予選・挑戦状
ついに予選の日、正直言って真面目にやるきはない。適当にサラっと流して予選落ち。これが俺が描いた理想の形だ。
が、俺と隆史以外の奴はやけに燃えてやがる。必勝ハチマキまでしてるし…。
「ようちゃん、今日はなんとしてもトップで勝たなくちゃならないのよ。」
え…天然キャラの如月さんですか?
「小谷君。いくつか予備のギター持ってきてるから存分にいっちゃって!!」
そうそう壊れないと思うんですが…。
「小谷君。私に赤っ恥をかかせないでよ。かかせたら結婚して貰うからね。」
あなたが一番しっかりしないといけないんでしょうが…。でも、結婚はヤダな。
「はいはい、全力でやらせていただきます。」
「「「ハイは一回!!」」」
「はい。」
うひゃぁ〜こえぇ〜。
「今日はビッグゲストも来てるから、頑張ろうぜ。」
隆史の奴、一体誰を呼んだんだ。
「誰だ?」
「秘密。」
コ・コノヤロウ…(怒
「そこ!リハやるわよ。」
如月さん怖いです。ハイ。
「一回で全部決まるのよ。それに待機室は2組前からじゃないと使えないからね。」
「だからって、こんな朝っぱらから…。」
大会は9時、今は7時orz
「実質1時間30分よ。無駄にしたら承知しないからね。」
俺たちは有無を言わせて貰えずに練習させられた。本番前に演奏させるって鬼…。
1時間45分後。俺たち(男子陣)はヘトヘトになっていた。
「この位で疲れてどうするの?」
ひぇ〜、それ以上いじめないで。ママン…
「取りあえず受付を済ませましょう。」
山口が率先して行く。さすがにアシスタントだけあってこういうときに頼りになる。
開場は厚生年金会館。遠坂と西城の思い出がある場所だ。すでにほとんどの受付が終わっており、名簿には名一杯の○印がついてあった。
「泉ヶ丘高校の方ですね。89番になります。」
受付の姉さんから番号札を貰い、空いている席に腰を下ろした。
「陽介、緊張してるのか?」
「は?なんで?」
「妙に口数が少ないぞ、お前。」
「いや、こんな面倒なことになるなんてな。」
なんて他愛もないことを隆史としゃべっていたら、いつの間にか男子どもに囲まれていた。
「もしかして、遠坂エミさんですか?」
あ〜、遠坂のファンか。納得。
「そうですけど…、なにか?」
いやいや、どう見たってこいつら下心見え見えだろ。なに知らないフリしてんだ。
「俺たち、遠坂さんのファンで、その…サイン頂けますか?」
「俺は一緒に写真取って下さい。」
「握手して下さい〜。」
あ〜も〜わらわらと(怒
俺はこういうのが大っ嫌いだから、男どもの包囲網をくぐり抜けてロビーに行くことにした。気持ちを落ち着けるために自販機缶コーヒーを買おうとしたら、また変なのがコッチに近づいてきた。
「君って確か遠坂と一緒にいたよね。」
いかにも不良ですっていってるような姿をしてる男。ケンカ弱そう…。
「そうだけど。」
「君たち泉ヶ丘高校って毎年この大会出ても下の方でしょ?だから遠坂雇ったの?」
なんなんだコイツは?
「アイツが勝手に入ってきただけ。そんな仕事だしても、アイツ来ないでしょ?」
「でも、中途半端に転校したって聞くよ。あ、校長が勝手に雇ったのか…。そっかそっか、ごめんね。気付かなくってさ。」
「あんた名前は?」
「あぁ、富竹 裕太。よろしくね。」
満面の笑みで握手を求めてきやがる。コイツそんなに殺して欲しいのか…
「僕を殴りたいって顔してるね。でも、今ココで問題を起こすのはまずいんじゃないかな?」
コ・コイツ…。いつか必ず殺してやる。
「泉ヶ丘に遠坂がいても、所詮伴奏が伴奏だからね。僕ら名城の敵じゃないね。おっと、時間だから行くよ。」
不良スタイルに身を包んだ富竹はその場をさっていった。
アイツ…名城とかいったな。フフフ、おもしろい。完膚無きままに討ち滅ぼしてやる。フフフフ、ハーッハッハッハ。
俺は、名城の富竹のバンドを打ち倒すと決心した。