俺の彼女は…
隆史の家で散々弾きまくって大体、ふっきれたような気がする。
でも、完全に振り切れたワケではなく、一日中机の上で死んだようになっていた。
それでも、自称おれの恋人と名乗る女子達はお構いなくしゃべりかけてくる。それに俺は無言を返事とした。隆史が見かねて女子達をなだめてくれなかったら俺は多分キレてただろうな。
放課後、一人教室で死んでる俺に如月が声を掛けてきた。
「ようちゃん、何かあったの?」
俺は昨日の事を如月に話した。
「そっか…、ようちゃん。私が代わりだったらダメかな?」
「え…どういう…。」
「その…私が西城さんの代わりになれないかな?」
そう、突然の告白。
「如月の気持ちは前から知ってたよ。でも…。」
「好きなら無くても良いの。ただ、ようちゃんの悲しそうな顔だけは見たくないの。だから…だから…、そばにいさせて…。」
「如月…。」
「お願い…。」
「分かった。如月がそれでいいなら、俺は構わないよ。」
俺は薄々ながらも如月のことが気になってたんだ。そう、西城に振られた時も隆史とセッションした位じゃ、立ち直れなくて。如月の声で立ち直れた。
でも、隆史の気持ちを裏切りたくなくて。
「ちょっと、隆史呼んで来てくれないか?二人だけで話があるんだ。」
「分かった。呼んでくるからまっててね。」
如月はそのままそっと教室から出て行った。静かな学校だから如月が走る足音も響いて聞こえる。
しばらくして教室のドアが空いた。
「なんだ?話って?」
「如月のことなんだけど。」
「そっか…。告られたのか。」
「すまん。」
「別に構わないよ。予想してた事だし。でも、一つだけ覚えておいてくれ。」
「なんだ?」
「彼女を泣かせるようなことだけはするな。その時は俺はお前を殴りに行く。」
「やっぱお前は凄いよ…。西城に振られたときも俺はな〜んにも出来なかったんだからな。」
「俺は…、俺は…。初めて好きになって、これからも変わらない女の涙だけは見たくないんだ。」
下を向いて拳を握りしめる隆史。よほど悔しかったんだろうな。すまん、本当にすまん。
「それにな…、どこぞの知らない男に持って行かれるよりもやっぱり親友の方がいだろ。チャンスが無くなったわけでもないんだしな。」
フ…やっぱお前は強いよ。俺には無い強さがある。
「ありがとう。」
「お前が礼を言うなんてキモイな。病気か?」
「んだとテメェ!殺されたいのか!!」
結局シリアスな雰囲気はどこかへ消し飛んでしまった。そのまま殴り合いになって、騒ぎを聞きつけた如月と遠坂に止められたけど、お互い満面の笑みだった。
「なんで殴り合ってたの?しかも笑ってるし。」
山口が不思議そうに俺を覗きこむ。
「関係ねぇよ。だよな。」
「そうそう、気分…かな?」
「こんなことになるんだったら呼ばなきゃ良かった。」
多少プリプリ如月が怒っていたけど、安心したみたいだ。
ありがとう、如月。ありがとう、隆史。