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青春謳華  作者: 桂木 景
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夏休み

なんとか無事に期末を終え、全国大会に向けて練習する俺たち。

学校中もとい、マスコミに注目されているのだからそうそう手を抜くことができない。それで、夏休みに突入しても学校に集まって練習しているのだ。

「あ・つ・い。」

「ようちゃん、溶けてる…。」

クーラーをガンガンに掛けているのだが年代物のようで、効果が感じられない。熱い、熱すぎる!!

「ヤバイ。溶ける…。」

冗談ではない。親指が…。汗だ。

「小谷君。タオル。」

遠坂が気を利かせてバスタオルを持ってきてくれた。すでに俺持参のタオルは汗を吸いまくって濡れ雑巾と化している。

「サンキュー。」

俺はゴシゴシと全身の汗をふき取り、ギターへ向かう。

「そんな汗だらけの手で、触らないでよ。弦が錆びちゃうじゃない!!」

練習しようとして、ギターに手を伸ばそうとしたとき山口がギターを退避させた。

「あ〜?」

「弦張り替えるの大変なんだからね!!」

「触らなくちゃ弾けないだろ。ホラ、よこせ。」

ふぅ〜。髪から汗がしたたり落ちる。毎年この季節になると体重が10kg減るんだよな〜。熱い。

「ダメだって!汗まみれの体で来るな!!」

へっへっへ。壁まで追いつめたぜ。さぁ〜小娘、ギターをよこせ。

「なにやってんだお前は。」

例によって隆史の拳が飛ぶ。どうやら俺が襲っているように錯覚したらしい。

「あ〜?何すんだよ。」

「夏用のギターあるだろ?」

「あ〜そういえば…。」

中学の時、隆史の家でも汗まみれになっていた俺に隆史は夏用のギターとかいって、ギターを一本くれた。なにやら特注品らしくて、弦の張り替えが容易にできるらしい。

「俺んちに放置してあるから、わざわざ持ってきてやったんだぜ。」

と、青いギターを放り投げる。

「オォ!!久しぶりだな!!」

俺は元気を取り戻し、さっそくアンプにジャックをセットして試しに弾いてみる。

ん〜、相変わらずいい音出すなw

「やるか。如月、歌詞の方は出来たの?」

「う〜ん、ちょっと怪しい部分があって…。曲弾いて貰えない?」

早速、セッションに入る。

俺と息ピッタリ。いつものギターなら汗で滑るんだけど、コイツのには特殊加工を施してあって無理なく弾けることが出来る。

初期の如月の頼みなんてドコ吹く風。気を遣うことなく猛烈に練習した。その間、女性陣は作詞にかかる。


引き続けること3時間。野球部とかの連中の声がいつの間にか聞こえなくなっていた。

「隆史。」

「ん?」

「アイス。」

「ねぇよそんなもん。」

「買って来いよ。」

「自分で行けよ。」

「溶ける。」

「……。」

この時の溶けるは汗でアイスが溶けるって言う意味だ。

「しょうがねぇな。今回限りだぞ。」

そういって隆史は部室を出て行った。俺と隆史は体のつくりが根本的に違うらしく、アイツはどんな環境でも汗一つ流さない。

ま、それが夏の女の子にモテる理由の一つでもあるわけで…。

「買ってきたぞ。」

「はや!!」

実質3分。足って買ってきたらしく息が荒いが、汗一つかいてない。お・恐ろしい…。

「ほれ。アイス。」

先に歌詞を制作中の女性陣にアイスを渡す。

「「「齊藤君ありがとう☆」」」

とびっきりの笑顔でお礼を言われている隆史はなんだか嬉しそうだ。

「お前、バニラだろ?」

「良く分かってんな。」

「何年親友してんだよ。」

「今年で4年目だろ?」

「うるせぇ。」

こうして俺たちの夏休みが減っていくわけで。

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