大好きだから
狭いソファーの上。
私は両隣からの圧迫を甘んじて受け入れながら、小さく膝を抱えてテレビを見ている。
深夜だからか、あまり面白いなと思う番組はない。
閉め切った部屋にクーラーの風は心地いいけど、夜だから弱くなった目に入る照明の白い光は少しだけ痛い。元が昼型人間だから余計に。
膝を抱えて前に組んだ手をお互いにきつく絡ませることで眠気を飛ばそうとする。
「なに、眠いの?」
隣から、温かい声。
ソファーの真ん中にでん、と座って片手に缶ビールを持ちながら面白くもないテレビを見てる彼。
背が高い彼の、高い位置にある目を見ると優しげに細くなっていた。
「ねむくなんかないよ」
「うそつけ。声ちいせぇし、目、ちっさくなってる」
「へーき」
「うそつけって」
笑いながら、持っていた缶ビールを目の前のテーブルに置いて私の頭をがしがし撫でた。
力がないらない首と頭がぐわんぐわん揺れる。テレビの光が弧を描いてぶれる。
「やーめーてー」
「眠いんなら寝ろよ。後で運んでやるから」
「いーやー」
揺れた頭の勢いで、彼とは逆の腕置きに傾いた。抱えた膝は崩れて下に落ちる。
「もともとお前、いつも日付変わる頃には寝てんだろ。なんで起きてんだよ」
「だって」
「だって?」
「もーちょっとだけ、いっしょにいたかったんだもん」
ぶーっと子供っぽく拗ねてみせる。
夜中の変なテンションのせいか、いつもはできるはずのない幼い仕草が自然にでてくる。
いつもいつも遅くまでバイトをやってる彼と、少しでも長くいたかった。そんな思いで明日も朝早くから学校があるのに起きていた。眠気で目がしぱしぱして、あくびもたくさんでた。
ふっと、温かみのある重さが詰め寄ってきて離れた片手に指をからめた。
「あーあー。そうかよ。可愛いね。でもさ、無理してまで起きてなくていいから」
「だって……」
「今度の休みにデート行こ、デート。それでいいだろ」
「……うん」
「ほら。じゃ、お休み」
「おやすみ」
いいかげんに耐えきれないほど重くなっていた瞼を閉じて、安らかなまどろみに沈んだ。
額に柔らかな愛情を受けながら。
読んでくださってありがとうございます。