予兆前編
天魔の古城の東にある港町≪自由都市クルス≫
≪自由都市クルス≫
表向きはどこにも属さない都市国家となっているが、その実態は天魔信仰国家であり、天魔王の影響下にある国である。
交易船より、歳は17歳くらいであろうか長い髪を横で縛った凛とした美しい人族の女性と槍を持ち頭に狐の耳の生えたフレアス族の騎士風の女性が降り立つ。
「ん~疲れましたね?ミリス。」
と人族の女性がフレアス族の女性に話しかけた。
「はい。地面があるって心地いいです。」
「フフフ。さてと早く父様の手紙を私に行きましょう。」
「リム様。今日はもう宿を取って休みませんか?」
「あらあら・・・それもそうですね。」
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5日前≪獣人国ビースガルド≫
≪獣人国ビースガルド≫
獣人が王として納める国。東方大陸北部全土を支配地域にした大国。古くは海王との戦いを勝利に導いた国。
黒髪、黒目の若作りの男性は考え込んでいた・・・友である獣人王に相談された亜人王復活の件である。
男性の名はトウマ・キサラギ。20年前この世界に迷い込んだ異世界人の一人である。ここで知り合ったファング・トーラに助けられながら光の精霊に認められ勇者として海王の側近を仲間たちと共に倒した英雄である。
考え込んでいると隣に座っていたエルフの女性が話しかけてきた。
「あなた、考えても仕方がありませんわ。600年周期暗黒期には滅せなかった魔王が復活すると古文書にも書かれていますし・・・」
長い髪をサイドで束ねたこの綺麗な女性はリーン・ガーランド20年前、聖女として一緒に戦った仲間であり、現在はトウマの妻である。
「・・・ああ、そうなんだがもっと嫌な予感がしてならないんだ・・・リーンが感じた嫌な気配は全部で6つ・・・そして過去滅しきれなかった魔王は5つ・・・」
「考えられる最悪は、5つの魔王の復活・・・さらに新たな魔王の誕生・・・」
「考えたくはないがな・・・はぁこうしていても仕方がないルディス様に相談してみよう。」
「それがよろしいかと。ついでにあの子に運んでもらえば修行にもなるし♪」
「そうだな。リム!リムはいないか!」
「は~い父様!」
走りながらこちらへ向かっている足音が響いた。
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クルスにあるそんなに豪華ではない宿の一室
「ねえミリス!天魔王様って、父様みたいにかっこよいかな?」
「またですか?ファザコンって言うんですよそういうのは。」
「ファザコンじゃないもん!普通だもん!それに貴方だってそうじゃない!」
「な///もう知りません!寝ます。」
そんなたわいもない話をして夜は更けていった。