突然の告白
昨日のことは瞬く間に学校中に広がっていた。
朝、下駄箱に大量の画鋲が入っていたり、机の中に黒い紙が入れられたりした。どうやら、昨日の報復のつもりらしい。
「遠坂いびるからだろ?」
「小学生がやるようなことをして何が楽しいんだか…。」
俺はこんな事位しかできない、周りの男どもにほとほと呆れていた。
「まぁまぁ、昨日は相当なショックで仕事も休んだらしいぜ。面目丸つぶれだな。」
「興味ないな。で、お前は大丈夫なのかよ。」
「周りの女子が止めてくれたらしい。こういう時は感謝感激だな。」
ちゃんと聞こえたぞ。「普段はウザイけど。」っていうのを
「隆史らしい理由だな。お、噂をすればだ。」
遠坂が教室に入って来るなり、まっすぐ俺の所まできた。いきなり昨日のことで話すつもりか?いくら何でもデリカシーなさすぎるぞ。
「その…。私のせいでこんな事になってごめんなさい。」
はい?
「なんであやまんの?」
「だって、私が…私が…。」
「合わないって宣告したのは俺だよ。遠坂がやれっていったんじゃ無いんでしょ?だったら誤る必要ないじゃん。」
「でも…でも…。」
「あ〜俺そういうの嫌いなんだ。さっさと戻れよ。」
俺はいらついてきて思ったことをいっちまった。
遠坂は黙ってうつむいたまま席に戻った。
「お前…、今のはひどくないか?」
そっと隆史が言ってきた。
「言い過ぎたと思うけど…。正直なところ迷惑じゃん。」
「はぁ〜。分かってやれよ。」
隆史は呆れた様子で、俺を見つめる。分かってやれってアイツのどこをどう分かれって言うんだよ。
「無理無理。そんなことより、さっさと歌詞つくっちまおうぜ。」
俺は多少の後ろめたさを感じながら、それを振り払うかのように歌詞作りに没頭した。
普段より、授業が長く感じた。遠坂のことが頭から離れられなかったんだろう。
放課後、誰もいなくなったのを見計らって俺は遠坂に声を掛けた。
「よぉ。」
遠坂は俺をみるとうつむいた。
「なんで、あんなにひどく言われたのにバンドに入ろうとするんだ?普通なら逆ギレして出ていっちまうぜ。」
「……。」
「だんまりか…。」
「…だから。」
「え?はっきり言えよ。」
「好きだから。」
「は???」
「好きだから!!!私は小谷君が好きだから!!」
突然の告白にさすがの俺も動揺を隠しきれなかった。
「な…なんで?」
「傘貸してくれたとき嬉しかったから、返したいと思って学校を探したの。」
「それであんな中途半端な時期に転校してきたのか…。」
遠坂は黙ってうなずいた。
「俺はてっきり頭の方が…。」
「バカ!」
遠坂は持っていた鞄で殴ってきた。
思わず笑みがこぼれる。
「あ…笑った。」
幸せそうに笑いながら言われて俺はどう、対応するか分からなかった。
「笑っちゃ…悪い…かよ。」
赤面を見られないようにそっぽを向く。
「だって初めて笑ってくれたもん。普段は、齊藤君か如月さんと一緒じゃないと笑わないのに。」
「見てたのか…。」
「うん。転校してきてずっと…ずっと…。」
「……。」
「……。」
「いつからだ?」
「え?」
「俺のことそういう風に思うようになったのはいつからだ?」
「軽音部で楽器を弾いてた頃から。」
というと一週間とちょっと前か…。
「格好良かった…。初めてだった…。胸のドキドキが止まらなくて…。初めは私、何かの病気じゃないかって思ってて。気付いたら小谷君のことが好きになってて。」
「それでバンドに入りたいって言ったのか。」
「うん…。直接言うような形になっちゃったけど、気付いて欲しくて…。初めは人数不足してるみたいだし、私…その…アイドルだからすぐに入れてくれて貰えると思ってたんだけど…。」
「俺は本当に入って欲しくなかった。嫌だったんだ。部長の目も、羽柴の目も、周りの目も。ただでさえ隆史の奴が女子にモテてみんなからの視線にさらされて。そのうえお前まで来るって言い出すんだからどうすりゃ、いいんだって。」
「でも実際私、自分に自信ありすぎてたように思う。自分のレベルの低さに驚いて、小谷君達のレベルの高さに驚いて。ますます惚れちゃって。」
恥ずかしそうにうつむく遠坂。
「そっか…。お前の気持ちは分かったよ。俺は遠坂と付き合えないし、誰とも付き合うつもりはない。それに一緒に歌うつもりもない。」
「どうして…。私のドコがダメなの?絶対直すから!!」
「遠坂の問題じゃなくて俺の問題なんだよ…。気持ちは嬉しいけどさ。」
つい、西城のこと思い出してしまう。昔の辛い過去…。もう二度とそんな重いはしたくない。
「…らめない。諦めないから!小谷君の問題も抱えれるようになるから!」
俺は哀れな目で遠坂をみた。
「いつかそんな日がきたらいいな…。」