5話 揺れ
馬車の揺れが落ち着いた頃だった。
「助かったね。感謝の一つくらいしてくれてもいいんだぞ?」
アーサーは軽く冗談混じりに笑い、そう言った。しかし、レンは窓から外を見ながら静かに言った。
「……俺は、見捨てられたんですか?」
馬車の走る音だけが響き、馬車の中はとても静かだった。
「逆だよ。」
アーサーはトーンを落として言った。
「君は"価値"があると判断されたんだ。」
「信用できない。」
レンはそう呟いた。それを聞いてアーサーは苦笑する。
「いいね、その頑固さというか……疑い深さ?この世界には必要だ。」
暫しの沈黙が訪れる。
それを破ったのはレンだった。
「俺の魔法『空』とはいったいなんなんですか?」
空という発言をした直後、アーサーの表情が一瞬固くなり視線を逸らす。
「突然だね。いいよ、教えてあげる。」
こうして聞かされた自分の魔法の秘密、それは想像を超えるものだった。
「その魔法ね……。元勇者だった人と同じ魔法なんだ。」
「元?」
「うん。今は、魔王になっちゃったけどね……。」
アーサーの目と声は優しく、同時に悲しくも感じた。
「何故……。」
レンはそう尋ねる。
「……優しい人だったよ。だから、ある魔王を討ち取ったその日、彼は魔へと堕ちた……。はい! この話はおしまい。雑談でもしない? まだ学園都市に着くには時間あるし地球のこと教えて?」
変わらず悲しそうに話していたが、話を変えられ彼女は元気を取り戻す。レンは流され雑談を強いられたのだった。
「ほら、見えてきたよ魔法学院。」
アーサーはそう言いレンが外を見る。
そこにはテッペンが雲で隠れて見えないくらい大きな建物が建っていた。
「スゲェ……。」
レンはそう言いその大きさに圧倒される。馬車は大陸と学園都市を繋ぐ橋に入った。周りは海に囲まれ橋には人っ子一人いなかった。
橋を渡る最中、アーサーが突然、顔をしかめ、耳に当てた。
「なんだ?」
すこし間を置いたあとアーサーはそう言い立ち上がる。すると同時にレンは一瞬痺れ全身に悪寒が走る。
その瞬間――馬車は真っ二つに裂けた。は真っ二つに裂けた。




