進路
西城とのたのしかったライヴも終わり、寒風すさむ12月。
我ら中3は入試前、試験勉強踏まえ進路相談をすることになり、俺たちは図書室へいっていた。
「ようちゃん、ここ間違ってるよ。」
すかさず如月が訂正する。如月あなどれん。
「如月ってどこの高校行くんだ?」
「ようちゃんは?」
「俺は泉ヶ丘にいくつもりだけど。」
「そっかぁ…。んじゃ私もようちゃんと同じにするね。」
「俺より出来るんだからもっと上の高校行けばいいのに…。」
「そうだよ。俺と同じ清陵にすればいいじゃん。」
横から唐突に隆史が口を挟む。以前はウザイの一言であったが、前回西城に言われてから妙に如月を意識してしまっているので、隆史は救世主のように思われた。
「清陵って…斉藤くん頭いいんだ。」
今気づいたかのように言う如月。そりゃ学年一位の才女からしたら俺たちなんか…。
「え…、一応俺学年5位なんだけど…。」
如月に少しでもアピろうと、必死に勉強した隆史君。上位になればそれないりに目に付きやすいので覚えて貰えると思っていたのだ。
「ごめん。全然気づかなかった。そっか学年5位か。だったら清陵なんか楽勝だね。」
二人が盛り上がっているスキに俺は西城と話をしようじゃないか!!
「西城はどこにいくの?」
「敬愛だよ。」
え…。
俺は固まってしまった。西城と同じ高校に行こうと思っていたのになんと西城は女子校にいくと言うのだ!!
「そっか…、敬愛か…。合う機会が少なくなっちゃうね。」
俺は西城と別れてしまうのではないだろうかと不安で堪らなかった。
「そうだね。でも、メールとか電話とかできるじゃん。それに女子校なんだから他の男に惚れることなんかないよ。」
どうやら西城は気を使って言ってくれたらしいが、俺には『他の男』という言葉が銃弾のごとく心臓に突き刺さった。
「そうだよな。女子校なんだからな。杞憂だったよ。」
笑いながらごまかしても心の隅にあるモヤモヤは消えなかった。
「ん、どうしたんだ?」
隆史が落ち込んでいる俺に気を利かせて話しかけてくれた。
「西城は敬愛に行くんだってさ。同じ高校行こうと思ってたから結構ショックで。」
西城には聞こえないように隆史に耳打ちした。
「そっか。でも女子校なんだからそんなに心配することないだろ?」
「西城も同じ事言ってたけど、なんかモヤモヤした物が消えなくてさ。」
「心配しすぎだって。西城だってお前のこと好きなんだから気にすること無いさ。」
うう…。持つべきは親友と上手く言ったのもだ。
今日はこれでお開きになったが正直なところ俺の不安はぬぐえなかった。