・・・確かにその通りだな。何時もは昼前に来て夕方には帰って行っていたし・・・・・」
少数で今まで来た事のない夜に、しかも姿を見せる意味は・・・・・そこまで考えて嫌な予感がした。
「・・・・・話を聞いた方が良いかもしれません。僕が行きますから、皆さんは村の入り口で待っていて下さい」
「待て、俺も行こう。君一人に任せる訳にはいかない」
立ち上がり歩き出した僕にグランさんが付いて来た。
「解りました。でも、襲われない限り手は出さないで下さい。何か余程の事情が有ると思うんです」
頷くグランさんを連れて衣を光らせながら彼等の居る荒地へと急ぎ足で向かった。
ここまで読んで頂き有り難う御座います。




