表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄気取りの三番目  作者: 工藤ミコト
第四章【魔闘祭】
29/301

28 特訓開始


「初戦敗退ってどういう……」

「そのままの意味だよ。君達二人が魔闘祭に出るなら優勝どころか初戦突破も無理ってこと。今年は諦めた方が良さそうだ」


 リュウは納得がいかない。


「なんで!」

「君はチームワークがなっていない。皆に合わせることも、皆を頼ることもしていない。そして君の実力は五人の中で誰よりも低い。むしろどうして勝てるんだい?」

「それは……」

「それとマリー。自分自身が一番よく分かっているようだけど、君は心が弱い。一度戦闘になると混乱して周りの声でしか動けなくなる。アルがいなかったら君はその引き金を一度も引いてなかったよね?」


 マリーは言い返すことが出来なかった。それはマリーにとっても本心だから。


「とは言え、“このままだと”だ。今弱いなら本番までに強くなれば良い。だから俺達が協力するんだよ」


 ようやくミルナがやって来た。歩く度に揺れるふくよかな胸の膨らみを見つめながらティナは舌打ちをする。自分の壁とは大違いなのだ。


「面白い子達ねぇ」


 リュウの元まで歩いてくるが、狙いは『銀龍』だった。


「ま、アタシとしてはもう少し白熱したヤり合いが見たかったけど」


 ミルナはリュウの『銀龍』を人差し指でなぞる。そのままリュウの体へと指を這わせようと試みるも、ロイが両手を叩いて中断した。


「はいはい。それじゃ、少し休憩だ。三十分したら、お待ちかねの特訓タイムだよ」


 * * *


 三十分後。リュウ達は再び【アルテミス】修練場の中央に集まった。ロイは自分の前に扇形に座った五人を見下ろす。特別授業が始まった。


「さて早速特訓を始めるけど、まずは何から始めたら良いと思うでしょうか。はいリュウ」

「え、また模擬戦やりたい!」

「はいブー。次マリー」

「……えっと、新しい魔法を覚えることですか?」

「それもブー。正解はこれです」


 二人を再び落ち込ませた後、ロイは右手に炎を灯した。手のひらの部分に現れたそれは、ロイの思うままに強弱を繰り返している。煮物に最適の弱火部分でリュウは感動した。


「これからやるのはベストオブ基礎こと『魔力コントロール』だ」


 聞き慣れない言葉に皆は沈黙する。


「それは文字通り自分の魔力をコントロールすると言うことだね。今から実際にやってもらうんだけど、まずは魔力と魔法の説明かな。リュウ」


 リュウが答えようとした時、ティナ、イクト、マリー、アルの四人は以心伝心と語って良いほどに同一のことを思っていた。


(リュウには答えられない)


 そして、全員の視線が集まる中リュウは口を開く。


「簡単簡単。体内にある未知の力が“魔力”で、それを体外に具現させることを“魔法”と言うってことぐらい知ってるさ」


 胸を張り、得意満面に述べたリュウ。その後、ロイは首を縦に何度か振り、合格だと言わんばかりに少し笑みを浮かべた。


「確かに合ってる。けどそれは、入学までの予備知識として、だ」


 ロイはそう言いながら、今度はティナ達に視線を向けた。ほらな、と言いたげな顔をしていた四人からロイはすぐに視線を外し、右手の掌の光をさらに強めた。


「学園に入学するまではそれでいいんだけど、入学してからはそれじゃ駄目だ。ていうか、習ってるよね?」


 ティナ達がうんうんと頷いたことに、本気で胸を撫で下ろしたロイは、短い咳払いで話を戻し、再び説明に戻る。


「リュウは自分の魔力がどこから来ているかわかる?」

「体ん中」


 言い切るリュウに、どう説明しようかロイは頭を抱える。


「確かにそうだけど少し足りない。魔力というのは、実は血液と似ていて『造魔器官(ぞうまきかん)』というところで作られているんだ」

「造魔器官?」


 リュウは聞き慣れない未知のワードに首をかしげた。しかも、実は習っていると知ってしまっている分余計に頭を回転させているので、着いていけていない。


「骨髄から血液の源である造血幹細胞が作られるのと同様に、魔力の源である『魔祖(まそ)』を作っているんだ。それを『造魔器官』と言って、体内のどこにあるかは人それぞれ違う」


 オーバーヒート寸前のリュウに、ロイは気づいていたがそれでも知っておかなければならないと、説明を続ける。


「そして作られた魔祖が体内で自分の得意属性の魔力になっていく。それを体外に具現化する行為こそが【魔法】なんだ」

「そのマソってのが魔力じゃねーの?」

「魔祖は魔力の源。そのままでは何の力もないが、造魔器官の中に貯蔵されている内に属性を帯びてくる。それこそが魔力だ」

「あ、ああ?」


 リュウの寂しいボキャブラリーでは対応しきれない単語。言われた言葉はリュウの頭に届く前に儚く砕かれる。そこで、ロイは話を少しだけ変える。


「リュウは単一の炎属性だと思うけど違う?」

「合ってる」

「それはね魔祖が単純だからなんだよ」

「リュウの頭と同じなのね」

「うるせー」

「魔祖は造魔器官から生まれるとそれぞれにあった属性魔力へと変化していく。火属性だったり雷属性だったりね。けど変化する属性の道筋が二つあっても魔祖は一種類の属性にしかなれない。つまり単純計算で生まれた魔祖の五割が【火】に、もう五割が【雷】になる」


 ロイは右手に炎を灯し、左手には雷を発現させた。どちらも勢いが良く、明るい修練場をさらに明るくした。実際に魔法を使った説明をリュウはなんとか理解し、ロイも話を続けていく。


「単一というのはそういう面では非常に優位だよ。生まれた魔祖を百パーセント炎に変換できるからね。まあ属性の種類が二つでも割合は人それぞれだから、一つが強いなんてことがよくあるけど」

「私土属性も持ってるけど、断然水の方が得意なのはそういうことなのね」


 ティナが心の奥で控えていた悩みも解決し、リュウもまた話を聞きながら何度もうなずいていた。その仕草を見たロイは心からの達成感を味わう。だが、まだ終わっていない。


「そしてこの説明の何が重要かって所だけど、それは『魔力を魔法にする仕組み』を理解するという所だ」

「なんで?」


 知ったところで意味が無い、とリュウは言おうとするがロイの方が早かった。


「そのしくみを理解することで己の魔力を感じとり、コントロールし易くなる。さらに造魔器官を刺激することで総魔力量を上げることもできる」

「もっと早くそういうことは教えてくれよ」

「それは駄目なんだ。まだ未熟な幼少期から大量の魔力を持っていれば、肉体に負荷がかかるし、何より暴走の危険もある。コントロールなんか不可能だ。小さいうちは「なんとなく」の、莫大なイメージがあるだけでいいんだ」


 それこそが小中学校で魔法を習わない大きな理由だ。十五歳になって初めて学ぶ魔法は、魔法文明の発達を少しだけ送らせてしまう代わりに、未来の安全を優先している。


「そして、魔力コントロールとはその名の通り、魔力の流れのコントロールだ。それをマスターすれば魔法を使い易くなるし、魔力の無駄遣いも無くなる。魔力を知ることで魔法を知るんだ」


 ロイは手に炎を集めながら言う。


「まずは自分の得意な属性の魔法を掌に出してみようか。そしたらそれを小さくしたり大きくしたりするんだ。まずはそこからだよ。『魔祖』を知った今なら良い感じに出来ると思うよ」


 ロイはそう言いながら掌の炎の威力を強くする。急に強く激しく燃えたかと思うと、今度は先程よりも小さく弱くした。今にも消えてしまいそうだ。それを何回か繰り返すとロイは炎を消した。


「じゃあ男子は俺、女子はミルナさんとね」


 そのロイの合図で五人は散らばる。訓練施設の端と端で魔力コントロールの訓練は始まった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ