09
「まぁ解りやすく言うとですね、大地も生きているんで働く為には人間と同じ様に水と食事と休息が必要だって事です」
「・・・大地も生きている、か・・・・・だが、水は解るが食事と言うのは何だ?休息と言う事は作物を育てない期間を作ると言う事か?」
「森の木々が何故枯れないか解りますか?あれは自分達で食料を作り出しているからなんです。根元の枯葉の下を見れば解りますよ。土の色がこことは違いますから」
「では森からその土を運んで畑に混ぜれば良いと言う事か?」
「はい。それでですね、土を混ぜただけで何も植えない畑を作って・・・・・こんな感じで何種類かの作物を育てて下さい」
僕は地面に図を書いてローテーションの説明をした。
「ふむ・・・なるほどな・・・収穫の終った畑から試してみよう」
「そうして下さい。明日から僕はこの土地を生き返らせる為の道具作りから始めようと思います。後は森の中で食べられる草を探そうかなと」
「土地を生き返らせる・・・か・・・・・他にも色々知っていそうだが、教えては貰えないのか?」
「出来ればお教えしたいんですけど・・・皆さんが如何言う生活をしているのか知りませんし、その為には先ず村の中に入れる様にならないと、です」
「あ、ああ・・・そうだな。すまなかった」
「やだなぁ謝らないで下さいって言ったじゃないですか。こうして気を使って様子を見に来てくれるだけで十分ですから」
「そうか・・・・・それじゃ、俺は寝るとするよ。おやすみ」
「はい。おやすみなさい」
お互い目を見合わせて笑みを溢した後、村へと帰って行くグランさんを僕は見送った。
ごろりと横になり焚き火を眺めながら一日を思い返し目を閉じる。
色々有ったが肉体的疲労感は無かった。だが精神的に疲れていたのだろう、気が付いた時には日が昇り始めていた。
朝靄の中を川へと向かった。顔を洗って水を飲み、周囲を見渡す。こちら側の川原では目ぼしい物は見つからなかったが向こう側なら如何だろうか?
衣に意識を向けて川へと一歩踏み出すと問題なく歩けたので、そのまま歩いて渡る事にした。落下速度は落とせなかったが水の上は平気らしい。
川の中心付近まで歩いた時に背後から短い悲鳴が聞こえたので振り返った。
「あ、おはようございます。驚かせちゃってご免なさい」
数人の女性が水を汲みに来たのか、木や革で出来た器の様な物を持って固まっていたが、挨拶をしたら走って村へと戻ってしまった。マジで凹む。
僕の事はこう言う生き物だと思って貰って、慣れて貰うしかないな。
そんな事を考えながら向こう岸へ着くと、周囲を見渡し使えそうな石を探したが見付からなかったので、昨日と同様に石を割って使えそうな物を拾った。
昨日は北へ向かったが、今日は何と無く南へ向かってみた。
暫く川沿いに歩いていると河口が見えて来た。と言ってもかなり遠いので、ちょっと行って来ますと言う訳にはいかなそうだ。
村の皆に御土産でもと川原から森へと入り、戻りながら散策をしていると、日本で見慣れた物が見えて来た。
竹林だ。竹なら利用価値は高いし竹の子も取れると根元を探し回り竹の子を二つ採取。4~5m程の竹も何とか切り倒して二本持ち帰った。
川を渡った所で取ってきた竹の子の皮を剥いて居ると、数人の女性がこちらを見ていたので「こんにちわ」と挨拶をしたら、その内の一人がこちらに近寄って来た。
「あんた、何やってんだい」
三十代後半位に見える彼女は厳しい目付きで僕を睨んだ。
「あ、これを向こう岸で見つけて来ました。柔らかくなるまで煮て食べて下さい」
彼女は僕の手渡した竹の子を川へと投げ捨ててしまった。
「ああ・・・勿体無い・・・・・皆さんの食糧事情の改善に成ると思ったのに・・・・・」
「ふん・・・あんな奇妙なもん食べられるもんかい。あんたグランに余計な事吹き込んだらしいじゃないか。余所もんの癖に出しゃばるんじゃないよ」
「はぁ・・・・・余計な事って・・・そうやって新しい事を拒んで必要な知識を手に入れなければ何時か滅んでしまいますよ?現に収穫量が減っていると聞きましたが、他に対策は有るんですか?」
「ガキが生意気言うんじゃないよ。追い出されたくなけりゃ大人しくしてんだね」
おそらく彼女が村に受け入れてもらう為の最大の難関なのだろうけど、こちらの話を一切聞く気の無いあの態度を見る限り、ギャルゲーの攻略対象外のキャラ並みに無理だと思った。年齢的にも。
ここまで読んで頂き有り難う御座います。




