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青春謳華  作者: 桂木 景
12/50

涙の卒業式

『……3年間の課程を修了し卒業する者、1組 新井 晋司』

『はい!』


毎年見てきた卒業式。だけど、いざ、自分たちの卒業式だと思うと少し違ったように思える。そう、神聖な儀式のような。

滞りなく卒業証書の授与は終わり、これも恒例の送る会。

各学年が歌を歌うというこれまた典型的な儀式(?)を終え、俺たちの退場。

仰げば尊しなんて古くさい曲に涙を流しながら退場する、同期の奴ら。別に感傷的な気分にもならずシレっとした表情で退場した。隆史も面倒くさそうに歩いている。

教室に戻れば担任からの訓辞(?)があり、家庭・学校・生徒の三者一体で別れを惜しむどことの卒業式と変わらない光景なのだが、俺は以前嫌な予感がして感傷的な気持ちになれなかった。


「陽介、ちょっといい?」

教室から出て、帰ろうとした俺を西城が呼び止めた。

「ん?」

西城が何か言いたそうにしていたのもつかの間。熱烈な西城ファンに取り囲まれてしまった。

「後で連絡するからーーー!!」

彼らに拉致られていくのを尻目に普段なら救出する俺はそのまま帰ることにした。

なんだか今、西城に触れてはならないような気がしたのだ。そう、恐れていたことが現実になってしまうようで…。


その夜、部屋で死んだように沈んでいたら携帯が鳴り響いた。

西城からのメールだ。

”今から公園にこれる?”

”いく”


公園に着くと既に西城はブランコに座っていた。

「何?」

俺の顔を見て西城は一気に言った。

「もう、つき合えない。」

俺の予想が的中してしまった。

「なんで…。」

「初めに言ったじゃん。『そんな目で見ないで。仕方がないからつき合ってあげるよ。』って。もう、私たち中学生じゃないんだから今日で期限切れ。」

「じゃぁ、今までのは…。」

「演技じゃないよ。恋愛感情はなかったけど。多分私って誰も一生好きになることないな。だから、私たちはおしまい。今までの事忘れて、ね?恋人から友達にもどろ。」

西城はそう言い残すと、帰ってしまった。俺は追いかけることが出来ず、『騙してたのか!!』って怒ることも出来なかった。全部予想してたことだったから。

辛くて、悲しくて、胸が張り裂けそうで。俺は誰もいない公園の片隅で一人涙した。分かっていたのに、分かっていたのに。それでも俺は分からないフリをして、分かろうともせず、ただ偽りの思いだと信じてたのに。

嗚呼、実際に言われると辛いよな。


この世界がモノクロに見えて


なんの為に生きてるのか分からなくて


『つき合えない』って言葉が耳から離れなくて


神様は残酷だよ。

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