2・Lv100
見えない壁の向こうにいる少女はいったい何者なんだ?まず境の道というのか、この場所は。
俺は少女に色々聞きたいことがあるがまず確認しておきたいことを言った。
「俺って死んだんですか?」
「はい、ワタルさんは元の世界では死にました。ですが、あなたは転生したのです。」
転生ということは俺は生まれ変わるのか?!姿はこのままが良いんだが。ザコモンスターとか赤ちゃんとかにはなりたくない。一応そのことを少女に聞いておくことにした。
「俺は生まれ変わるんですか?」
俺の問いに少女はクスクス笑いこう言った。
「そんなことはしませんよ。あなたはそのままの姿でその歳で異世界に行くことになります。その異世界で【死狂】という者をたおしに行ってください。あと、レベルを決めます。」
死狂?たぶんその異世界のラスボスみたいな奴なのであろう。
それよりレベルってどういうことだ?異世界はゲームみたいにレベルとかステータスとかがあるとでもいうのか?
そんなことを思っていると少女の目の前にパソコンみたいなのが出現した。
「それじゃあ、あなたのレベルを決めます。色々質問するので正直に答えてください。」
俺の質問の答えでレベルが決まるのか。嘘を言おうと思ったが嫌な予感がするので止めることにした。
「あなたの名前は六月航ですか?」
「はい。」
「あなたは17歳ですか?」
「はい。」
「あなたは元の世界では無職でしたか?」
「・・はい。」
「あなたは親から毎月金をもらっていましたか?」
「・・・はい。」
「あなたは避けれる距離にも関わらず車に轢かれましたか・・ふふっ(笑)」
今絶対笑ったよな。しかも質問の後半おもしろがってやってただろ。何か腹たってきた。
「まぁ質問なんてしなくても異世界に初めて行く人のレベルは1って決まってるんですけどね。」
じゃあ質問する意味ねぇじゃん!!さっき出現したパソコンは何だったんだよ!
こいつ最初から俺をからかってたな・・。
「じゃあ壁を消しますね。」
そう言うと目の前の見えない壁がなくなった。これでやっと異世界に行けるのか。こんな場所とはおさらばだぜ!そうして俺が3歩ぐらい歩いた時に少女の口からとんでもない言葉を聞いた。
「この道をまっすぐ行くと出口です。それじゃあさよなら。【ニート】さん。」
・・今何て言った?俺は歩いてた道を戻って少女の方に近づいた。
「俺、ワタルという名前があるんですけど!ニートさんって何ですか?!」
少女は悪い笑顔を見せてこう言った。
「そう呼んだ方が良いかなと思いまして。」
何だろう、こいつすごくうざい!異世界に行く前にこいつを懲らしめてやりたい。その気持ちでいっぱいになった。
そうは言ってもこいつの名前を聞いてなかった。
「あなたの名前を教えて下さい。」
すると少女は銀色の髪を手でくるくる回しながらこう言った。
「私の名前は【ロード・ミスチビアス】です。ミスチーで構いませんよ。」
「ミスチーさん。その機会は何ですか?」
俺はパソコンみたいなものを指差して尋ねた。
「これは異世界に行く人を管理する機会ですよ。ここで異世界に行く人の名前とレベルを決めてます。
まぁ私は神様の下で働いてるんですけどね。私はここ、境の道で死んだ者達を異世界に行かせる役目をしてます。あなたの生前は何かおもしろかったので・・ふふっ(笑)」
また笑いやがった。とりあえずあの機会で俺のレベルを決めてるのか・・。
俺は機会の方に向かった。キーボードもパソコンと一緒だな。俺は大声でこう言った。
「ニートのキーボード打ちなめんなよぉ!!!!!!」
俺はキーボードを高速で打ち・・・と思っていたのだが、これの使い方が全く分からん。
俺のレベルを変えようと思ってたのにどうやってするんだ?
俺のキーボード高速打ちを披露しようと思ったのだが・・・。
「無駄ですよ、ハヤトさん。あなたが元の世界で使っていたパソコンとは訳が違いますから。」
俺はもうやけくそになってキーボードを適当に打った。
「何をしてるんですか!そんなことしたら・・。」
ミスチーのあせった声が聞こえるが俺はやめなかった。そして適当に打った後、機会の画面を見た。
【ワタル:Lv100 ロード・ミスチビアス:Lv不明 ・・異世界強制モード・・】
異世界強制モードってどういうことだ?そう思った瞬間、機会が空中に浮きだしこう言った。
『異世界強制モード・実行シマス』
するといきなり地面に大きな穴があいた。ということは・・・。
「落ちるぅぅ!!!!!!!!」
何か俺、とんでもないことをした気がする。俺は落ちながらもちらりと右を見た。
・・・マジかよ。ミスチーも一緒に落ちてるじゃないか。
「ワタルさん何やってるんですかぁ!!」
ざまぁみろ!さんざん馬鹿にされた仕返しだぜ!でも落ちた先は本当に異世界か不安になってきた。
そう思って下を見ると緑色らしきものが見えた。いや、違う。俺は急降下していくごとにその緑色の正体がわかった。草原だ。でもやばくね?この速度で下に見える草原に落ちたら・・・・
「やばい、ミスチー!このまま落ちたら俺たちは死ぬんじゃ・・」
ミスチーは嫌そうな顔をしてこう言った。
「私は【風】を操れるんです。落ちる寸前に風であなたを受け止めます。」
その言葉の通り、俺が落ちる寸前に優しい風でつつまれた感じがし急に落下速度が遅くなり無事に草原に着陸出来た。
「なんでこうめんどくさいことになるのかなぁ・・あぁめんどくさい・・。」
ミスチーが何かぶつぶつ言ってるが俺は尋ねた。
「ミスチー、俺のレベルが知りたいんだが。」
「頭の中でレベルを知りたいと思うと目の前に出てきますよ。」
その言葉の通りすると目の前に文字が浮かび上がってきた。
【ワタル:Lv100】
え?レベル100ってどういうことだ?!
・・あ、思い出した。たしか異世界に行く前に俺が機会を適当にいじった後、その機会の画面に俺のレベルが100ってでていた。普通はレベル1から始まるはずがレベル100ということは・・
「俺、すごく強いんじゃないのか?!」
ゲームでレベル100から始まると面白くないが、今は違う。異世界だ。
この俺、六月 航はLv100から異世界生活を始めることになったのだ。
「異世界生活楽しむぞぉぉ!!!」