出陣!軽音部
だいたい部活が決まって活動始めてる時期に、俺たちは軽音部の顧問に頭を下げて入れて貰うことにした。
「もうちょっと入るのが早かったらバンド組めたのに。全員メンバーが決まってるから悪いけど、お前ら二人でバンド組んで貰えない?」
傲慢そうな部長だ。ま、俺ら二人ってのは昔っから決まってたことなんだけど…。
「構いませんよ。中途半端な時期に来た俺らが悪いんですから。」
俺が一応、一応部長に謝罪しとく。仮にも部長なんだし。
「おやおや、部長。可哀想じゃありませんか。ループ×ループのベースの僕がココにいると知って入ってきたに違いないんですから。」
そうでしょう?とでも言いたげな目で俺たちを見てきた。誰だコイツ?
「羽柴、それはないと思うけど…。」
あの傲慢そうな部長が遠慮してる?ますますわからん。
『お前興味ないから知らないと思うけど、人気グループのベースしてるんだぜ。こんなナルだとは思わなかったけど。』
隆史が気を遣って耳打ちしてくれた。
「僕に憧れて入ってきても楽器が弾けないと、話にすらならないからね。ちょっと弾いてみてくれる?」
う…、ムカツク。
俺は隆史に目で合図を送った。隆史もそうとうムカツイているようだ。
1,2,3〜
俺たちが初めてセッションした曲を弾いた。
隆史の雷鳴の様なドラム。
俺の嵐のように豪快でかつ、繊細なギター。
2つは混ざり合い、溶け合い、一つの綺麗なメロディーとして収束した。
ほんの5分のセッションだが、周りで練習していた他の部員はいつの間にか聞き入っていたようだ。
驚愕の表情。羽柴とかいうムカツク野郎も唖然として見ている。
そして万雷の拍手をしたのは軽音部の顧問の中杉。
「100年に一人の逸材だね。二人とも素晴らしかったよ。」
「ありがとうございます。」
ここは素直に礼を言うに限る。ややこしいことになるだろうからな。ってか中杉何もんだよ。
「あ、じゃ、二人とも練習頑張って下さいね。」
そそくさと逃げる羽柴。さっきまでの自信は何処に。見てて気分がいいがな。
「楽器の方は問題ないみたいだな。うちの文化祭夏にやるからその時が俺たちの見せ場。それまでしっかりと練習してくれ。」
部長もさっきまでの傲慢さは何処に。これも見てて気分がいい。
「二人でなにかと大変だと思うからアシスタントを付けるよ。山口さん、来て。」
隅のほうで機器をいじっていた女の子がこっちに来た。
「山口さん。さっき入部した二人。さっきの演奏聞いてたでしょ。二人の専属アシスタントして貰えるかな?」
「はい、分かりました。えっと…、1年3組の山口 優香です。よろしくお願いします。」
「俺はギターの小谷 陽介。こっちはドラムの齊藤 隆史。」
「よろしく。」
隆史の奴愛想笑いしやがった。多分この女落ちたな。
「私、齊藤くん知ってるよ。女子の間では超イケメンが来たってかなりの噂になってたから。」
「ありがとう。」
「まだ、機器のメンテ終わってないから、またね。」
マイペースな奴、という評価をおれは山口にした。
「隆史、惚れたか?」
「冗談。俺は如月一筋だ。」
「結構なことで。」
俺たちはその後、これからのことを話しながら帰宅した。