8話 幸せの続き
暗い……いや、明るいのか……何か音がするな……。
レンはゆっくり目を開ける。その先には白い天井があった。
「ここは、どこだ?」
ゆっくりと体を起こし周りを見渡す。
「病院?」
そこは一つの病室のようだった。窓に一番近いベッドでレンは目を覚ました。
「こんなにベッドがあるのに誰も居ない……。」
しかし、いくつかのベッドには生活をしていた痕跡はあった。
「え?……お兄ちゃん。」
聞き覚えがある声が聞こえレンはドアの方へ視線を向ける。
「アイ……。」
そこにいたのは実の妹だった。アイの目からは涙が零れ落ちていた。
「小学生以来じゃないか? アイが俺の前で泣いたのは。」
「うるさい、馬鹿。お兄ちゃんこそ、泣いてるとこなんて初めて見たよ。」
レンは言われ、初めて自分が泣いていることに気づく。
「なんか、久しぶりにアイを見た気がしてな。」
泣いている声を聞かせたくない、そんな気持ちで精一杯に出した一言だった。
「お兄ちゃん、5日も寝てたんだよ。もう、目覚まさないかと思ったよ……。」
5日……、俺はそんなに牢屋に居たのか? ……牢屋? なんの記憶だ? 夢か……。よく思い出せないが中途半端な夢だったな。そんなものか……。
妹との久々の対話は夕暮れになってもつきることはなかった。
「香歩ちゃんって誰だ?」
「中学生の時、よく家に遊びに来ていたでしょ? あと最近仲良くなった友達もいるのだよ。」
「そうか、今度紹介してくれよ!」
「お兄ちゃん! 妹の友達をそういう対象にするのはどうかと思うよ! まだ会ってもないのに、かわいい娘なのは保証するけどね!」
「そういう意味じゃねぇよ! 友達として紹介してくれってことだろ!」
「まあ、直に家に来るのは確定なので、その時まで楽しみにしておくんだね!」
「そうか。」
他愛のない会話をしていると廊下からドスドスと大きな音を立てて、何かが近づいてくる。
「ねぇ、お兄ちゃん。これって……」
「あぁ、親父だ……。」
「レン! 起きたのか!!」
「なぁ、親父……。恥ずかしいからちょっと大人しくしてくれねぇか?」
「この感じ、絶対お前だな! ママもすぐに来るらしいから待ってろよ!」
こいつ……。全く話が通じない。ここ病院だって。
「レンさん。あ! お父様ですか? 少しお時間ありますでしょうか。」
看護師が病室に来て、父は看護師に連れて行かれしばらく帰ってこなかった。
しばらくして日も落ちたころ、母も合流してレンは検査を受ける。すると、本屋で負った傷は完治していて、まるで最初から事件に巻き込まれていないようだった。




