表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青春謳華  作者: 桂木 景
28/50

決起

俺がメンバーの所に戻ったときには、すでに遠坂ファンは少なくなっていた。

「陽介…。どうしたんだ、そんなに殺気を放って。」

「コロス…。」

「え?誰を?」

「名城の富竹。」

「なんで?」

俺はメンバーに先ほどのいきさつを話した。

「なによそれ。わざわざ遠坂さんがこの大会のために雇われたみたいじゃない。」

山口さん?話聞いてました?そういったんですよ、富竹は。

「私…小谷くんに会いに来ただけなのに…。」

「俺は、あの名城の富竹には負けたくない。なんとしてでもアイツより上にいく。」

「でも、名城ってこの大会の優勝候補だよ。」

「如月、ココは相手がどんな奴かなんて関係ない。売られたケンカは買ってやる。」

「そうだぞ。この借りはキッチリ返させてもらうからな。」

隆史の奴が珍しく不適に笑う。

「絶対優勝しようね。」

山口は気合いを入れて機器のメンテに入った。

予選が始まったが、他の奴らなんて関係ない。俺たちの倒す敵はただ一組。名城のみ!


「そろそろ、楽屋にいきましょう。」

遠坂が言う。もう、そんな時間か。

俺たちはこれから前線へ出る、兵士のような心情だった。これはただの勝負ではない、戦争だ!楽器を武器に、己の声を信じ、闘志を歌詞にのせ審査員の分からず屋どもに叩き付ける。

「エントリーナンバー89番、泉ヶ丘高校のEDENの皆さんです!」

司会者が場の空気を盛り上げる。遠坂がいるということで注目度ナンバー1のこのバンドについにスポットライトが当てられたのだ。

「オリジナル曲レクイエム、どうぞ!」


俺は静かに、武器を掲げ弾き始めた。

繊細に細やかに。

そして隆史のドラムが入る。嵐のような怒濤の演奏は上手くギターと混ざり合い、会場を支配する。

俺も隆史に負けじと荒々しく弾き初め、お互いが絶頂に達したとき、遠坂が歌い始めた。

おし、タイミングばっちし!!


灰色の空 今日は雨が降りそうだな

傘はあるにはあるんだけど

たまには雨に濡れるのも良いんじゃないかな?

雨降りの日は何時になく静かで

世界が止まったようで

悲しくなる だけど

その先の向こうに

君たちが待っている


行こう!恐れずに

ひたすら前に進め

君たちが待っているのなら

何を恐れるんだ!


グローリアス

世界は繋がって 丸い球体で

ドコかが不完全なら

たちまち崩壊してしまう

グローリアス

みんな同じで 何一つ違わない

人種 国籍 民族 国家

それが何だって言うんだ?


一人が雨で泣いていたら

みんなが手を差し伸べる

近い未来 そんな世界がくるといいねw


短い歌詞を出来るだけ違和感を与えずに長く歌う方法を俺たちで編み出した。

中杉に無理矢理出場させられる事になったとはいえ、遅くまでみんなと練習した姿が、不謹慎ながらも目に浮かぶ。

弦で指を切ったとき、如月が手当してくたっけ。

弾きすぎてチューニングが狂ったときに山口が、調整してくれたよな。

弾きすぎて息切れしてる俺らに遠坂がジュースを買ってきてくれたり。

今までの思いを全てこの瞬間にかけ、ラストに入る。

会場の緊張は最大に。

ここで、いままで激しかった演奏を俺たちはやめた。


そして怒濤の拍手。ちらっと富竹を探すと悔しそうに唇を噛んでやがる。へ、ざまーみろ。

退場しても拍手がしばらく鳴りやまなかった。予選は俺たちの優勝で決まりだな。そう、確信して座席へと戻った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ