まさかの西城?
授業終了後、俺は休み時間にコッソリ下駄箱から靴を取り出して(そこには大量のラブレターorz)おいた。
そして、女子達に見つからないように教室が1階であることを利用して窓から抜け出すことに成功した。
ワハハハハ!ざまーみろ。俺様にかなうはずがねぇんだよ。
今日最高の気分で校門にダッシュ。もちろん、玄関辺りで女子達が待ち伏せしているという情報はあらかじめ経験者の隆史から入手してあるので、問題なくスルー。
と、校門付近で男子達が取り巻いている様子。遠坂はまだ、教室のはず…。俺は嫌な予感がした。
「あ、陽介!!」
う…予感的中。西城だし。一応今でも好きなんだけど、あんな別れ方だったからあれから会うのが気まずくて、ずっと避けていた。
「よ、よぉ。久しぶりだな。」
制服姿の西城はやっぱり可愛いw見てて幸せになる。
「ニュース見たよ!陽介ってやっぱり凄いね。」
「周りがヘボかったんだよ。」
俺はドキドキと周りの男子からの殺気がなんとも気まずかった。
「実力だよ〜。あ〜あ、私も聴きたかったなぁ〜。それにエミちゃんいるんでしょ?羨ましすぎ。」
うぅ…。俺の心に西城の笑顔が…。もうダメ、しぬる〜。
「そんなことより、移動しね?周りの視線が…。」
「アハハ。そんなところ中学校から変わってないね!」
そういって西城は俺の手を掴んで歩き出した。俺のこの心拍数の高さを知っているのだろうか?
「西城も…、あのときから変わってないな。」
「そっかな?でも陽介からメール来なくなって結構寂しかったよ?」
それって…、いやそんなことないか。なに考えてるんだ俺。
「そうなんだ。でも、俺たち友達だろ?メルアド変えてないんだから西城から送ってくれたら良かったのに…。」
「ん〜、なんだか恥ずかしくって。」
ちょっぴり舌をだして赤面する西城。ヤバイ、悩殺される…。
「そっか…。で、今日は何できたの?」
「陽介の激励!かな?」
かな?ってオイオイ。俺はおかしくてクスクス笑ってしまった。
「む〜。なにがおかしいんだよぉ〜。」
笑う俺の頬をぷにって指でつつく。
「いやいや。そんな理由で来るなんて思ってなかったからさ。」
未だに笑う俺にすこしご機嫌を損なったようだ。
「もぅ〜!!全国大会、応援に行ってあげないんだから!!」
「え?来てくれるの?」
「あったりまえじゃん!生で聞けるんだよ!このチャンスを逃すわけにはいかないじゃん!!」
そういや西城は遠坂のファンだっけ…。なに期待してたんだよ俺…。バカみたいじゃん。
「えっとな。確か夏休みだったと思う。詳しいことはメールで送るわ。資料家にあるし。」
「うん。ありがとう。」
くったいのない笑顔は今の俺にしたら世界最強の兵器だ。胸が苦しい…。
「俺、これから寄るとこあるから、ココで。」
「そうなんだ…。じゃ、またね!!」
一瞬顔が曇ったように思ったのは今の俺の心情のせいだろう。何時も通りの笑顔で返されたんだからな。
「おう、またな!」
やっぱり、西城といるのは…、辛い。好きな分だけ辛いんだ。
『今空いてるか?』
俺は隆史に電話した。
『あ…お、おう!どうしたんだ?』
『お前の家行っておもっきりギターが弾きたい。』
『……何かあったのか?』
『聞かないでくれ。』
『分かった。先に行っててくれ。家の方に電話しとくから。』
『悪いな。』
『なにいってんだよ、今更。じゃあな、後から行くから』
ふぅ〜、辛いことがあったら隆史の家に限るな。
一人まだ落ちる気配のない太陽に向かって歩き出した。