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青春謳華  作者: 桂木 景
13/50

慰め

『元気ないな、なんかあったのか?』

『西城と別れた。』

『なんで?』

『西城がもう、つき合えないって。仕方なしにつき合ってあげてたんだって。誰も一生好きになることなんてないって。』

『そっか…。大変だったんだな。』

『……』

『どうせ、暇なんだから明日俺の家に来いよ。』

『そんな気分じゃない。』

『いつまでも落ち込んでたって仕方ないじゃないか。』

『だけど…だけど…』

『だけど何だよ?うすうす気づいてたんじゃないのか?』

『……』

『覚悟出来てたって辛いよな。』

『……』

『明日、朝迎えに行くから今日はゆっくり寝ろよ』

隆史は用件だけ伝え、俺の返事を聞こうともせずに切った。

『ツー…ツー…ツー…』

いつまでも聞こえるその音は、俺の胸に必要以上に響いて耐えきれなくなって。携帯を閉じた。


いつの間に寝ていたんだろう。目が覚めると朝で、俺の目の前には隆史の顔があった。

「朝からうぜぇな。」

「人が心配して来てやったのにそういう風にいうのかよ。」

「うるせぇよ。てか、何勝手に俺の部屋に入ってんだよ。」

「叔母さんがイイって言ってたぞ。」

「本人の許可を得るのが普通だろ。」

隆史の抗議の声を無視してさっさと着替え始めた。

「…さっさと顔洗えよ。最悪だぜ。」

「マジで?」

「目なんか充血してるし。こりゃ、化けモンだぜ。」

「うるせぇ。顔洗ってるからおとなしく座ってろ。」

洗面台の鏡を見て驚いた俺、確かに化けモンだ。ひでぇ顔。

目尻とかをマッサージしながら念入りに顔を洗った。さっきよりかはだ大分ましになったな。

「おい、コラ。なにいじってんだよ。」

部屋に戻る隆史の奴が引き出しの中を物色していた。

「エロ本の一冊でもあるのかなぁ〜なんて。」

言い訳だっ事がすぐに分かった。西城に関係する物でも探してたんだろう。ま、全部捨てたけどな。今では苦い思い出ってことししてる。

「んなもんねぇよ。ほら行くぞ。」

俺は強引に隆史を引っ張って、家からでた。

「お前が車なんて珍しいな。」

「二人でゆっくり話したかったからな。」

そこには黒塗りのベンツが停めてあった。

「乗れよ。行くぞ。」

半ば強引に俺を乗せ、隆史は運転手に合図した。


「思ったより元気そうだな。」

「ガラにもないこと言うなよ。」

「もっと沈んでるかと思ってたんだかな。初めて好きになった相手だったんだろ?」

フ…、何もかもお見通しか。

「……。」

「でもな、俺の恋いも叶いそうにないんだよな。」

「なんで?」

俺は驚いた。初めて弱音を吐いたのだ。

「如月はどうもお前の事が好きみたいでな。俺がどんなに振り返って貰おうとしても、お前しか目にないみたいだからな。」

「そうか…。気付いてたのか。」

「まぁな。」

「……。」

「……。」

「お前…、辛くないのか?」

「そりゃ、辛いよ。どんなに尽くしても絶対振り向いてくれないんだからな。」

「強いな、お前。俺もそんな強さが欲しいよ。」

「俺よりお前の方が強いだろ。俺なんか振られたりしたら生きて行けそうにない。」

「でも、生きてたらいつかチャンスが巡ってくるかもしれないだろ。」

「それもそうだな。」

なんだかんだ言って、隆史の奴は俺のこと心配していてくれたんだな。どうせ、アイツのことだからセッションの誘いだろ。今日は久しぶりに本気で弾いてみるか。


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