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第五話 幼馴染1


「でー、今日呼び出した理由そろそろ聞きたいんだけどーいいかー?」


 相変わらず間延びした話し方をするのは僕の親友の待田清隆だ。

 僕、蔦谷理人はある用事のために彼を呼び出し、ファミレスで歓談していたところだ。

 退屈なのか清隆は左耳のピアスを弄りながら窓の外を眺めている。そろそろ本題に入るべきだろう。


「まず何から話したものかな……」


 少し考え込んでから口を開く。


「僕に妹がいるってことは話したっけ」

「えっ」


 ガシャンと机の上のコップが揺れる音が響く。

 というのも、清隆はそれまで肘をついて左耳を弄っていた手をテーブルに叩きつけ、こちらに向き直っていたからだ。

 僕は意外な反応に少し困惑する。


「えっ、なに清隆ってロリコンなの?」

「なわけねーよ、俺はどっちかってーと年上好きだ」


 心底どうでもいい。と、手をヒラヒラさせて興味がないことをアピールする。


「で、その、まあ、来週から妹と一緒に暮らすことになるわけなんだけどさ」

「え、マジ?一人暮らしのおめーといもーとが一緒に住むとか何か間違い起きねー?」

「お前は何を言っているんだ。ロリコンなの?」

「なわけねーよ、俺はどっちかってーと」

「さっき聞いた」


 一向に話が進まない。僕は遮るように手のひらを清隆に向けてそれ以上喋るなとアピールしつつ話始める。


「で、来週から妹と一緒に暮らすんだが、まあ理由は親父が海外に転勤して親父ラブな母親もついていくことになって妹を押し付けられただけなんだけども」

「それでそれでー?」


 ニヤニヤしながら聞いてる清隆がうざすぎて殴りたくなってくるがグッとこらえる。


「で、だ。妹と久しく会ってなかった訳で、これから一緒に暮らすことになるし、こうプレゼントでもした方がいいんじゃないかなとか」

「ちょっと聞きたいんだけどいーか?」


 清隆が授業中に一度も上げたことのないであろう左手を上げて質問してくる。


「はいなんですか清隆君」

「せんせー、妹さんは何歳なんですかー?」

「妹の年齢気になるとかロリコンか?」

「なわけねーよ、俺は」

「聞いた」


 今回のやり取りは少し不満が残ったのか清隆の方から口を開く。


「だってさープレゼント考えるんなら相手の年齢知らないとじゃーん?例えばだけど中学生くらいの子になんとかムーンのステッキとかあげても白い目で見られそうじゃん?」

「いや、それは多分どの年齢の子に上げても興味示されないと思うよ。いつの時代だよ」

「例えばっつってんだろ!今の女児が何の子供向けアニメ見てるかとか知らねーよ」

「ロリコンなのに知らないのか?」

「なわけ」

「聞いた」


 前半は清隆のボケに突っ込む形だったが後半は完全にこちらが悪乗りしており、本題から逆に遠ざけていたしそろそろ真面目に話を進めていこう。


「で、そのプレゼントを探す手伝いをして欲しいとお願いしようと思ってな。あ、ちなみに妹は今年10歳になる。つまりロリだ。小学4年生だ」

「おめーの方がロリコンじゃねーかよ」

「知らん」


 清隆のツッコミを突っぱねたが、清隆は小首をかしげている。


「いやでもそれだと俺に聞くのは間違ってねーか。そーいうのはクラスの女子かおめーの幼馴染の……なんだっけ」

結瑞(ゆず)

「そうそれ、そいつにでもききゃいーじゃんかー」

「いや、まあ、一応聞いたんだけど……」


■■■


――ある日の放課後


 HRが終わり、皆思い思いに席を立ち、部活に向かったり帰宅したりで教室はごった返しになっていた。

 そんな中僕は席を立たず、隣の席に座る女子の肩を軽く2回ほど叩く。


「結瑞、ちょっといいか」

「ん?どったの?」


 友人との話を中断してこっちに結瑞が向き直ると、結瑞の友人はじゃーね~と軽く手を振りながらそそくさと去っていく。

 少し申し訳ないことをしたなと思って軽く頭を下げる。


「わり、邪魔したな」

「いいって、いいって。それでそれでー?つたっちが話掛けて来るとか珍しいじゃん」


 小学校からの付き合いの結瑞は僕のことをつたっちと呼ぶ。

 正直高校生になってまでその呼び方は恥ずかしいので辞めていただきたい、と再三お願いしているが一度も聞き入れてもらえていない。


「いい加減つたっちって呼ぶの辞めてくれないかな。誤解される」

「何を誤解されるのカナー?おねーさん分かんないや~」

「同い年だろ」


 顎に手を当てて首を傾げるが全然可愛くない、うざい。


 加藤結瑞(かとう ゆず)、少し赤みが掛かった短髪でエメラルドのような綺麗な緑色の目をしているのが特徴的だ。


「同い年っていうけどー私のが誕生日早いんだよ?」

「その発言がもう子供っぽい」


 ただ、その子供っぽさがアホな男子からは人気なのか男の友達はそこそこ多いらしい。

 女子から妬まれることもなくはないそうだけど、本人が全く気にしておらず仲良く接して来るせいでいじめる気も失せるのだとかなんとか。

 胸は小さめのため、男どもからやっぱり女としては見れねーよなぁ~と苦笑いされている光景を幾度となく見てきたし、そもそもライバル視される事自体そうそうないのかもしれない。

 しかし本人のメンタルはそんなに強くはなく、ただ鈍感なだけだから絶対に教えてはならない。


「で、何か用があるんじゃないっけ?」

「ああそれなんだけどさ」

「結瑞、女子が貰って嬉しいもんってなんだ?」

「!!!」


 ――その瞬間、結瑞が凍りついた。

 それはまるでゴキブリが手のひらに乗っかった時のよう、脳が情報を処理しきれずフリーズしたかのような、そんな感じ。

 僕は乗っかったことないけど。


「おーい」


 つんつんと結瑞のほっぺを突っつくと、魔法が解けたかのように結瑞の時間が動き出す。


「あ、ああ。うん。そう、そうなんだ……」


 結瑞は椅子に深く腰を落ち着け、机に肘をついた状態で頭を抱えている。

 おまけにブツブツ訳のわからないことを呟いていて怖い。


「ええっと……。質問には答えてくれない感じかな」

「お花でもあげればいいんじゃないの?」


 あ、コレ多分勘違いしてる。

 そうだよな、女子って聞き方が悪かったよな。

 僕は別に女子一般ではなく、結瑞のような比較的男子寄りな女子がどういうプレゼントを好むかということを知りたかっただけなのだ。


「そうじゃなくて、結瑞が貰って嬉しい物聞いたつもりだった。わかりにくかったかな」

「えっ!?」


 ガバッっと勢いよく結瑞が立ち上がる。

 今の彼女には邪悪なオーラは漂っておらず、表情は心なしか晴れやかであった。


「なぁ~んだぁ~そうならそうと言ってくれればよかったのに~」


 ニヤニヤした顔で、体をモジモジさせながら結瑞がすり寄ってくる。


「気持ち悪い」

「ガーン!」

「あっ」


 つい思ったことが口から出てしまっていた。

 結瑞はそのまま倒れ込んで四つん這いの体勢になってううっううっっと嘘泣きの仕草をしている。

 表情豊かで羨ましい限りだ。


「あーもう、早く質問に答えてくんないかなぁ」


 軽く頭を掻きながら急かすと結瑞は立ち上がって僕の手を取り――


「やっぱり……私も花、かな……?えへへ」


 と俯きながら、上目遣いであざとく言ってくるが、さっきと返答が変わってなくて何も参考にならなかった。


「ま、ありがと。……帰ろうか」

「うん♪」


 僕の手を握ったままの結瑞を引っ張って教室を後にした。


■■■


「おめーが悪い」

「何で!?あいたっ」


 話し終わった僕は清隆に右手で軽くチョップを食らっていた。

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