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このグズかつノロマをどうしてくれよう!?

……やぁ、みんな。待たせたな! 本当に待たせた。聞いてくれよ、この新しいドロシーはウスノロだ! べそべそぐずぐずすること18時間7分8秒コンマ2。あー……新しいドロシーはきっと、大器晩成型なんだね。


なにはともあれ、城をあげてドロシーをお出迎えだ。さぁ、ドロシー。紹介するよ、愉快な仲間たちを!


……とかなんとか言っている間に、さっそくやられたね、ドロシー。その調子だと、死ぬまでしばらく時間がかかるだろうから、そのまま聞いてくれ。


君の肉を齧っているのが、マンチキン。小鬼たちだ。あまり強くないけれど、たくさんいる。ひとりひとりは強くないが、皆で力を合わせれば、ドロシーに遅れをとらない。取り囲まれて、少しずつ齧り取られると、堪らないだろう。こういう時の対処法があるんだが、それは次回に教えるよ。痛みに錯乱している君が理解できるとは思えないからな。


お疲れ様、ドロシー。……思いの外、時間がかかったね。

これが進化するってことなんだ。あのマンチキンたち、昔はあんなに賢くなかった。一発目に喉笛を噛み千切って終わらせてしまうことが多かった。最初のうちは、獣と変わらなかったんだ。それが賢くなって、今やドロシーの抵抗や苦痛を愉しむまでになった。すごいだろう?


どうしたんだい、そんなに青ざめて、ぶるぶる震えて。新品の体だ。苦痛は残っていない筈だぞ。


うん。完璧な体だ。何も問題はない。それじゃあ次、行ってみよう! 




なぁ、ドロシー。君がそうして臍を曲げてから、もうかれこれ、37時間56分4秒経過したぞ。俊敏なドロシーの中には、君が無為に過ごしたこの時間を有効に使い、第三段階にまで到達したドロシーだっていたんだぜ?


そんなに悲観しないで。対処法があると言っただろう? さっきは、突然のことだったから、教える暇がなかった。君がそのせいで苦痛を受けたと怒っているのなら、謝るよ。だが、苦痛には慣れて貰わなければいけない。この先いくらでも、痛い目や苦しい目に会うんだからな。


いやいや、そんな先のことは心配しなくていいんだよ。そんなことより、そうだよ。対処法だ。案ずるより産むがやすしと、昔のひとは言ったもんだよ。

君が履いているその銀の靴。それは魔法の靴だ。上手く使いこなせば、マンチキンなんて怖くなーい!


使い方を説明するよ。まずは、R1……ごほん、失礼。聞かなかったことにしてくれ。

えー……右の踵を一度鳴らす。すると、足元に青白く光る魔法陣が展開されるのが確認できるだろう。これがポイントの設置だ。そして、今度は左の踵を一度鳴らす。すると、あら不思議! 竜巻に飛ばされて、設置したポイントにワープ出来る! どうだい、簡単なうえにすごいだろう! これなら、君にも出来るさ!


これは『転移の竜巻の魔法』のプライマリだ。セカンダリは、おいおい説明するよ。いっぺんに情報を与えても、君の頭が処理できるか疑問だからね。


転移のプライマリを使えば、同じフロアであれば、何処にでもワープが可能だ。これをうまく使えば良いのさ。さっそく、試してみようじゃないか。


……なぁ、ドロシー。そこで蹲って震えていても、何も始まらないぜ?


いや、ただひとつだけ、始まることがあるね。それは、マンチキンによる一方的な虐殺だ。


何を驚いているんだい? 扉を開くことが出来るのは、君だけではない。厳密に言うと、君ではないんだ。私が扉を開いて、君の前に道を開けている。この意味がわかるかい、お嬢さん? 君が強情を張っていても、私はいつでも好きなタイミングで、この扉を開くことが出来る。ホールにわらわらいるマンチキンたちは、君が無防備に蹲っていることを喜ぶだろう。抵抗が少なければ少ないほど、彼らは好き放題出来るからな。


だが、そんなことはさせないだろう? 君には私が教えた魔法がある。覚悟も促した。


準備はいいね? 扉を開ける。さぁ、冒険の時間だ!


さぁ、来い、マンチキンども! 消極的なドロシーには、積極的にアタックするべし。自ら進んで行うことの重要性を教えてやれ。


言い忘れていたが、魔法は不思議で偉大な力だが、万能ではない。起動に時間がかかるし、使用回数は限られている。だいたい、そうだな……転移のプライマリであれば、六回が限度かな。ああ、これは魔力の補給を行わない場合の使用限度だ。魔力の泉はエメラルド城に点在している。そこで魔力が補給出来るんだ。だが、エントランスにはないよ。お客様をお持て成しするのに、魔力の泉はいらないからね。つまり、エントランスで魔法が使えるのは六回までだと考えるべきだ。


そして、マンチキンたちはそこのところの事情に配慮してはくれない。


ああ、もう聞こえていないか。どうせ聞こえていないから、今のうちに愚痴を言わせて貰うよ。


悲嘆に暮れていた約39時間がまずかったな。もし、過去の君がもっと懸命だったなら、今の君はこんな酷いことにはならなかった筈だぜ。


自業自得だ、傍若無人の泣き虫め! せいぜい苦しめ。39時間も、進行を滞らせた罰だ。

ああ、忌々しいね、ノロマちゃん。貴重な時間を浪費させた、この俺に! この39時間があればお前を落として、もっとマシなドロシーを調達出来たかもしれないんだぞ。


はぁ……女性に暴言を吐いてはいけないな。頭を冷やそう。他に冷やすべき部位もない。

もっと、寛大にならなければ。寛大なふりで良い。どうせ、あまり長い付き合いにはならない。この女の心は脆そうだ。すぐに根を上げるに決まっている。それまでは、彼女がドロシーだ。大切な大切なドロシー。


ドロシー。俺は真心をこめて君に尽くすよ、この世界のどこかにきっとある、俺の心をかき集めてさ。君がやる気を出してくれるように、精一杯の努力をするさ。グズでもマヌケでも良い。君がこの遊戯を心の底から愉しんで、俺のことを好きになってくれることを願うよ。


おおっ、おかえり、ドロシー。災難だったね。マンチキンたちを待たせたら、ろくなことにならないってことを理解して貰えたようだから、まっ、結果オーライってところかな。


それでは、間髪いれずに次に行こう! 大丈夫、次は俺の的確なアドバイスに従ってくれ。そうすれば、マンチキンたちの挨拶代わりの襲撃を交わすことは、まず間違いなく可能だ。


いいかい、まずは扉が開く瞬間に、右の踵を一度鳴らしてポイントを設置。そして、扉が開いたと同時にわき目も振らずに右手にダッシュだ。連中を十分に引きつけろ。ポイントの周囲にマンチキンがいなくなったら、素早く左の踵を鳴らして転移するんだ。君のすぐ傍にいたマンチキンは、竜巻に蹴散らされて、目を回して、少しの間、動けなくなる。

だが、それは君も同じだ。君の場合、空高く舞い上がって、ポイントに落っこちるんだから、そりゃあ、すぐに立ち直ることは出来ないさ。そこのところを踏まえてやってくれ。


いいかい、バカでも理解できる、簡単な手順だ。その可愛らしいお頭のお花畑に叩き込んだな? よし、それでは再開しよう!


わー! 正気かい!? なぜ、そこでつっこんで行く!? 私の話を聞いていなかったの!? 痛みが病みつきになった!? わけがわからない! どうか私にその奇行の意味を教えてくれ! 何が君にそうさせるんだ!? ああ、でも、嫌いじゃないぜ、そういう愚かさは! 見ろ、マンチキンたちも狂喜乱舞だ! ごちそうさまでーす!


……君のそれ、いわゆるパニックって奴だね。君もパニックを起こすんだ。ふーん。そうしたら、お次はヒステリーの出番かな? 


人間ってヤツは、感情に振り回される。本当に不可解で非効率的な生き物だ。やれやれ……第一関門を突破するのは、いつになることやら……それにしても、豚のような悲鳴だな。ぷーっ、くすくす。

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