亜人王
キョウたちがドーパンへ向かっている時の情勢です。
「ギャギャ」「ギャギャ」「ギャギャ」「ギャギャ」
「おいおい、これはやばいでござるな早く皆に知らせないと・・・」
忍者服に身を包んだクラマは音もなくその場から消えた。
・・・・・・・・・・・・・・・
山脈手前の野営地
「はっ!」
竜人族の侍ライゼンの斬撃で、ザシュッ!と音とともにゴブリンナイトが崩れ落ちた。
「くっこれじゃきりがない!」
年若い人族の侍サコンは、ゴブリンソードを倒しながら愚痴を吐き捨てる。というのも30分前から戦いっぱなしなのだからしょうがない。ライゼンは周囲にいる仲間に声を掛けるように、
「こっちは何名やられた!」
「12名です。」
と1人の少年が答えた。
「ハヤテ!お前まだここにいたのか!さっさと行け!貴様の仕事をしろ!」
「ギャギャ」
「うわぁ~」
突然現れたゴブリンにハヤテが驚いた。シュパッ!ドサ!
「何をしている!ここは戦場でござろう!」
「クラマ戻ったか!さっさとこいつら片付けるぞ!」
「了解でござる。」
クラマが加わって数分後にようやく襲ってきたゴブリンを全て退治することに成功する。
「ふぅ~・・・クラマ殿助かりました。」
サコンはクラマに礼を言ってその場に座り込んだ。
「礼には及ばぬでござる。それより早くここを引き払った方がいいでござるよ。」
「それほどか。それで内部の方は?」
「無理でござるよ。あれほどの上位種がいては・・・亜人王が復活している可能性が非常に高いでござるが、確認するのは無理でござった。」
いつの間にか立ち上がっていたサコンが荷物をまとめ
「荷物まとめました。」
「よし。ドーパンに戻るぞ!」
彼らはボルクの指名依頼で調査に来た『疾風の牙』である。Bランクパーティーこの辺りでは、最強のドラグーナ出身者で形成されたパーティーである。
本来は3人パーティーであるが、ドラグーナより人探しのためルインにきたハヤテが臨時でパーティーに加わっている。彼らによりもたらされた情報はギルドの通信網を利用してすぐさま王都へ伝えられ、すぐに騎士団を中心に討伐軍が編成される運びとなった。
そしてドーパンでは、ここを防衛するのか、それともガードナに全員で非難しガードナで防衛するか意見が分かれ協議が続いていた。
ドーパン領主トゥエル・ディアスは住民だけでも先に逃がしたいのだが、その護衛に割く兵士が足りず、ギルドを利用して冒険者を募っているが集まりが悪い。
王都からここドーパンまでは、どんなに急いでも10日かかる。そのため討伐軍を待っていては、遅すぎる。また先日の息子であるプエル達がしでかした事によりギルドもあまり協力的ではない。
その協議の場に突然伝令の兵士が乱入してくる。
「失礼いたします。」
「何事だ!」
トゥエル厄介ごとのように感じたためいやそうな顔をして兵士に聞き返した。
「はっ!ゴブリンの軍勢と思しきものがここドーパンに向かって進軍中であります。その数およそ1000とのことであります。」
会議に参加していた貴族の男が立ち上がり
「何!1000だと!こちらは冒険者も合わせて200がいいとこだぞ!」
このままではドーパンは全滅であることは、明らかである。トゥエルはさらに頭を悩ませることとなった。
次回はキョウ視点に戻ります。