歌詞決定
軽音部に入部してはや1週間がたった。
いつの間にか俺たちのテク(?)は尾ひれがついて学校中に知れ渡り、隆史ファンが急増。昼は屋上へ避難せざる終えなくなった。クラスの俺に対する姿勢も変わり馴染み始めた今日のこの日この頃。
「相変わらず男子共は遠坂一筋だな。」
俺は呆れたように隆史にささやいた。
「女子も遠坂の所へ行ってくれたら俺は言うことないのに…。」
「みんなお前の本性を知らないからだろ。」
おれは悪戯っぽく笑う。
「それを言うな。それを」
やっぱ熱中することがあれば男は輝くんだな。以前より笑うことが増えた気がする。
「気づいてるか?授業中とか遠坂ずっとお前のこと見てるんだぜ?」
「は?なんで俺?隆史の勘違いだろ?席、隣通しだからそう思うだけであって…。」
「それがな、移動教室の時も必ずお前の後ろについて歩いてるんだ。この前なんか声掛けようとしたんだと思うんだけど、男子連中に邪魔されたみたいでさ。すっごく切なそうな顔してたぜ。」
「俺なんか落としたかな?今度遠坂に聞いてみるわ。」
隆史の奴は意味ありげな笑みを向けてくる。なんか腹立つわ。
「で、如月に歌詞作ってもらうように頼んだのか?」
「あぁ、そうだった。忘れてた。最近如月、文芸部の方で忙しいみたいでさ。どっかの雑誌のコンクールに出品するって言ってた。」
「流行のアレか。大賞取ったら出版してくれるって言う奴だろ?出版社も小賢しいことするんだな。」
「そうでもしないと生き残れないんだろ?仕方ないんじゃないか?それでも出品したいって人もいるんだしさ。」
「そうだな。俺たちもバンドでそう言うのがあれば参加しているし。」
「人のこと言えねぇじゃん。」
俺たちは放課後まで笑い合っていた。もちろん授業など聞く気なし。周りに迷惑掛けないように携帯のメールでやりとりしてた。
「お待たせ!!」
部活を終わらせた如月が走ってくる。俺たちはいつも3人で帰ることにしてるんだ。
「小説の調子はどう?」
隆史の奴、点数稼ぎに入りやがった。俺はこの二人が付き合うことを望んでるんだがな。
「手直しの段階に入ったよ。もう少しで出品できそう。」
嬉しそうに微笑む如月。熱中するものがあれば男のみならず人間輝くんだな。
「で、ようちゃん歌詞書かなくてもいいの?」
いきなり本題を振られた俺はドキッとしてしまった。
「あ・あぁ。その事なんだけど、頼もうと思ってたんだけどさ。最近忙しそうなんで落ち着いてからと思って…。」
ヤベェ動揺しまくり。言い訳っぽい感じになってるし(汗、汗
「そうなんだ。エヘヘ、実はもう書いてたんだ。」
そういって如月は鞄から一枚のルーズリーフを取り出した。
「文化祭ようなんでしょ?季節が夏だからこんな感じでいいかなって?」
サンシャイン0194
煌めく太陽
立ち上る陽炎
そう夏真っ盛り
気温が高くて
暑苦しいけど 息苦しいけど
行こうぜ 夏祭り
The summer festival
夜空に輝く花火
太陽のごとく光 照らす
哀愁漂わせる僕らを一掃する
夏の風物詩
恋人達の物語
全てはこの時のために…
輝くファンタジスタ
夢のような夏を超えて また一つ思い出を創るんだ
未来に続く夏物語り
また来年も創れるかな?
叶わない儚い恋も
叶わない儚い夢も
叶わない儚い明日も
ボクらが変えて行くよ
その思いでは永遠の詩となり 少年達の記憶に
刻まれる
永遠に〜♪
またこの場所できっと会おう
「おぉ、さすが如月。イイ歌詞書くじゃん。」
俺は如月の文章力に改めて脱帽した。俺たちだけじゃきっとこんなイイ歌詞は掛けなかったはずだからな。
「久々に腕がなるぜ。」
隆史も上機嫌だ。あと数個歌うつもりだけど、それは俺たちで考えるとするか。