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最恐最悪の魔銃  作者: サコロク
王の再来
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導きの焔

激しい痛みに段々と意識が覚醒する。視界は暗く何も見えない。

一つだけ分かっていることは落下したのにもかかわらず死んでいないという事実だった。


「うっ……ここは遺跡の地下、なのか?……」


元々謎が多かった遺跡であるため下の階層があってもおかしくはない。問題は、なんのためにこの遺跡があるのかということだ。国は《魔銃》に関連していると言っていたが、上の遺跡にはそれらしきものはなかったし、そもそもそれだけのものが置いてあるのならば罠の一つや二つあってもおかしくはない。なのに罠どころか生物すらいないのだ、おかしいとしか言いようがない。


「だが、ここは上とは違うみたいだな……」


ミコトは少し落ち着いた体であたりの気配を探り始めた。すると、並みの人間ではありえないような魔力が周りに数えれるだけでも三十近くはいた。


「まじかよ……神格フェーダ級の魔物がこんなにか。まさに生き地獄だな」


神格級の魔物は桁外れに知力が高い。敵と判断すれば容赦のない禁忌級の魔法が何発も飛んで来るだろう。普通の人間んでも太刀打ちできないそれが三十もいるとなれば、絶望を通り越して死にたくもなってくる。

だが、不思議とミコトは落ち着いていた。余計なことを考えて頭を使うよりもどうにかしてここから抜け出せないかを考えた方がマシだと判断したからだ。こんな状況でも物事を合理的に考えてしまう自分がなぜか笑えてしまう。しかし、それが正しい判断とも言えるだろう。


「……とりあえず進むしかないよな……」


鉛のような体をどうにか起き上がらせると、周りにいる魔物に見つからないように気配を消しながら歩き始めた。


少し進むと段々と魔物の気配がはっきりとしてくる。ここで一瞬だけ ”暗視ブラインドサイト” を発動する。するとそこにいたのは、大きな翼を持った騎士だった。

と、その瞬間、騎士がこちらの微かな魔法を探知したのかこちらを振り向いた。


「冗談だろ、こっちは気配を消している上に魔法も最小限に抑えた発動だぞ……」


呆れ半分に思わず呟く。だがこっちの事情など知らない騎士は問答無用でこちらまで近づいてくる。傷をおっているミコトにはあまりにも分が悪い


「全力を尽くして逃げるしかないな……」


そうは言ったものの逃げ切れるだけの体力はないに等しい。だからミコトは悪手を使うことにした。

それはローレンスでは禁忌と同様に扱われる技である。それは威力の問題ではなく、使用者の負担の問題であった。


「秘技・《震通じんつう》」


これは亜夜がミコトに教えた体術のうちの一つだ。拳に魔力そのものを詰め込み相手の内部に叩き込む、それによって相手の構成している魔力を中から打ち壊すという技である。だが、魔力を体の部位に集中させると、その部分に尋常じゃないくらいの負担がかかる。だから魔法を使う場合は武器を媒介にして撃ち出すことが基本とされるのだ。

こちらに近づいてくる騎士を ”暗視” で見ると、鎧の周りにとんでもなく分厚い障壁がある。そしてそれを維持するための魔力が翼から送られているようだ。つまりその流れさえ断ち切れば少なからず逃げる時間は稼げるだろう。

だが、その思惑は見事に打ち砕かれた。


「なっ!?」


ミコトの拳は確かに届いた、しかし甘かったのだ。この騎士の障壁には魔力そのものを通さないように分解魔法ディスペルがかけられており、ミコトの込めた魔力は打ち込むどころか霧散するように消えてしまって。

だがまだミコトの目は死んでいなかった。


「じゃあこれはどうだ? 奥義・《零の邂逅》」


騎士に巡る魔力の脈に物理的に干渉し、分解魔法を使わずして相手の魔法を打ち消すその技はどんな魔法でも打ち消せる。それは障壁でも例外ではない。

しかし、それは同時に純粋に魔力のみで構成されたものなら消すことはできないということも意味していた。純粋な魔力でできたものとはつまるところ魔力の塊だ。つまり、脈そのものが存在しない。


「嘘だろ……こいつ本気で純粋な魔法のみで構成された魔物だっていうのか!?」


目の前の騎士はさっきの状態から何一つとして変わっていなかった。つまり、今のミコトがこの騎士にできることは何もないという結果が出たのである。そしてそれは同じく死を意味する。

もはやなす術などない、そう思った瞬間、


『…… ”爆ぜろ” 』


声が聞こえたと思ったら、目の前にいた騎士が爆発した。しかも木っ端微塵に。

あとに残ったものなど何もなかった。微塵も残さないとはまさにこのことを言うのだろう。

ミコトは何が起きたのか理解することができなかった。

すると、いなくなった騎士のいた場所に小さな光が集まり始める。そしてそれはやがてゆらゆら揺れる小さな焔になった。


『……汝は何を求めてここに?』


急にその焔から声が聞こえてくる。それはさっきも微かに聞こえた透き通るような女の声だった。


「俺は……真実を求めて、かな?」


そもそもミコトは自身この遺跡に入る理由などなかった。上からの命令に従ったまでにすぎない。命じられた内容が調査であったためにそれに近いニュアンスのことを咄嗟に言った。


『力を求めてではないのか?』

「力? なんだそれ」

『この遺跡に眠りし大いなる力、それを求めてここまで来たのではないのか?』

「いや、少なくとも求めてここまできたわけじゃないよ」


ジルバと戦い崩落した先にたどり着いたのが神格級の魔物の巣窟であって、望んでここにくる人間などそうはいないだろう。


「……それよりも君が助けてくれたのか?」

『助けた? ……違うな、単なる気まぐれだ。ここまでたどり着いた人間はお前が初めてだからな。私を満足させるに値する人間か確かめる前に死なれても興ざめだ。久しぶりの来客というのに相手が死人では話にならんしな』

「だけど助けてくれたことには変わりはないさ、ありがとう」

『ふむ……お前変わっているな。こんな得体の知れない奴に礼を言うなど普通の人間ではありえないぞ』

「あいにく、普通じゃないんでね……」


普通ならばこんな場所にいるはずがない、そう言いかけたが愚痴るのも失礼だろう。

それよりも、この焔がなんなのかとことにミコトはものすごく興味が湧いていた。


「ところで、あなたは一体何者なんだ?」

『…私は、ノーマ。《焔》を司る者だ。お前の名は?』

「俺は、天月ミコトだ」

『天月……そうか、 ”天月の子” か……これもまた運命なのだろうな……』


ノーマと名乗った焔は一人呟くようにそう言った。


『おいミコトといったか、お前は《資格》を持って来ているか?』

「《資格》? なんだそれ。あいにく必要な物以外もってきていないからな、お前の言う《資格》が何かはわからないが多分ないぞ」


すると突然ノーマが黙る。焔であるために何をしているかなどミコトに理解できるはずがないが、どうやらミコトを見ているような感じであった。


『……なんだ、持って来ているではないか。よし、私について来い』


それだけ言うと焔がまるで導くように動き始めた。それにつられるようにミコトもついていく。


「なあ、魔物は大丈夫なのか? さっき数えただけでも相当な数だったぞ」

『問題ない、あれは私の配下のような者だからな』

「なっ、お前それをあっさり吹き飛ばしたのかよ」

『あんな物、玩具にすぎないではないか。まあ人間相手には釣り合わんがな』


釣り合うとか言うレベルではない。あれは間違いなく人知を超えた存在である。それを玩具と言うノーマの方がもっと異常でもあった。


「それよりも《資格》って何なんだ?」

『なんだ? 気付いてないのか。お前のその ”銃” だよ』

「これが《資格》?」

『お前、それが何か知らずに使っていたのか?』

「だってこれただの魔法銃だろ?」


今までこの銃に特別なことなど何もなかったし、あえて言うならば魔力が通しやすいと言うぐらいだ。

亜夜の大切な形見だったので今まで肌身離さず大切に使っている。


『違うな、それは私達の最初の王であった人物が創った《循環》と呼ばれる銃だ。まあ私達は ”ロード” と呼んでいるがな』

「私、達?」

『なんだ? お前《焔》と言ってピンとこないのか? まあ私達が表から消えて百年以上になるから仕方ないといえば仕方ないのだがな……』


ノーマが百年以上表に出ていないと言ったところでミコトは薄々気づいてきた。


「まさか! あんたらが《魔銃》なのか!?」

『今はそんな名で呼ばれているのか……随分物騒な名前にされたものだ』

「……冗談だよな?」

『……いや、私こそ星天十二界セレスティアル、序列三位《焔》のノーマ・レグサリアだ。ようこそ私の空間へ、歓迎しよう天月ミコト』


すると、急に周りが明るくなる。

周り一面白で染まったような空間。そこはまるで汚れが存在しないと思われるくらいの幻想的な空間であった。

そして、その空間の中央の祭壇のような場所にミコトを導いた存在がいた。それは長い髪の炎髪に燃えるようなドレスを着た美しい女性だった。その女性はフッと笑う。


「さあ、《試練》の時間だ……」



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