1■本当にピアノの先生か?
さすがに一つ目から、あんまり重いのもどうかと思って、少し「いきなり音楽教室」の雰囲気を残したような思い出をひとつ。
ピアノ教室の話し。
昔、近所の先生に習っていて、その先生がやめちゃったので、新しい先生を探していて・・・
という理由で、ウチに来た子がいる。
以前に習っていたなら、楽譜も読めるだろうし、しばらく弾いていなかったとはいえ、ピアノの弾き方も少しは覚えているだろう。
そう思って始めたレッスンで、すごく苦労したことがある。
その生徒さん、楽譜が読めなかったのだ。
「これは何の音?」
と聞くと、
「うーん・・・」
と止まってしまう。おーい、起きろー!
「この円盤みたいなのは、ドの音」
「ふうん」
ふうん、って。小学生にもなっていれば、音楽の授業でも習うだろうが。
「まあ、とにかく、この音だけは覚えようね」
「うん」
ということで、まずは「ド」の読み方を教える。
「じゃあ、曲を弾こうか。今までやっていたのはこの楽譜?」
「うん」
というので、以前やっていたという楽譜を開く。ちゃんとどこまでやったかわかるように、書き込みもされていた。
確かツェルニーの100番練習の真ん中辺だった。(40番目くらいかな。勿論両手で弾く曲。)
「じゃ、弾いてごらん」
と言うと、また固まる生徒さん。
「最初の音、わかる?」
「うーん・・・」
うーん、じゃないよ。わかるかわかんないか聞いてんだよ。
「わからない?」
「うーん・・・」
どっちだよ。
困ったなと思い、ツェルニーの一番最初の曲を開いて指さし、
「じゃあ、この音は?」
と聞くと
「ド」
と答える。
さっきと同じ音だよね?
なんで答えられるの?
で、なんでアッチは答えられないの?
「そうね、これ、ドね」と言いながら、さっきの曲に戻り「じゃ、コレは?」と聞くと、
「うーん・・・」
おおーい!
君の頭ん中どーなってるの!?
また一番最初の曲を見せて
「この音は?」
「ド」
「この音、上から二番目の間の音でしょ?高いドね?」
「うん」
わかってるねえ。と思ってさっきのわからなかった曲に戻り
「じゃ、コレは?」
「うーん・・・」
「上から二番目の間の音だよね?」
「ああー・・・」
「わかった?」
「うーん・・・」
わかんないのかーい!
「上から二番目の間の音はドだよ?」
「うん」
わかったのか?
「じゃ、コレは?」と、違うページの上から二番目の間の音を指さしてみる。
「うーん・・・」
おい!
「ドだってば」
「うん」
大丈夫かいな、と思いつつ、全然違うページの、上から二番目の間の音を指さして
「じゃ、コレは?」
「ド」
「当たり」他のページにも上から二番目の間の音を探して
「じゃ、コレは?」
「うーん・・・」
なーぜー!?
わかるドとわからないドがあるっていうのが、わからない。
なんだかわからないけれど、今までの曲は読めることが多くて、まだ習っていない曲はまったく読めないらしい。
よくよく楽譜を見てみると、楽譜に指番号が書いてある。その他、色で丸がしてあったり、音名が書いてあるところも結構あった。そして、
「1がドで、2がレで、3がミでしょ?」
と言いやがった。マジで~?
「じゃあ、4がファで、5がソって覚えているの?」
と聞いたら頷いた。
「じゃあ、ラとシは?」
と思ったら、楽譜に書いてあった。
なんだそりゃー!
五線の意味なし。楽譜の読み方を全く教えてないどころか、五線を無視して教えてるんじゃ読めるようになるはずがない。
一からやり直しだ。こりゃー、手こずるぞ・・・
この子に教えたピアノの先生、出てこい!