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Re:ライフ ‐勇者の働き方改革‐  作者: クラマ・ククル
第三章 エルダードラゴン最後の日
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4.最後の地


 姉弟子入魂の土下座が、あまりにも悲しすぎて同情したのか、アリアは渋々とリズを連れて行くことを了承した。

 僕達は再び空へと戻る。

 狭くなった骸のドラゴンの肋骨の内側。右から順番に、アリア、僕、リズといった並びで収まっている。

 アリアとリズが仲が悪いお陰で、僕は図らずも両手に花を抱えることになった。

 ドラゴンに乗り込んだリズは、先ほどまでの殊勝な態度はどこ吹く風。けろっとした顔で寛いでいる。


「しっかし、あんたって本当に生きてるのね」


 左隣のリズは、先ほどから僕の体をペタペタと触ってくる。その反対隣のアリアは、その手をぺちっと叩いて追い払った。


「あんまりカイトくんに触らないで下さい」


「いいじゃない別に。アリアの恋人って訳でもないんでしょ?」


「しかし、カイトくんの雇い主は私です。つまり、カイトくんは私の所有物って言っても過言ではありません」


「過言だろ……」


 アリアの言い草に僕は突っ込む。

 どこぞのブラック職場のような横暴ぶりだ。

 そんなアリアを余所に、リズはくりっとした瞳で僕をじっと興味深そうに見据える。


「ねぇねぇカイト」


 リズは出会った直後から気安く話しかけてきた。だから僕も肩肘を張らずに接することができる。


「なに?」


「普段のアリアってどんな感じ?」


「どんな感じって、こんな感じだけど……いや、普段はもうちょっと大人かな?」


「ふ~ん、大人なのね」


 リズが訳知り顔で大きく相づちを打った。

 アリアは居心地が悪そうに眉を顰める。


「ちょっとリズ。カイトくんに変な質問しないで下さい」


「へんな質問じゃないわよ。お師匠様がいつも心配してるから、アリアの様子をお伝えしておこうと思ってね」


 リズはウインクをした。

 アリアは眉は更に中央により、ばつが悪そうにする。


「……たまには顔を出してるじゃないですか」


「それでも心配なのよ。あんたは技術だけ習得したら早々に飛び出していったからね。まだネクロマンサーとしてのあり方を、教えてなかったってお師匠様は常々呟いているわ」


「哲学は自分で作るものなので結構です」


「ホント相変わらず可愛くない妹ね」


「妹が可愛いなんて幻想ですよ」


「そんな捻くれたこと言ってないでもっと家に顔を出しなさい、親不孝者」


「未だに親離れできないスネかじりにだけは言われたくないですね。ってうか、過保護の師匠が、よくリズにひとり旅を許可しましたね。もしかして黙って出てきたんですか?」


「違うわよ。社会勉強だからって許して貰えた訳。まぁ、あたしが優秀だからかな?」


「骸の使役さえも私より一年も遅れた癖に、よく言えますねぇ」


「うっさいわね」


 僕を飛び越した姉妹を会話はテンポ良く進んでいく。いくら仲が悪くても、短くない時間を一緒に過ごしただろう二人は、どこか呼吸が似ているような気がした。そして、僕としては、アリアの知られざる一面を目の当たりにできたので、ちょっとした儲けものだった。

 賑やか空の旅は続き、やがて山岳を抜けて荒野を少し進んだ先に、突如大地の盛り上がりが出現した。その盛り上がりは、限り弧を描いて左右に見渡す限り伸びている。


「これは巨大なカルデラなのか?」


 僕の呟きにアリアは同意する。


「ええ、そのようですね。遙か昔の巨大火山の名残……それが最後の地の正体だったのでしょう」


「ここからでも分かるわ。魔力が溢れているわね。これは高純度の魔石が沢山採取できるかも」


 リズの言うとおり、魔力に敏感ではない僕でも魔力の暖かみを感じ取ることができた。

 魔力とは自然エネルギーの一種である。

 つまり、魔力で溢れているということは、それだけ自然の生命力がみなぎっているということ。それを証明するように、カルデラの内側は樹木が生い茂り、樹海が一面に広がっていた。

 そして、遙か向こうに見えるカルデラの中央付近の上空。そこには無数のドラゴンが飛び交っている。きっと、あの場所が僕達の目的地だ。


「さすがに空からでは近づけませんね。ここからは陸路で樹海を抜けることになりそうです」


 アリアは骸のドラゴンを操って、高度を下げた。僕達は低空でホバリングするドラゴンから、大樹の太い枝木の上に降りる。

 改めて地上からカルデラの中を見ると、そこは自然で溢れていた。濃い緑色の風景なのはもちろんのこと。見たことない草花や、どこからともなく聞こえてくる奇妙な鳥の鳴き声、色鮮やかな虫の姿など、ここは独自の生態系で成り立っている。

 骸のドラゴンを黒い霧に戻して回収したアリアは、早速目的に向かって進もうとする。

 所々樹木が隙間無く生い茂っているので、枝木を渡り歩くことで樹木の上を進むことができた。

 リズもアリアの後に続き、荷物を背負った僕もその後ろに付く。


「あら、リズも付いてくるんですかぁ?」


 アリアはちらっと後ろを振り返る。ちょっと嫌そうな言い方だった。

 しかし、リズはそんなアリアの態度にめげることもなく、


「当たり前じゃない。なに迷惑そうな顔してんのよ?」


「エルダードラゴンは私のものですよ?」


「分かってるって。エルダードラゴンは譲ってあげる。けど、ここにはきっとドラゴン以外にもレアな骸が落ちてるわよ~。こんな経験そうそうできるものじゃないわ」


 リズはそうやって嬉しそうに言うと、きょろきょろしながらも、足取りはしっかりとアリアを追う。魔法使いながら、アリアと同じく身のこなしは軽やかである。

 まあ、僕としてはリズをここで待たせるよりも、一緒に行動した方が安心だ。ただしアリアとの言い争いは、この後も絶えないだろうが。


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