そして…
「じぃちゃん?」
さっきまで呑気に床に転がっていたじぃさんが消えた…
さっき何か言おうとしたよね?それって、言っちゃいけない事だった?
この能力の消し方って、ペラペラ話す事じゃ無いって事なの?
私は、ちょっと心配になって家中じぃさんを探した。
「やっぱり居ない…」
駅まで子供を迎えに行かなくてはならないので、じぃさん探しを中断した。
しばらくしたら戻ってくるだろう。
念のため 時計は机に置いたまま。
運転しているとふと気づく…
あれ?なんか、何時もと違う…
そうだ!見えないんだ。
あそこに立っていた彼もスーパーの袋を下げたばぁさんもコンビニ前の兄さんも見えない!
元に戻った!神様が聞いてくれたんだ私の願い!
夏休み前の平々凡々の毎日がまた送れる。
なんて幸せなんだ。平々凡々!
普通って素晴らしい!
「母さん何浮かれてんの?」
「いや、何も?何時もと変わらないよ♪」
「そうだ!ねぇ今日は手巻き寿司にしようか」
寿司ならじぃさん好きだし、戻って来たら一緒に食べよう。
家に戻るとじぃさんは、戻っていない。
何事もポジティブ精神だから何処かに遊びに行ったんだろう…
それから夏休みが終わってもじぃさんが戻る事は無かった…
神様は、私に一体何を伝えたかったんだろう?
平々凡々が一番?って事を教えたかったのかな。
今までに無い、刺激的な夏が終わった。
年が変わろうという 今
私の左腕には、動き出したじぃさんの時計が時を刻む…




