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聞く耳を持たない以上は実力を見せつけるしかないので、やはり空き地の再生しかないと竹を担いで持って帰った。

竹は斜めに1m程の長さに切って、スコップ代わりに空き地を掘り返して行く事にした。


「おお・・・意外と掘れるな。これなら石で掘るより早そうだ」


最初は狭い範囲で良いだろうと、1m四方の範囲で掘り続けて行くと、深さ40~50cm程で赤土から黒土へと変わった。

赤土と黒土を混ぜ返し、森から運んだ腐葉土を混ぜて均して行く。


思った以上に早く再生出来そうだと、耕した所に植える物を探しに森へと入った。


昨夜は薪を拾うだけだったので入り口付近しか入らなかったが、今日は少し奥まで入ってみる事に。

迷わない様に木の幹に傷を付けながら進んで行き、生えている草等を観察。

結構進んだ所で漸く見知った葉と似た物を見付けた。


大葉・・・青紫蘇だ。葉を一枚毟って食べてみたが味も紫蘇その物だったので地面を掘り返し、合計四株程根ごと持ち帰って植えた。

このまま根付いてくれればと、水をやる為に竹を加工している内に暗くなってきた。

昨日に引き続き錐揉み式に挑戦。今回は何とか火を着ける事に成功した。


取って来た竹は斜めに切った物を二本作り、残りは節の所で真っ直ぐに切って片側が塞がったままにしておく。これで水汲みが出来るな。


石の平らな面でゴリゴリと竹を削って切り口を整えているとグランさんがやって来た。律儀な人だ。


「こんばんわ、グランさん。これ見て下さい、このまま根付く様なら他にも植えてみようと思うんですけど・・・・・如何かしましたか?」


例によって申し訳なさそうな顔をしているのは、昼間の女性の件だと思う。


「ああ・・・エンマが・・・その、私の妻で女性陣を纏めているんだが・・・何でも『妙な物を渡されて食べろ』と言われたと聞かされてね。気味が悪いから捨てたとも・・・・・」


エンマって「地獄の王様かよ!」と突っ込みそうに為ったが、日本のネタが通じる訳が無いので止めた。


「概ね合ってますけど、そんな乱暴な言葉遣いはしていませんよ?まぁ今まで見た事が無い物だったせいも有るんでしょうけど。それより、畑の件ですけど、反対されてしまったんですか?」


「ああ、そんな暇が有るなら、狩りに行った方がましだと言われてね」


「余計な事をするなって言われた時点で予想してましたから気にしないで下さい。目で見て解る様にここを畑に変えて見せますから。その為にもまだまだ必要な物を作らないといけませんけど」


先ずは竹を加工して川から水を引こうと思っているのだが、切り出すだけでもかなり大変だ。正直鋸が欲しい。


「そうなる事を期待しているよ。それと川の上を歩いていたと聞いたんだが、本当か?」


「ええ。便利なんですけど、他の人から見たら気味が悪いでしょ?だから、これも呪いの内の一つですよ。この服も光るんですよ・・・ほら」


衣に意識を向けると裾の刺繍が光だし、グランさんが目を剥いて驚いた。


「何と言うか・・・確かに何も聞かされていなければ気味が悪いと思うだろうな・・・・・人に嫌われる呪いか・・・・・」


「兎に角偉そうな事を言う癖に底意地の悪い奴なんですよ、神って奴は。何が有っても助けてくれないし、それを試練だ何て言うんです。その癖罰だけは与えるんですよ」


「難癖をつけてか?」


「ええ・・・笑っちゃいますよね・・・ククククク・・・・・」


二人で笑い合った後、グランさんは帰って行った。

僕は彼の背中を見送りながら一人呟いた。


「攻略対象外とか思ってご免なさい」


と。

ここまで読んで頂き有り難う御座います。

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