1・マイナス
とりあえず異世界に来たわけだがこの後どうすればいいんだ?ミスチーに聞いてみる。
「なぁ、この後どうすんの?」
さっきまでぶつぶつ言ってたミスチーがいきなり悪い笑顔になる。
「それぐらいは自分で考えて下さい。私は帰りますんで。」
いちいち言う事が腹たつなぁと思いつつ聞く。
「境の道に帰れる転送スイッチを持ってるんですよ。たしかここに・・・あれ?」
ミスチーが急に焦った顔をしはじめた。
・・・だいたい想像はできた。
「転送スイッチがない・・・!」
見事に予想的中した。こいつ本当に神様の下で働いてるのか?でもいい気味だ。俺をさんざん馬鹿にした罪だと思っとこう。そう思っているとミスチーが俺に涙目で問いかけた。
「この後どうするんですか?」
俺が聞きたいぐらいだよ!境の道で死んだ者達を異世界に連れて行く役目してるのだったらだったらそれぐらい分かっとけよ!ツッコミたいのはいっぱいあるが俺は心を一旦落ち着かせこう言った。
「この後どうするか俺も分からないんだがこの異世界はレベルもあるぐらいだったら魔法とかもあるんじゃないのか?」
「たしか魔法は一人に一つはもってるはずですよ。レベルを知りたい時と同様、頭の中で自分の魔法を知りたいと思うだけです。」
一つだけというのは少ないんじゃないのかと思いつつミスチーの言われた通りにしてみた。
すると目の前にレベルと名前がでた同様に自分の魔法の種類が表示された画面がでてきた。
あれ?でもこれって・・・。
「なぁミスチー、俺の魔法3つもあるんだけど。」
「あなたが機会をいじったせいじゃないですか?まぁ私も魔法の事に関してはそんなに知らないですけど。」
「お前が風を操れるのは魔法か?」
「はい魔法ですね。神様一人一人違う魔法を持っています。さっき私は神様の下で働いてると言いましたが、実際は風の神様です。そういうわけで風を操ることが出来るんですよ。」
まじか、こいつ神様だったのかよ。こんな奴も神様なんだなぁと思いつつ俺の魔法の説明を見てみる。
【チェンジ:指で差した相手と自分の場所を入れ替える】
【コピー:10秒間だけ触れた相手の能力を使える。】
【スモールマジック:火・水・氷・光の4つの初級属性魔法が使える】
3つとも結構いい魔法だ。魔法も確認したことだし、そろそろこの何もない草原でずっといてるわけにはいかない。とりあえず、かすかに見える街の方に行くことにしよう。
「ミスチー、とりあえず街の方へ行くぞ。」
ミスチーは涙目ながらも怒った顔でこう言った。
「どうして神様がニートと一緒に異世界で暮らすんですか!まずタメ口はやめてください!人間が神様にタメ口とかありえないんですけど!これはあなたのせいですからね!あなたが機会をいじらなかったら・・」
「そうか、じゃあ俺一人で行ってくるわ。」
ミスチーの言葉を完全無視してきっぱりと言った。俺はレベル100だし、こんな役立たずの神様がいなくても一人で異世界生活を楽しめるだろう。俺は街の方へと歩き出した。するとミスチーが俺の脚を掴んできた。
「すいませんでした!どうか私を見捨てないでくださいいいい!」
何だろう、すごくめんどくさい事になった気がする。でも一応こいつは風の神様らしいから仲間に入れとくのも悪くない気がする。
「ミスチー、まずは街に行こう。話はそれからだ。他にもこの異世界について色々聞きたいこともあるしな。」
「そうですね・・。でも街に行く途中でモンスターと遭遇しなければいいですが・・・。」
おい、そのフラグを立てるような言い方はやめろ。本当にモンスターと遭遇してしまうだろ。
そう思った瞬間、近くから鳴き声が聞こえた。
「ぷよ・・・・。」
鳴き声の方を見るとそこにはどこかのゲームで見たことあるようなスライムみたいな奴がいた。
「ミスチー、あいつはモンスターか?」
「はい、あいつはレベル1の超絶ザコモンスターの【ぷよよん】です。」
なるほど見た目からして弱そうだ。・・・まてよ?ここで魔法を実践してみるか。俺はぷよよんの方に手をかざした。
「<ファイア>ーっっっ!」
俺は3つの魔法のうちの一つ、スモールマジックの火属性魔法を使った。初級属性魔法だがレベル1にはこれで十分だろ。手から小さい火がでてき、ぷよよんの方へと向かっていく。ぷよよんは炎に包まれてく。
ここまではよかった。
何とぷよよんは無傷だったのだ。そしてぷよよんは何事もなかったようにどこかに行ってしまった。いやいやいやいや!そんなはずはない。レベル100の俺がレベル1のモンスターににダメージをあたえてないだと・・?!
すかさず俺は自分のレベルを確かめた。
【ワタル:-100】
は・・?はあああああああああ?!レベルの所がマイナスになってるううううう?!俺はミスチーに即座に尋ねた。
「ミスチーこれはどういうことだ!!」
「たぶんですけど、あなたが機会をいじったせいで壊れたと思います。そのせいで、あなたのレベルはマイナス100です。お気の毒に・・ぷぷっ(笑)」
自分のせいというのは分かってるんだが、こいつの言い方は何故か無性に腹が立つ。
でもマイナス100という事は俺はレベル1の奴より弱いという事になるのか・・?!
「最悪だ・・、最悪すぎるううううう!!!!」
「あなたのせいで、境の道からこの異世界に来た者達にも支障がでてるでしょう。あなたが機会をいじらなければこんな事にはならなかったのに・・残念ですねぇ~~。」
「そういうお前はどうなんだ!あの機会の中にお前の名前があったはずだぞ!!」
「・・・・へ?」
ミスチーの顔がどんどん暗くなっていく。俺はミスチーのレベルを見てみた。
【ミスチー:Lv1】
予想的中だ。ミスチーのレベルはマイナスではなかったがぷよよんと一緒のレベルになっていた。
俺はミスチーにどうしても確認しておきたいことがあった。
「これってモンスターとかを倒して経験値みたいなのをゲットすれば、レベルは上がるんだよな?」
「上がると思います。ですがマイナスのレベルなんて初めて見たのであなたのレベルは上がるかどうか・・・」
マジかよ。という事は俺のレベルはずっとマイナスのまま・・・。
俺は何も考えずにふらふらと歩きながら街の方へと向かった。
「じぁあ街へ行こうか、ミスチー・・・。」
「そうですね、ワタルさん・・・。」
異世界に来て20分ぐらいしか経過してないが俺は大声で叫んだ。
「こんなのは俺が思ってた異世界とは違あああああああああああう!!!!!」