ファン多数
一組一曲がこの学校の野外ライヴの鉄則である。俺たちは名残惜しそうな観衆を完全無視して、ステージから降りた。
「うん、やっぱり君たちの曲は素晴らしいね。遠坂さんじゃなないと二人の伴奏について行けなさそうだし…。本格的にウチでデビューしてくれる火が待ち遠しいよ。」
関係者以外立ち入り禁止の張り紙を無視した蛮行。柳は何喰わぬ顔で控え室に入ってくる。
「デビューするきなんてねぇっていってんだろ。こりねぇ人だな、あんたは。」
俺は多少の皮肉を込めて言ってやった。
「そりゃぁ、そうだよ。こんな逸材を手放すようなバカじゃないからね。本人達の意見なんて世論の前では風の前に塵と同じ。」
「俺たちは陽介について行くだけだからな。本気でデビューさせたかったら、陽介を懐柔するんだな。……まず無理だろうけど。」
「先輩達が使いたがっているみたいだよ。でようよ。」
こんな所に長居しても仕方がないので、遠坂の言う通り控え室を出ることにした。
「サインくださーい。」
「私EDENの大ファンなんです〜。」
おっかけとはまさしくこのことだろうか?控え室の前には小規模ながらも、女性陣が待機しており俺たちに執拗にサインを迫ってくる。隆史なんか”好き”って抱きつかれてるし。
「これが世論だよ。君たちが単独でこの場を抜けるのは厳しいだろうね。まぁ、デビューさえしてくれたら僕たちが守ってあげるけど。」
これは一種の脅迫である。しかし、俺はこんな卑怯な手でデビューしようというほどバカではない。ふ、柳後で楽しもうか・・・w
強気になってみたのの、この人数と圧力(物理的な)には勝つことができない。何とかして彼女達にお帰り頂かなければ・・・。ってか、まだ体育館でのライヴの仕事あるし・・・。そうか、クラスの奴を上手く使って。
「隆史、委員長に電話して救出してくれるように頼んでみろ。」
「その手があったな。」
隆史は女性達に服や髪、いろいろな所を捕まれながら電話して助けを求めた。
数分後、なぜか「SP」の腕章を着けて救出に来てくれた。それはそれはプロと見まごうばかりの腕前。正直、関心していしまった。
「午後からのライヴが押してます、早く控え室に入ってメシ喰って準備して下さい。」
なぜに敬語?お前、もしかしてマジでこの仕事やってねぇ?
「わかった。」
遠坂が満面の笑みで返すとそいつはほんのり頬を紅く染めた。
ふ〜む、遠坂の人気は絶大だな。
控え室に戻ると、そこにはなぜか西城がいた。
「陽介!ライヴ良かったよ〜♪」
「そ、そうか。」
顔が紅くなっているのを自覚しつつ、観られないように伏せる。
「相変わらず遠坂さんの声ってすごいねぇ=。私絶対あんな声でないよ〜。」
のほほんと笑っているその笑顔は罪です。これ以上私のチキンなハートを刺激しないで下さい。
「陽介、なに上がってるんだよ。」
苦笑混じりに隆史は耳うちする。
「うっせーよ、ちょっとビックリしただけだ。」
「またまた、無理しちゃってぇ〜。嬉しいんだろ?コノヤロー。」
「うるせぇー。」
「なぁに、ヒソヒソやってんのよあんたら。ギターのチューニングしたから弾いてみて。」
山口があきれ顔でギターを放り投げる。
うん、流石だな。いい音を出している。
「問題無いみたいだね。午後からちょっと回ってくるから、無茶な弾き方するんじゃないよ。」
俺の弾き方はギターに負担を掛けるらしい。思いっきり釘を刺された。
ま、こういうのだったらデビューのイイかな?って思ったりしてる。
本文が短い上に、更新遅れて申し訳ございません。
他の作品に浮気していたのもあって、ぜんぜんイメージが浮かばず、このような結果になってしまいました。
毎日顔を出して下さった皆様に深くお詫び申し上げます。
なお、またしばらくの間、新連載を予定しております小説の下書きをしなければなりませんので更新できません。下書き終了後こちらも執筆させて頂きます。
ひきつづきご愛読よろしくお願い致します。