GALL
控え室に向かい、最後にリハーサルを行う。
この一回の演奏で全てが決まる。少しのミスも許されない。
「陽介、調子わりーの?キレが全然ねぇぞ。」
「あ?いつも通りだぜ。お前の耳が狂ったんじゃねぇの?」
「だと良いんだかな…。俺はな、この一回に全てを掛けてるんだ。俺の夢、お前と…今は遠坂も入ってるけど一緒にメジャーデビューしたいんだぜ。」
「知ってる。いつもブチブチいってるじゃねぇか。」
「俺の夢が掛かってるんだ。来年も、再来年もあるけど。俺はこの一瞬に全てを掛けたい。」
「そんなこと、ここにいる奴ら全員だろ?」
俺らの後ろで話を聞いているのを指さした。
「分かってるんだがな。お前のギターに魂が入ってない。なにか雑念でもあるんじゃね?」
さすが、隆史。一瞬で読みとったか。あなどりがたし。
「は?気のせいじゃね?」
「そうか…。」
「ホラ、始まるぜ。」
係員が舞台でスタンバイするように指示してきていた。
「おう。」
俺たちは予選の時よりも遙かに凄まじい熱き戦場に繰り出した。
俺たちが舞台に上がると、さっきとは一変。会場の空気が変わった。さんざんマスコミに煽てられた俺たちだ。その実力がホントの物なのか見極めたいのだろう。
「泉ヶ丘高校の皆さんでオリジナル曲GALLです。」
司会が紹介をすまし、俺は隆史に目で合図を送る。
ここは戦場、恋愛感情とかは全て捨てなければならない。俺は…捨てきれるのだろうか…?
俺がスローバラードでリードする。隆史はそれに合わせ静かにリズムを刻む。
GALL
夜の新宿ギターを奏でる者一人
孤独を聞き手に歌い続ける
彼は彼女を捜しにやってきた
突然去った彼女を追ってきた
居場所は分からないけど この歌が探してくれる
作詞作曲はや半年
彼は新宿名物ガル
彼の歌声は人を引き寄せ 大きな円陣を作る
時に警察にしょっぴかれ
ヤクザ相手にケンカした
しかし彼女はいない
半年掛けても彼女はいない
遠く離れた異国に行ったのか?
俺に教えてくれよ
ミズキ=
あぁ夜空の星々よ
お前達は俺に代わって見守り続ける
俺は疲れてきたよ
いい加減居場所を教えてくれ!!
長い長い夜を〜♪
ミズキが好きな月に見守られ〜♪
長い長い愛の歌を〜♪
君に届かないと知りながらも 歌う…
いつもの新宿
ガルを囲む人垣
ふとその中に懐かしい笑顔
「ミズキ!」
ギターを投げ出し追いかける
「俺を置いていくな」
「探したんだぞ」
しかし声は届くことなく幻影は去る
悲しい悲しい愛の歌
彼は冷たい姿になって見つかった
悲しい悲しい真実
ガルの想いは届き
毎晩彼女は聞きに来た
星々は二人を見守った
今度はガルが彼女を見守るとき
星の一部になり彼女を見つめ続ける
夜空を見上げればホラ
今日もGALLは輝く