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Re:ライフ ‐勇者の働き方改革‐  作者: クラマ・ククル
第二章 鉱山崩落で人形遊び
19/41

6.卒業(仮)


 色々あったが、僕とミシェルは無事に魔石を持ち帰ることができた。

 帰宅後アリアには、中央衛兵のナタリーが鉱山の視察に訪れていたことや、町の近くに賊が出没してることを一応報告する。


「怪我はありませんでした?」


 アリアはミシェルの頭に手を置いて心配する様子を見せた。


「なんともないですっ」


 と、ミシェルは健気に返事をした。


「アリア、僕の心配は?」


 僕も僕もとアリアにねだってみる。


「カイトくんは勇者なんですから、矢で射貫かれようが、剣で刻まれようが平気でしょ?」


「勇者はアンデットじゃねぇよ」


 残念ながら相手にされなかった。


「とにかく、懸念材料がいくつかあるようですね。しかし、仕事はきっちりとやりましょう。前金はしっかりと頂いているので」


 この程度の問題では、アリアの商売は止まらないようだった。

 そういう訳で、材料が集まった翌日から屍人形作りに取りかかる。

 屍人形を複数同時に作るというのは、アリアも未だかつて行ったことがないようだ。よって、普段の作業場は狭すぎて使えず、急遽お城の大ホールで執り行うこととなった。

 メンバーは、アリアはもちろんのこと、僕、ミシェル、アンジェ、フレデリカもお手伝いとして参戦する。


「さあ、みんなで人形遊びをしましょう」


 アリアは笑顔で一同にそう告げた。

 アリアの言う人形遊びは、とてもではないが楽しそうには聞こえない。


「では準備にかかります」


 アリアはにわかにローブを脱ぐと、更にその下に着ている黒のワンピースまでも、するりと床に落とした。


「え、え、え!?」


 これにはさすがの僕も驚愕である。

 現在のアリアは、黒の艶めかしい下着を身につけているだけ。均等がとれた美しい身体を、惜しげもなく皆に披露している。

 服の上からでは分からなかったが、胸の膨らみも予想以上にあって、僕の呼吸は自然と荒くなった。もしかして本日で卒業できるかもしれない。

「カイト様、すっごく嬉しそうな顔してますよぉ?」

 そんな感じで思考が暴走気味の僕の表情を、ミシェルは覗き込んできた。


「そ、そ、そんなことはないっ」


「嫌らしいですねぇ」


「だって! 脱ぐんだもん! アリアが!」


 僕は鼻息荒く主張する。もはや言い訳になっていないような気がした。

 アリアは、やれやれと肩を竦めながら、


「ほら、カイトくんも服を脱いで下さい」


「やっぱりか!?」


「人形作りは体がべたべたに汚れるので、服を汚さない為です。それ以外の理由はありませんよ?」


 とても冷静に説明された。


「ですよねー」


 まあ、分かってはいたさ。

 だとしても、作業の間は下着姿のアリアがずっと観賞できるというで、眼福天国なのは間違いない。

 アリアは長い髪を一纏めにし、後ろで団子に結って自身の準備を整えた。

 ミシェル、アンジェ、フレデリカの三人もエプロンドレスを脱いで下着姿になる。こちらは、可愛らしくもまだまだ未熟な体つきだ。でも、一番肉体年齢の高いフレデリカは、なかなかのモノだった――これ以上の感想は僕の名誉に関わるので控える。

 下着姿の女子四人の視線が僕に突き刺さり、


「どうしたんですかぁ? カイト様、早く脱いで下さいよ」


 ミシェルが代表して女子の総意を述べる。

 ミシェルの指摘通り、僕は未だ服を着たままだった。

 僕はもじもじとしつつ、


「やっぱり、脱がないとダメ?」


 と、聞いた。

 すると、アリアは半眼になり、


「なんでカイトくんが一番女々しいんですか……」


「だって恥ずかしいじゃないか……」


 こっちの世界の生活が馴染んだからとはいえ、僕は元々シャイなシティボーイだ。学校のプールの授業で嫌々脱いだのを除けば、人前で自分の肉体を見せたことはないし、胸を張れるだけの自信もない。

 さっきは勢い余っていたが、初夜は薄暗い中でと決めている。

 そんな風に僕がごねていると、突然フレデリカが僕の隣にすっと立った。彼女は背伸びをし、僕の耳元で冷たく囁く。


「……カイト様」


「どうしたの?」


「……服が汚れるとします」


「うん」


「……その服って誰が洗うんですか?」


 フレデリカの静かな問いに、僕は背筋を寒くした。

 そうです、毎日従者の皆さんに洗濯をして頂いています。

 僕はズボンのベルトに手を掛けた。


「脱ぎます」


「……はい。そうして下さい」


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