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青春謳華  作者: 桂木 景
7/50

ライヴ

believe my love

私はあなたへの 思いを信じている

気づくのが遅かったけれど 辛いこといっぱいしたけど

あなたは私に 振り向いてくれるだろうか


会場には多数のファンが詰めかけ、ほぼ満員。今は遠坂の新曲を生でお披露目中。

俺はあんまり遠坂の歌が好きじゃないんだけど(っていうか名前だけしか知らないし)この曲は気に入った。トップアイドルっていうんで結構ファンシーな曲も多かったんだけどこういうラブソングだったら結構好きだな。西城とのデートを盛り上げてくれそうだし。


この思いを あなたに

伝えることが 出来たなら

自然と脈打つ 私の愛が

あたなを包み込むでしょう


サビの部分で西城が俺にこそっと声を掛けてきた。

「エミちゃんってあんなに身長低かったっけ?」

西城に言われてみるとテレビで見るよりか、身長が低い。所詮テレビなんだろう。

「ちょっと低いような気もするけど…。俺たちと同期だったりして。」

周りのファンから睨まれたので俺は黙ることにした。


believe my love

この愛が永遠でありますように


歌が終わると万雷の拍手。このライヴ一番大きな拍手だった。

「ありがとうございます。始めてのラブソングだったのでトチっちゃった所もあったんですけど、どうでしたか?」

遠坂の問いにファンが口々に絶賛し始めた。

「気に入って貰えて良かったです。だけど、残すところ後1曲になってしまいました。皆さんとのお別れは非常に寂しいのですが、仕方ありません。いつもの曲でお別れしましょう!」

そう言ってデビュー曲を熱唱しながら、通路を歩き始めた。俺たちの立ち位置がたまたまその通路脇だったので、後ろから押してくるファン達の餌食になってしまい。かなり苦しかった。(おかげで西城と密着できたけど。ウヒヒ)

遠坂を触ろうと通路にはファン達の手で溢れかえっていった。遠坂は若干イヤそうな顔をしたが、すぐさま営業スマイル(?)に変わって速く切り抜けようとしているのが目に見えた。

俺たちの横を通った時にふと俺と目があった様な気がしたが、何事もなかったように通り過ぎ、ドアから消えてしまった。


「本日はご来場誠にありがとうございます。全課程が修了致しましたので…。」

退場を促すアナウンス。ドアに近い方から係員が鉄柵(?)を外し、俺たちが出れるようにした。


「新曲よかったね。今度シングル借りようかな?」

「始めて聞いたけど、違った曲風もなかなかいいね。ますます人気に拍車がかかると思うよ。」

「今度また一緒に行こうね。」

「今度は俺がチケット用意するよ。」

「でも取りにくいでしょ。高いし。無理しなくてもイイよ。げ…、外雨だし…。仕方ないか、傘買ってくるね。」

西城は近くの売店に傘を買いにいってしまった。

俺、折りたたみ持ってるのに…。今更西城の厚意を無駄に出来ないし…。

ふと周りを見回すと、女の子が困ったようにしていたので俺はその子に傘を上げることにした。西城に持ってることバレたら後々、気まずいしね。

「傘ないんだろ?これ使えよ。」

「え…、でもそんな…。」

いきなり見知らぬ男に傘使えって言われても焦るわな。普通の反応。

「大丈夫だって。んじゃ、俺はいくから。」

半ば強引に彼女に傘を渡すと俺はそそくさとさっきの場所に戻った。

と、なんと実にタイミングの良いことだろう。西城が傘を2本買ってきてくれた。

「はい。サイズ分からなかったから取りあえず一番大きなのを買ってきたから。」

「ありがと。んで、いくらだった?」

「そんなのイイよ。プレゼント。」

ん〜。男として好きな女に金を出させるのはな…。そのかわり貢ぐ気も全くないけど。のちのちお礼になんかあげなくちゃ。

「ありがたく受け取っておくよ。電車乗り遅れたら面倒だから、行こうか。」


俺はこの時、強引に傘を渡した彼女の視線に気づいていなかった。

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