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青春謳華  作者: 桂木 景
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中途半端な転校生

入学して一週間になる。

隆史はいつも女子に囲まれ、男子から睨まれている。アイツが俺に助けを求めるから、俺にも時々女子がきて

「齊藤君のメルアド教えてよ。」

と、かなり迷惑なことを言ってくる。教えたらおもしろいことになるんだろうけど、後からどんどん甘えてくるからここは冷たく

「悪いけど、アイツから直接聞いてくんない?」

って突き放す。そうすると大抵の奴はどっかいくんだけど、自分って可愛いとか思ってるナルな女とかはかなりしつこい。上目使いで言ってくるんだけど、そんなのに全く興味がないからスルー。

ま、こんな感じが続いて俺たち二人、特に俺はクラスから浮いている。


「今日は転校生を一人紹介するぞ。」

篠山がいつになく上機嫌で朝のHRで告げた。

はぁ?転校生だ?この時期にここに来るって事は前の高校でかなりヤバイことしたってことだろ?よく受け入れたな。どっかのボンボンか?

「入ってこい。」

入ってきたのは普通の女子。だけどクラスの奴らは雄叫びを上げていた。まぁ、大抵の女子は全部隆史に持って行かれてるから納得といえば納得。

「自己紹介して。」

篠山の奴、女子一人になにデレデレしてんだよ。キモイな。

「初めまして。遠坂エミです。突然でビックリした方も多いと思いますが、仲良くして下さい。」

俺は呆れてつい、隆史に耳打ちしてしまった。

『なにアイツ?ナル?』

『は?お前気付いてないの?ナルとか言ったら他の男子に殺されるぜ。』

『なんで?実際ナルだろ?突然でビックリとか…。』

『遠坂エミだぜ。お前西城さんとライヴ行っただろ?』

『たんなる同姓同名だろ?てか、仮にアイドルだとしても興味ないし。』

隆史としゃべっていたのが目立ったんだろうか?遠坂は俺をじっと見つめていた。正直言って気持ち悪い。

自己紹介も終わり、まだ出席番号順(っていっても隆史と交代した奴以外)で座っていたので一番後ろの席に座るように言われていた。


一週間もするとオリエンテーションとかで授業をやらないって言うわけでもなく、普通の授業を始めた。中学の時と何一つ変わらない暇な授業。興味ナシ。爆睡あるのみ!!

3時間ぶっ通しで寝続けた俺は、如月につつかれて起きた。

「ようちゃん、寝過ぎ。ご飯食べよ。」

あ〜あ、もう昼休みか。寝てても腹は減るモンなんだな。

「外いくか。」

例によって女子に囲まれている隆史に気付かれないようにして教室をでようとした。

「おい、待て!俺も行く。」

女子達を振り切って隆史の奴は追いかけてきた。男子達は遠坂を包囲してるから、教室はガランとしている。邪魔なのはイスと机だけだ。

「女子連中がウザイから屋上いこうぜ。」

隆史の奴は強引に如月を引っ張っていく。

「屋上って閉鎖されてなかったけ?」

「合鍵持ってるから問題ナシ。」

いつの間に合い鍵なんて作ったんだよ。それはあとでじっくり聞こうか。俺も欲しいし。


屋上は眺めが良かった。誰もいない3人だけの昼飯。如月も隆史も嬉しそうだ。

「ようちゃん、元に戻っちゃったね。」

いきなり言われてビックリした。元に戻ったって何?

「はい?」

「だって西城さんと付き合ってた頃はすっごく優しかったよ。心の窓も開いてたし。普段見せない表情とかしてたし。」

気付いてたんだな如月。

「そうか…。俺って変わってたんだ。全く気付かなかったな。」

「俺は気付いてたぜ。」

「え?」

「トゲトゲしく無かったしさ。話してても別人かとおもっちまったぞ。」

「恋は盲目ってよく行ったもんだな。全く気付いていなかったよ。」

「寂しそうだよ。ようちゃん。」

またしても如月の言葉に驚いた。

「昔はそんなこと無かったのに。」

昔…昔は…そうだな。俺には昔ギターっていう熱中することがあったんだな。それを生きがいにしてたような気がする。今は……

「今からでも遅くない。軽音部に入ろうぜ。」

「そうだよ。私が歌詞書くからようちゃんと齊藤君で曲創って歌ってよ。」

ん〜…。ま、何もしないよりマシか。

「そうだな。入るか。」

生きがいを見つけて、モノクロの世界が色を持つようになった気がする。

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